学長挨拶

大正大学学長大塚伸夫

大正大学は、天台宗・真言宗豊山派・真言宗智山派・浄土宗の四宗派が共同して運営する大学です。このことは本学にとってきわめて重要なことだと認識しております。それは、本学が他の仏教系やキリスト教系といった宗教を基盤とする私立大学とは大きく異なる特徴があるからです。たとえば、自らの宗教や仏教宗派が優れているなどといって自らの優越性を誇ることなく、四宗派が協調して教育研究にあたっている類例のない大学だからです。そうした協調の精神を支えているのが四宗派に通徹する「智慧と慈悲の実践」という建学の理念です。この建学の理念をかかげて、本学は1926年に設立されてより、2016年をもって創立90周年を迎えました。90年もの伝統を積み重ねてこられたのも、ひとえに本学を支えてこられた多くの方々のお力添えの賜物と深く感謝いたします。

本学では2016年度より、新たに地域創生学部と心理社会学部の2学部を開設し、既存の仏教学部・人間学部・文学部・表現学部とあわせた6学部11学科体制で臨んでおりますが、新たに15号館となる「地域構想研究所」と「ドミトリー」を設置して、日本の地域活性化さらには日本の次世代を担う、社会に貢献できる人材を育成しようと挑戦しています。一方、学長に就任してよりTSR(Taisho University Social Responsibility=大正大学の社会的責任)精神に基づき、大学の内実にあたる教育研究や学生生活を基軸とする大学改革に取り組んでまいりました。その際、特に注意を払ったのが学生の皆さんの意見でした。約5,000人にのぼる全学生を対象にしたマークシートによるアンケート調査や面談による聞き取り調査という2方式で学生の満足度を調査しました。これは本学初の総合調査でもあり、学生の皆さんの意見に真摯に耳を傾けながら、学生第一の改革改善に取り組んでまいりました。

さて、2017年度はまさに10年後の100周年に向けた新たな一歩を踏み出す年度と位置づけられます。100周年には巣鴨の地で学生の皆さんがかけがえのない時を過ごせる理想の大学になっていることを目標に、TSR マネージメントより3つのポリシーを見直し、学長ガバナンスのもとに立案した重点施策を以下の5領域に集約して実行していく所存です。

1.優れた教育・研究

多様な学生が自らの目標を設定し、その目標達成を可能とさせるために、学生の基礎学力を向上させるとともに、知的好奇心や探究心を充足し、さらなる自主性とチャレンジ精神を発揮できる教育体制の構築をめざします。この実現のために以下の項目を今年度の「優れた教育・研究」領域の重点施策とします。

  • ・教育組織の検証を踏まえた教育支援機能やFDを中心とする教育体制の強化
  • ・学生の自主性を育成する教育プログラムやカリキュラム改革の策定
  • ・2016年度より展開してきた高大接続や入試改革のさらなる推進
  • ・ラーニングコモンズ化の拡充による学習支援の強化
  • ・新たに設置する大正大学学術研究機構(TARI)を拠点とする研究支援体制の充実

2.充実した学生生活

多様な学生の充実した学習活動や学生生活を支えるため、より良い学習の環境作りや学生相談体制を拡充する他にも、従来の就職活動支援を強化し、学内外における充実したキャンパスライフの実現をめざします。この実現のために以下の項目を今年度の「充実した学生生活」領域の重点施策とします。

  • ・学生一人ひとりに対応する個別支援を展開できる学生生活支援の強化
  • ・企業連携強化とインターンシップの充実を中心とする就職支援の拡充
  • ・学内外における学生活動の活性化を実現するための課外活動支援の強化

3.特色ある地域・社会貢献

東日本大震災の復興支援から発展的に継続してきた本学の地域・社会貢献を通じて、学生に社会の一員としての社会的責任を自覚させるため、以下の項目を今年度の「特色ある地域・社会貢献」領域の重点施策とします。

  • ・地方と都市を結ぶ地域ブランディング事業の推進
  • ・社会的責任を自覚するためのサービスラーニングの拡充

4.学風の醸成

卒業生の同窓会組織である鴨台会を活性化させる方策として特に若い世代の鴨台会を支援するため、以下の項目を今年度の「学風の醸成」領域の重点施策とします。

  • ・鴨台会組織の充実と交流
  • ・寄付文化の醸成

5.TSRによる大学運営

2015年度より実施してきたTSRセルフマネージメントシートを利用した自己点検・評価システムをさらに充実させ、学生第一の改善サイクルを実現するため、以下の項目を今年度の「TSRによる大学運営」領域の重点施策とします。

  • ・大学全体・学部学科・大学院専攻・教員にわたる全学的なTSRマネージメントの確立
  • ・IR・EMセンター機能の充実
  • ・大正大学ブランド確立のための戦略的広報の推進
  • ・大学キャンパス整備事業の推進

以上の5つの領域にわたる各事項を今年度の重点施策といたしますが、これらの施策には本学の「智慧と慈悲の実践」という建学の理念を読み解いた〈慈悲・自灯明・中道・共生〉という仏教精神に根ざした「4つの人となる」教育ビジョンが背景にあります。昨年度末に見直しされた本学3つのポリシーも、この教育ビジョンに基づいて構築されています。「4つの人となる」という教育ビジョンを要略しますと、第一に「慈悲」の精神をもって、生きとし生けるものに親愛の心を持てる人となることを実践します。第二に「自灯明」の教えにしたがって、真実を探究し、自らを頼りとして生きられる人となることを実践します。第三に「中道」の教えを尊び、執われない心を育て正しい生き方ができる人となります。第四の「共生」の精神によっては、自分をとりまく皆が共に生き、ともに目標達成の努力ができる人となることを実践します。4年の修学期間をへて卒業していくまでの過程で、いかに学生を育成するかという教育ビジョンは各大学で分かれるところですが、これらの仏教精神に根ざした教育ビジョンのもとに大学教育を展開するのが仏教系大学としての本学の使命であると信じます。それは、人を導く正しい方向性をもった仏教と教育は、そのめざすところが本質的に同一であると考えるからです。こうした本学の教育ビジョンは、日本文化史に多大な功績を残された最澄・空海・法然といった本学設立宗派の各祖師の願いにも通徹しているのです。ぜひとも、各祖師の教えを体現する90年もの伝統を有した大正大学の未来を期待していただくとともに、本学の学風を直接体感していただきたいと存じます。

大正大学 学長 大塚伸夫