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今日のセンセイ宗教とそれを支える存在である美術品。仏教学部 仏教学科 国際教養コース野村島 弘美先生hiromi nomurajimaFocus!海外の文化を知ることでわかる、日本文化の素晴らしさ「美術と信仰の関係性」をテーマに、論文を執筆しています。私は油絵を専攻し、主に人物などの具象画を学び描いてきました。人物画というと「似ているか否か」という部分に目が行きがちですが、本当に良い作品は「光と影のバランス」や「場所の雰囲気・空気感」など、非常に繊細な部分の表現に長けています。そのような良い作品、本物の作品を、私は欧米で多数目にし、それらが宗教、つまり信仰のために描かれてきたものだと知りました。人の心を動かす作品は、人々の強い想いにより誕生し、永遠の輝きを放つのだと感じました。渡米後、海外で生活をすることで見えてきた日本文化の素晴らしさがあります。その一つは「引き算の美しさ」です。華道を例に挙げると、アメリカのフラワーアレンジメントは材料となる花を比較的大量に、そして華やかに飾り付け世界観を演出しているように感じます。それは「足し算の美しさ」を追求するもので、アメリカ人の思想や価値観が反映されているのだと思います。対して、日本の華道は「引き算の美しさ」を追求します。必要最小限の草花を使い、四動植物をモチーフに、「祈り」をテーマに作品制作を続けています。表現方法は主に絵画で、平面パネルにアクリル絵の具で描いています。また、論文執筆に関しては、「美術と信仰の関係性」を中枢に置き、信仰心が厚く優れた芸術作品を多く生み出してきたメキシコでの「偶像崇拝」についてまとめて行きたいと考えています。季を表現し、その空間に合った世界を作り上げます。英語でも「Minimalism-ミニマリズム」という言葉がありますが、装飾的趣向を凝らすのではなく必要最小限に省略し美を追求するスタイルが日本文化の特長であり、魅力であると言えます。華道をはじめ、茶道、日本建築、そして日本の食文化に関しても、その根底には仏教の教えがあります。例えば、食事をする前に「いただきます」と言いますが、この言葉も仏教が由来となっています。「自分の為に犠牲になった生き物すべての命」、それらを頂くことへ感謝をするために、私達は手を合わせ「いただきます」と唱えます。今、この「仏教の思想」が世界的にも注目されています。宗教間対立が原因の一つとなり世界情勢が不安定になっている中、仏教の寛容で中立的姿勢が関心を集めています。我々仏教学科の教員は、「仏教の可能性」に注目し、学生達が日本国内外で活躍できる人材と成ることを願っています。Profileさいたま市出身。寺院で生まれ育つも、幼い頃から海外への強い関心を持つ。2002年単身渡米後、ニューヨーク、マンハッタンの美術学校に入学し油絵を専攻、後にメトロポリタン美術館木造美術保存修復課にインターンとして勤務し美術品の復元着色を担う。2015年より本学仏教学科国際教養コース専任教員として勤務。FEATURE PAGE12TODAY'S TEACHER
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