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インドで生まれ、中国を渡り、日本へやってきた仏教は、本質はそのままに独自の進化を遂げてきました。たとえば、お彼岸は日本特有の仏事で、他の国にはありません。春分の日と秋分の日を含んだ期間に行われていますので、日本の四季に合わせて生まれた仏事なのだと思います。そもそも古代より、日本には森羅万象に神が宿るという八百万神の神観念がありました。農耕民族として、自然から得られる恵みに感謝し、時には厳しい表情を見せる自然と共に生きてきた日本人らしいものだと感じます。何か特別なものを崇めるのではなく、生活に近い存在に感謝するその思考は、日本人に寛容さを与え、仏教を享受し、調和していったのだと思います。自然豊かで美しい日本の仏閣は、その姿自体が日本独自の仏教のあり方を体現しているようでもあります。全てのものは絡み合ってできている―日本における仏教の浸透と変遷に関しては、仏教の教えである縁起の思想、いわゆる因果律に通じるものを感じますね。日本の風土と共に変遷してきた仏教は日本が誇れる文化の一つ#1井澤 隆明さん『増上寺』教務部長Profile1949年山形県生まれ。大正大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、山形県山形市稱念寺住職。浄土宗内においては大本山増上寺執事・教務部長、浄土宗宗議会議員を務め、宗外では公益財団法人三康文化研究所理事、山形刑務所教誨師会理事等の諸役も務めている。日本の四季と寛容さが仏教文化を育んできたさまざまな形で日本文化に携わる人々にきく「日本文化と、ひと」受け継がれ育まれてきた“文化”と、新たに生まれ愛される“カルチャー”。移ろいゆく時代の中、新旧それぞれの目線からお話を伺いました。Special FEATUREOHDAI Vol.104032018 SPRING
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