TikTokやInstagramリール、YouTubeショート──。
スキマ時間についつい見ちゃうショート動画。
暇つぶしのつもりが、気が付けばずっと見続けてしまうことも……。それってなぜ?
ショート動画ばかり見ていても問題はない?動画を撮る時のポイントは?
そんな疑問に学科の松崎泰弘先生が答えてくれました。
- ここをCHECK
- ショート動画は“タイパ”の表れ
- 30年間でイントロが20秒から5秒に!?
- 動画を撮るときは〇〇に注意!
ショート動画が流行り始めたきっかけは?

以前はYouTubeで長い動画を見ていたけれど、今ではショート動画しか見ないという人も少なくないはず。
動画の長さにもトレンドがあるけれど、ショート動画が流行し始めたのはいつごろからでしょうか?
松崎先生
「YouTube ショートが始まったのが2020年。そのころからショート動画の視聴者が増えていったのだと思います。私は大学の授業で学生たちに動画を撮影してもらうのですが、撮り方にもYouTubeやTikTokの影響が感じられますね。テレビよりもネット動画、その中でもショート動画を見る学生が増えていると思います」
あふれる情報を次々さばく、Z世代の“タイパ重視”の意識

そもそもショート動画が流行っているのはなぜでしょうか。
その裏側には、若者世代の“タイパ”意識、つまり短い時間でできるだけ大きな満足度を得たいという気持ちが隠れていると松崎先生。
松崎先生
「Z世代やα世代は、子どものころから動画サイトなどを通して多くの情報にさらされてきました。効率よくたくさんの情報を得て、みんなの話題についていくには、一つ一つの情報に触れる時間を短く済ませる必要があります。それがショート動画の流行や動画の倍速視聴などの“タイパ”行動につながっているのでしょうね。
それに加えて、テレビを見ながらスマホで動画やSNSをチェックするなど、“ながら”視聴をする人も多いですよね。どちらかをおろそかにするわけでもなく、両方に集中できるのが今の若者だと思います」
タイパ重視の影響は音楽にも表れている?

“タイパ”意識は、音楽を聴くときにも表れているそう。
音楽のサブスクが広まるにつれて、作り手側も聴き手をより意識した曲づくりを行うようになっているんだとか。
松崎先生
「米オハイオ州立大の大学院生が、1986年から2015年までのビルボードチャートトップ10に入った曲について分析したところ、1980年代は平均約20秒だったイントロが2010年代には5秒になっていたそうです」
え、5秒!? 言われてみると、YOASOBIはイントロがなくていきなり歌から始まる曲が多いかも。
松崎先生
「曲を再生して、5秒以内にスキップする人の割合は約24%という調査結果もあるんです。一瞬で判断して、気に入らなければ次の曲へと移るのも“タイパ”重視の行動の表れではないでしょうか」
確かに、TikTokでは「5秒動画」も人気ですよね。でも、そこまで短い動画になると、情報を入手するのは難しそう……。
松崎先生
「そもそも映像メディアはインパクトが大事ですし、尺が短いほどその傾向が強くなります。作り手側もネット記事の“釣り見出し”のように、パッと見で気を引こうとするため、正しい情報を得るには不向きかもしれません。ペット動画のように癒やしや面白さを得るための動画ならいいのですが、情報を詰め込んだ動画、複雑な物事を解説する動画などの場合、間違った知識や偏った情報へとミスリードされるリスクがあります。
それに、メットメディアではひとつの情報に触れると、同じジャンルの情報がおすすめされます。動画に関しても、ダンス動画やドッキリ系など、ある動画を見ると似たような動画を次々とおすすめされますよね。その人の好みに合わせた情報が表示されるので、自分で選んでいるようで選ばされているわけです。ある意味受け身のメディアですし、偏った情報ばかり入ってくる可能性もあるので気を付けましょう」

情報が正しいかどうかを見抜くには?
SNSでも、同じような意見の人たちばかりフォローしていると、気付かないうちに偏った考えになりがちです。情報が正しいのか間違っているのか、しっかり見抜くにはどうすればいいのでしょうか。
松崎先生
「大事なのは、自分の引き出しを増やすこと。イギリスの生物学者トマス・ヘンリー・ハクスリーは、“try to learn something about everything and everything about something” という言葉を残しています。要するに、“すべてのことについて少しずつ知っているように、そしてある特定の分野についてすべてを知るように努力しよう”ということ。
ひとつのことだけを突き詰めるオタクも悪くないけれど、特定のことしか知らないのは危険です。ありとあらゆることに関心を持つように心がけましょう。本や新聞、テレビ、ネット動画、ショート動画など、それぞれのメディア特性を知っておくことも大事です」
動画撮影のコツと注意すべきこととは?

動画を撮るときのコツについても、松崎先生に解説してもらいました。松崎先生によると、テレビ動画とネット動画では撮影の仕方も違うとか……?
松崎先生
「テレビ番組では、カメラマンが動き回って被写体をいろいろな角度から取ります。でも、YouTubeやTikTokではカメラは固定でバストショットがメイン。テロップもたくさん入れますし、文字も大きいですよね。スマホの小さな画面で見る人が多いので、そういった撮り方や演出になるのだと思います。テレビ番組制作や動画制作の仕事をしたい人は、テレビとネット、両方の撮影手法を知っておくと将来役立ちますよ」
動画を撮るときにも注意すべきポイントがあると松崎先生。
松崎先生
「動画を撮る側にも、モラルが求められます。回転ずしチェーンや牛丼チェーンでの迷惑行為をSNSに投稿して、罪に問われた人もいますよね。そもそもこうした行為をすべきではありませんし、仲間内のいたずら動画として投稿したつもりでも、拡散されればあっという間に炎上して本人が特定されます。
著作権や肖像権なども理解しておいたほうがいいですね。推しのタレントが出ているからといって、テレビ番組などキャプチャー動画を勝手にインターネットに流すのはNG。また、街なかで撮影するときには、周囲を歩く人の顔をぼかすなどプライバシーに配慮することも必要です」
まとめ
動画に込められたメッセージを意識してみよう!
いろんなメディアの表現方法について知っておくと、動画を見るとき、撮るときともに役立ちそうです。これから動画を見るときは、作り手側の演出やそこに込めたメッセージも意識してはいかがでしょうか。
















