寝ても寝ても、授業中に眠くなる……その時、身体の中では一体何が起きているのでしょうか? 今回は大正大学 人間学部 人間科学科の内田英二先生に、身体のメカニズムや睡眠の重要性を健康科学の視点で教えていただきます。毎日を健康に過ごすために知っておきたい、睡眠・運動・食事のポイントもお聞きしました。
- ここをCHECK
- 授業中に眠くなっちゃうのは、自分のせいじゃないかも?!
- 快眠の原料・セロトニンは、日中の運動で増やせる
- 健康にいい習慣は「ゲーム感覚」で始められる
午後の授業中に爆睡… 「食後の眠気」はなぜ起こる?

お昼ご飯を食べた後、午後の授業中にうとうと……「自分はなんて怠け者なんだ(泣)」と、自己嫌悪に陥ってしまう人もいるかもしれません。でも、内田先生は「食後の眠気は身体のメカニズムによるもの」と話します。
内田先生「消化器官が動き出す食後は、自律神経の働きのうち、身体をリラックスさせる副交感神経が優位になります。そのため、午後に眠気が増すのはごくごく自然なこと。大学でも午後一番の授業中に、居眠りしてしまう学生はいます。プロジェクターを使用するために教室を暗くするとなおさらです。午後の眠たくなりやすい時間帯に、眠りを誘うような環境を作ってしまわないよう、教員側も工夫しなければなりませんね(笑)」
人間には、心臓の拍動や呼吸など、生命維持に欠かせない身体の働きをコントロールする自律神経が備わっています。この2つはバランスをとりながら作用しており、活発に身体を動かすときには「交感神経」が優位に、夜やリラックスしているときには「副交感神経」が優位に働きます。つまり、午後の眠気は単なる怠惰ではなく、生理現象の一つといえるでしょう。
一方で睡眠の質の低下により、日中の眠気が起きている可能性もあるので、注意が必要です。
内田先生「一般的には、中高生は最低でも8時間は眠るべきと言われています。十分な睡眠をとっても眠い場合は、夜間に熟睡できていない可能性も。何らかの影響で自律神経の切り替えがうまくいっていないと、睡眠の質の低下につながってしまいます。その状態が続き、睡眠障害に発展して、うつ病を発症してしまうケースもあるので、睡眠の問題は早めに解決することが大事です」
幸せホルモン「セロトニン」を増やす! 快眠スイッチを入れる運動と食事

では、どのように睡眠の質を整えれば良いのでしょう? 内田先生は「生活リズムを整えることが第一」と話します。まずは起床時間や就寝時間、食事の回数や時間など、1日のリズムを決めた生活を続けることが重要です。そうすることで、自律神経が正常に作用するようになり、「朝はしっかり目が覚め、日中に眠気が発生しにくくなり、そして夜には自然と入眠できる」といった好循環が生まれていきます。
睡眠の質を高めるには、夜寝る前の過ごし方も無視できません。
内田先生「布団でスマホを触りながら、寝落ちしてしまう人もいるのではないでしょうか。数年前に行った研究では、寝る前の1時間にデジタルデバイスから離れていたグループのほうが睡眠の質が高まることが分かっています。寝る直前までスマホに夢中になっていると、睡眠時間そのものも削れてしまうので、少し控えられるといいですよね」
生活リズムを整えたら、運動や食事にも気を配りたいもの。睡眠にはメラトニンというホルモンが関わっており、夜に向かって分泌量が増えることで眠りのスイッチが入ります。このメラトニンの原料となるのは、幸せホルモンと呼ばれるセロトニン。セロトニンは日中の運動によって分泌量が増えるといわれています。さらにセロトニンの材料となる必須アミノ酸・トリプトファンを食事で補うことも大切です。例えば、乳製品や大豆製品、赤身の肉や魚などにトリプトファンが多く含まれています。
内田先生「睡眠と運動、食事はお互いに関係しあっているので、どれか一つではなく、それぞれ意識できるといいですよね。特に、運動には気分を高めたり、心身をリフレッシュさせたり、身体を活性化させたりなど、さまざまな効果があるので、日常的に取り入れて損はありません。ただし、適度な運動であることが重要。次の日に疲れを残してしまうような過度な運動であると、生活リズムを崩す原因にもなってしまうので、自分のストレスにならない程度の運動が理想ですね」
生活習慣病はピンとこないけど… 勝負時に体調を崩さないために

睡眠・運動・食事は、人間の健康を左右する重要な要素です。ちょっとした不調を解消するには、まず日々の生活を振り返ってみるとよいでしょう。運動をどれくらいしているのか、何時に寝ているのか、どんなものを食べているのか。自分の生活習慣を把握することが、自分の身体を知る手がかりになります。
運動が習慣化されていない人であれば、軽い運動を取り入れてみたり、朝起きられないのであれば、就寝時間を決めて習慣化してみたりなど、生活習慣を変えた際に、自分の身体がどのように変化するか検証してみるとよいでしょう。少しずつ試しながら成功体験を積み重ねていくことで、自分の身体のコントロール方法が見えてくるはずです。
内田先生「友達同士で『今日の夜はスマホを触ったら負けね!』など、ゲームみたいに取り組んでみてもいいかもしれないですね。遊び感覚でやってみると、いろいろ試しやすいんじゃないかと思います」
最後に、自分の身体を知ることにどのような意味があるか、内田先生に尋ねてみました。
内田先生「生活習慣病のリスクと言われても、若い世代には現実味がなく、ピンと来ないかもしれません。でも、若いうちから自分の心身の状態に関心を持っておくことは、より良く生きることにつながっていくと思います。体調を崩したり、突然眠れなくなったりなど、何かトラブルがあったときに、自分の生活に問題がないかを探る手がかりにもなるはず。そうすれば、受験など、自分が大事にしているタイミングでパフォーマンスを発揮するために、どのような過ごし方をすべきか、自分なりに工夫できるのではないでしょうか」
まとめ
「何だか疲れが取れないなぁ」「寝ているのに朝起きられない」なんてとき、もしかしたら自分の生活習慣に原因があるかもしれません。自分の身体であっても、知らないことはたくさんあります。まずは普段の生活を振り返り、自分の身体を知るきっかけにしてみてくださいね。

















