「路上観察」とは、日常のなにげない光景に注目して、それを面白がるという行為。見つけたものを記録・分析しながら深めていけば、「考現学」という学問にもつながります。例えば道行く人のファッションを観察してみるだけでも、街や人の個性が浮かび上がってくるはず。今回は大正大学 表現学部 表現文化学科の影山裕樹先生に「路上観察」の面白さを教えてもらいましょう。
- ここをCHECK
- ファッションを観察すると街や人、社会が見えてくる
- 日々気になるものを写真で残しておこう
- 興味の外側に飛び出すことが、新しい世界につながる
ファッションを観察すれば、「街」や「人」が見えてくる!

普段街を歩くとき、あなたはどんなものを見ているでしょうか? にぎわっているお店、聞こえてくる音、変わった看板や壁の広告。そういった日常の風景を研究対象にして、じっくり観察・分析することで社会を捉えようとするのが、「路上観察」という試みです。行き交う人のファッションに注目して観察するだけでも、街ごとの個性があることに気づくはずです。
影山先生「街を観察するのに、ファッションは一つのポイントになります。東京の街でいうと、高円寺は古着系、丸の内はスーツ、中目黒はヒゲと眼鏡の人が多いといった、ざっくりとした特徴があることが分かってくると思います。街は社会という大きな世界の手前にある、身近なコミュニティです。人はTPO※を守ったり、周りの人たちとのコミュニケーションを円滑にするために、自然と自分が属している街となじむ服を着るようになる。それが積もり積もって、街の個性の一つとして現れてくるんです」
※「Time(時間)」「Place(場所)」「Occasion(場合)」の頭文字を取った言葉。時間や場所、場面に応じて服装や振る舞いを使い分けること
またファッションは、社会の中での役割や肩書き、経済状況といった、人のパーソナリティを表すものでもあります。面白いのは、その人が「世界からどう見られたいと思っているのか」という内面が表れていること。特に日本は世界的に見ても、多種多様なファッションスタイルが受け入れられているので、服装を通してそれぞれが個性を表現しやすい国。誰かの服を観察することは、その人自身を理解することにつながるのです。
影山先生「ファストファッションでいいという人もいれば、ロリータのようなニッチなスタイルが好きという人もいる。服には、その人がどんな趣味趣向なのか、どんな世界の住人でいたいかという願望が表れます。まずはクラスメートや先生といった自分の周りの人の服装を観察してみると、その人の性格が垣間見えたり、意外な好みを発見できたりして楽しいですよ。コミュニケーションの糸口にもなるのではないでしょうか」
撮り溜めた写真から、自分だけの「好き」が見つかるかも?

影山先生が街を観察する時にやっているのは、とにかく写真を撮ること。カメラでもスマホでも、気になるものを見つけたら撮っておく。集まった写真から思いがけない「好き」が見つかることもあると、影山先生は話します。
影山先生「自然に目に留まったものだけでなく、道路のガムや工事中の仮囲いなど、普段はスルーしてしまうものに着目してみるのもおすすめです。撮った写真を並べて、AIなど使って共通点を分類することで、世相が見えてきたり、自分独自の視点が分かるようになります。例えば僕の生徒の中には、『あふれているゴミ箱』が好きな生徒がいました。彼女は最終的にゴミ袋のドレスを卒業制作で作っていましたね。あれは面白かったです」
街を観察することが、自分自身を知ることにつながる。それは友達やコミュニティ、そして「なりたい自分」を見つけるヒントにもなります。なんとなく雰囲気が好きだと感じる街は、自分にフィットしている場所なのかもしれません。もしそうした場所を見つけたら、どうして好きなのか、そこにいる人は何を着ていて、どんなものが好きなのか。観察しながら探り、繰り返し通ったり、服装をまねてみることで、心落ち着く居場所にたどり着ける可能性もあります。
影山先生「僕も昔は高円寺に憧れて、あの世界観に近づきたいと古着を買ったりしていました。ある界隈のファッションをまねるということは、その世界に近づくということ。『自分はこういう人達が面白いと思う』『この人と一緒にいたい』という世界を見つけたら、まずは彼らを観察してみてはどうでしょうか。自分の人生を豊かにしてくれる、出会いが生まれるかもしれませんよ」
「コンフォートゾーン」を抜け出して、自分の世界を広げよう

ファッションに限らず、「ストリート(路上)はさまざまなカルチャーが生まれる場所」だと話す影山先生。そこには自分がまだ知らない、面白い世界への扉が散らばっています。
そして新しい何かを発見するために重要なのが、自分の興味の“外側”へ飛び出していくことです。
影山先生「若いうちにどれだけ自分の世界を広げられたかということは、試験の点数の良し悪しよりも大事な人生の財産になります。人は意識しないと、自分が好きなものしか見えないようになっているんです。道を歩いていても好みのファッションにだけ目が留まるし、SNSに至っては、アルゴリズムで趣味に合う投稿だけが流れてくる。でも、好きな場所や仲の良い友達と過ごす時間といった自分の『コンフォートゾーン』の先に、学びを得られる『ラーニングゾーン』があります。いつもの場所であっても、普段は目を向けないところを観察してみたり、思い切って知らない人同士が集まるサマーキャンプのようなイベントに行ってみるのもいい。一歩外へ踏み出すだけで、世界は違って見えてくるはずです」
まとめ
路上観察は、感性のトレーニングのようなものかもしれません。なにげない日常から「面白い」を発掘する目を養えば、世界の解像度が上がり、自分探しや新しいアイデアのヒントを見つけやすくなるはず。さて、いまあなたの目の前に見えているのはどんな景色でしょう。ちょっと観察してみませんか?


















