地域貢献・国際交流「まち」が大学になる、大学が「まち」になる
協定留学生ブログ ミュンヘン大学(ドイツ)から
パツサウ ー街ー
冬なのか春なのか、少し遠出しました
少し前の話。春休みの1日を利用してPassau(パッサウ)という街へ出かけました。私はパッサウという名前すら聞いたことがなかったのですが知人からの勧めで訪ねてみることにしました。その方はパッサウに住んでいらっしゃるそうで、ミュンヘンで会った際にぜひ暖かくなったら遊びに来て下さいと言われていました。
問題があったとすればミュンヘンは春休みでも暖かくはならないということと、私が彼女の連絡先を知らないということだったのでしょう。特に今年は冬が長引いたそうで、4月になっても雪が降ったりしました。それでも雰囲気の違う街を歩くことは気分転換に良いだろうと決め込んで出かけてみることにしました。
有名な話のようですが、チェコとの国境近くに位置するパッサウは、ドナウとイン、そしてイルツの3本の川が1本へと合流してヨーロッパを代表する川、つまりドナウ川になる場所だそうです。このドナウ川はその後、チェコ、ハンガリー、ユーゴスラビアの地域を流れ、黒海へと注いでいます。うろ覚えで大変申し訳ないのですが、「青き美しきドナウ」というクラシック音楽は、ドイツ語読みの名前を持つ人物に作曲されていませんでしたか。
下の写真は山に登ってパッサウの街を撮影したものです。この街は2本の川に挟まれていて、街は大きな中洲のような形をしていま
す。判りにくいですが、手前の川の向こうにもう1本川が流れています。青きドナウですか、私には緑のように見えるのですが季節の関係でしょうか……。家がカラフルなところが可愛らしいです。ミュンヘンの中心街にもこのような家はあるのですが、慢性的な住宅不足からか建物は機能重視で無機質なアパートのような形をしています。この色とりどりの家もアパートなのですが。
ミュンヘンには電車一日券のようなものが売られていて、その券を使えばバイエルン州の普通電車は乗り放題になります。今回もそれを利用してパッサウまで来ました。例外的に国外のザルツブルク(オーストリア)まで行けるという何だか得体の知れない代物なのですが、便利なことには変わりはないです。どうやらチェコまでは行けないようです。
川の流れは右から左です。丁度、2本の川が合流するところです。こうして上に登ってみると合流点に行ってみたくなってしまうものです。
その前にこの山の話を少しだけします。今回は残念ながら冬季休業のために中へ入ることはできませんでしたが、この山には昔の城跡が残っています。おそらく現在、王様なり将軍は住んでいないはずですが、夏季はユースホステル(Jugendherberge)として市民に開放されています。
ミュンヘンには数多くのユースホステルがあって、私もミュンヘンに着いて2週間程度ユースホステルを転々としていたのですが、どうやらユースホステルの文化はドイツが発祥だそうです。ミュンヘンのユースホステルの多さも納得です。ただ日本のものとは趣が多少異なっているようです。基本的には男女共同の大部屋ですし、泊るための規則も日本のそれとは違います。もちろん、少年少女の団体がグループで使うこともできますし、個室も用意されています。
上の写真が川の合流地点です、目の前の遥か彼方が黒海です、とは言っても想像はできないですよね。流れが穏やかだったので湖のようにも見えましたよ。気温が低いからか、住人とも観光者とも出会うことなくここに座っていると、泣きたくなるような叫び出したくなるような、何て繊細な心は持っていませんでした。
ただ、主観的ですがミュンヘンの冬は中心街でさえ物悲しいような気がします。街を歩いても、今日は国民的な休日で外出は禁止されているのか、と疑いたくなるほど人の気配がなかったり、お店は開店しているのかどうかもわからない暗さだったり。
今回このパッサウをブログに書いたのも、冬のミュンヘンの顔だと思ったからです。ドイツに詳しい方は冬の行事もご存知かと思いますが、何か祭りがないときミュンヘンはいつもこのような顔をしています。特にパッサウのように中心街から離れてしまえばなおさらその一面は際立ちます。
ミュンヘン大学で日本へ留学してみたいと言う学生と知り合う機会が多いのですが、彼らはそろって大都市圏への留学を希望します。それはつまり、日本の文化の象徴は都市圏に集中していて、日本を堪能するにはその方が良いということなのでしょう。それに関して大きく反対をするつもりはないのですが、都市圏以外には何もない、という言い方をされるとどこか腹が立ちます。大正大学から留学している私は都市圏の人間なのでしょう。だからといって地方都市に何もないとは思わないし、東京だけが日本文化の象徴だとは思えません。文化とは何かという問いは難しいし、彼ら外国人が完全な誤解をしているとも言えないのですが、自分の持っている日本の文化観を説明したいという思いもドイツ語学習の動機になっています。
ちなみにミュンヘンは退屈だ、とよく言われています、東京と比べているのでしょう。そういう方には、真冬のパッサウでドナウ川でも眺めながら、どこにいても退屈しないで生きられる方法を考えることをお勧めします。私はまだ見つけられていません、それでも冬のパッサウは居心地の良い街でした。