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ラーニングコモンズのブログ
戦史や兵器を知って世界の理解を深めよう–戦争ものの作品を正しく理解するために– ゲスト:石神郁馬氏
みなさんこんにちは!コンシェルジュの岩下です。いよいよ今学期もラーニングコモンズレファレンスがスタートしました。
レファレンスとは、簡単にいえば「調べもの、探しものをお手伝いします」 というサービスのことです。大正大学のラーニングコモンズでは、各学科の先生方にお越しいただいて、学生のみなさんが気軽に立ち寄れる「ラーニングコモンズレファレンス」を開催しています。レポート・論文の書き方や、勉強の方法など、教室ではちょっと聞きづらいな・・・というような質問も大歓迎!先生とじっくりお話しするチャンスです。また、毎回先生ご自身によるテーマトークのご用意もいただいているので、トークを目当てに立ち寄っても楽しいですよ。
さっそく5/9(金)は、西洋哲学がご専門の松野智章先生によるラーニングコモンズレファレンスが開催されました。テーマは「戦史や兵器を知って世界の理解を深めよう–戦争ものの作品を正しく理解するために–」です。
▲毎回、フロアの中央にこのような看板を立てます。
空き時間などに開催テーマをチェックしてみてくださいね。
「軍事」といえばこの方!ということで、今回は軍事研究家の石神郁馬(いしがみ いくま)氏をゲストにお迎えいたしました。石神氏は、星川啓慈・石川明人両先生による著書『人はなぜ平和を祈りながら戦うのか? 私たちの戦争と宗教』(Amazon)で軍事監修を担当していらっしゃいます。
実はラーニングコモンズレファレンスに石神氏をゲストとしてお迎えするのは今年の1月以来2度目のことです。(参考記事→「複眼的視座―実践としての映画批評 ゲスト:石神郁馬氏」 /wp/wp-content/uploads/learning_commons/2014/01/29-095826.html)
▲左:石神氏 右:松野先生
まずは石神氏より、星川啓慈・石川明人両先生の著作『人はなぜ平和を祈りながら戦うのか? 私たちの戦争と宗教』から「第1章 人は人を殺したがらない」を例にとって、従来の学説を批判する方法を紹介していただきました。なお、ここでの「批判」とは、相手の意見を否定することではなく、検証する行為のことを指します。
では、「人は人を殺したがらない」としたグロスマンの主張と、それに対する石神氏の批判を詳しく見てみましょう。
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【グロスマンによる主張】
ゲディスバーグの戦いにおいて、戦場に放棄された銃のうち90%近くには弾丸が装填されたままになっていた。また、そのうち25%近くには複数の弾丸が装填されていた。このことから、以下のようなことが分かる。
- もしも兵士たちが発砲に積極的であれば、戦場に落ちている銃を拾って発砲しているはずだ。しかし実際には、大量の装填済みの銃が戦場に残されている。これは、兵士たちが発砲に積極的ではなかった証拠である。
- 戦場において兵士は緊張を強いられているはずだ。そのため、自分では発砲したつもりで次の弾丸を込めてしまうことも少なからずあったただろう。しかし、これだけではすべてを説明することはできない。兵士の中には、発砲を躊躇し真面目さを装って装填だけを繰り返した者も多くいたのである。
つまり「人は人を殺したがらない」のだ。
【グロスマンの主張に対する石神氏の批判】
- 戦場に落ちている銃に弾丸が装填済みかどうか、戦闘中に見分けることができる兵士がいるとは思えない。ましてや、暴発の危険性がある銃を兵士たちが積極的に使用しないのは当然のことではないか。
- 兵士が自分では発砲したつもりで次の弾丸を込めてしまうことが少なからずあっただろうことは、グロスマン自身も認めている通りだ。しかし、「真面目さを装って装填を繰り返す」という説に関しては、1分もかからない装填作業を繰り返したところでさほど時間が稼げるとは到底思えない。
このような検証をなくして「人は人を殺したがらない」という結論を導き出すことは、誤った結果に繋がる可能性があるのではないか。
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これは、まさに以前のラーニングコモンズレファレンスで松野先生から教わった「複眼的視座」の考え方ですよね。みなさん自身のレポートや論文執筆にも大いに活かすことができると思います。
『人はなぜ平和を祈りながら戦うのか? 私たちの戦争と宗教』においても、星川先生は石神氏の意見を取り入れ、グロスマンの見解をそのままま受け入れることはしていません。星川先生はここから更に検証を重ね、さまざまな角度から戦争論を語っていらっしゃいます。今回のラーニングコモンズレファレンスで戦争という題材に興味を持った方は、ぜひ本を手に取ってみてください。
なお、星川先生と石神氏のお二人は、12/1から第一次世界大戦の東部戦線を舞台に「戦うウィトゲンシュタイン」というタイトルのブログ連載を始める予定だそうです。こちらも楽しみですね。この件に関する続報は追ってお知らせいたします。
続いて、石神氏から最新の兵器について教えていただきました。
例えば、現在アメリカが所有している核兵器のこと。その主力である核ミサイルは、発射後にひとつの弾頭が複数の弾頭に別れ、それぞれが別の目標に着弾するのだそうです。ちなみにその威力はというと、弾道が別れた後の一発だけで東京23区を壊滅させるほどのものなのだとか。
それから、まさに現在開発中の兵器であるレールガンのこと。電磁誘導で弾丸をマッハ7から8まで加速させることで、従来の火薬を使ったものよりも格段に破壊力の高い兵器を作り出すことができるそうです。レールガンは、早ければ再来年あたりにアメリカによる実証実験が行われる予定だということでした。
このように現代においても、多くの兵器が開発され、配備されています。
石神氏「戦争と平和は表裏一体です。そしていざ戦争が始まると、平和な時代とは価値観が一変してしまいます。例えば、非常時においては女性や子供が『弱者』側に立たされてしまうという悲しい現実もあります。また一方で、サブカルチャーや時代劇、映画などには『戦争』を題材とした作品が数多く存在します。大切なのは、これらの作品における戦争描写が、必ずしも史実通りとは限らないことを知っておくことです。そのためには、戦争について正しい知識を持つことが大切です。作品によっては見栄え優先で作られている場合もありますから」
多岐に及ぶ話題の中には、松野先生と石神氏が侃侃諤諤と意見を戦わせるものもあり、今回のラーニングコモンズレファレンスも大いに盛り上がりました。
▲予想はしていましたが、参加者は全員男性でした( ´-`)
最後に、松野先生は参加者に向けてこう語りかけました。「戦争や歴史は『今、こうだから昔もこうだったに違いない』という風に考えてはいけません。軍事の歴史には大きな変化が存在するのです。また、世界に目を向けると今なお数多くの紛争地帯が存在しています。今わたしたちが暮らす日本が平和であることは、本当に奇跡のようなことなんですね」。
2014年は第一次世界大戦開戦からちょうど100年目にあたります。これを機に、みなさんも「戦争」を捉えなおしてみませんか?
【石神氏おすすめ 戦争にまつわる映像作品】
- 「史上最大の作戦」(Amazon)
- 「THE PACIFIC」(Amazon/日本語公式サイト→http://wwws.warnerbros.co.jp/thepacific/mainsite/)
- 「クリムゾン・タイド」(Amazon)
【松野先生おすすめ 戦争にまつわる映像作品】
- 「イングロリアス・バスターズ」(Amazon)
次回のラーニングコモンズレファレンス(西洋哲学)は、5/23(金)14:50~16:50まで開催します。詳しいテーマは追ってお知らせいたしますので、楽しみにお待ちください。
それでは ヾ(*'▽'*)o