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宗教と交通?!その意外な関係


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こんにちは ブログ担当、図書館職員の吉田です。
7月17日のラーニングコモンズレファレンスのテーマは『宗教と交通』。お話を聞かせてくれたのは、小林惇道先生です。
 
ふたつを結びつけるものとは果たして…?
小林先生のお話は、まず鉄道の歴史から紐解いていくところから始まりました。
日本に初めて鉄道ができたのは、明治5年(西暦1872年)のこと。はじめに新橋-横浜間が開業し、その後、日本全国に鉄道網が広がっていきました。鉄道が走り始めたことにより、大量の物資を、かなりの早さで遠隔地へ運ぶことが可能になりました。こうした鉄道による影響は、人々の行動様式に大きな影響を与えました。民俗学者の柳田国男は、鉄道網の発達による文化的な変容について、以下のように指摘しています。
 
1 ) 鉄道開業による在来交通・文化伝統の破壊
鉄道開通前、つまり江戸時代までの日本では、島国ならではの海運が発達していました。京都や大阪の上方文化が船によって運ばれ、北陸の金沢や酒田などの、いわゆる「小京都」が形成されていくのです。一方、内陸では、町から峠を越えて山へと至る人々の交流により、山奥にも独自の人情風俗などの土着文化がありました。しかし、鉄道網の発達により、このような特徴的な文化の流れは次第に薄れていきます。
 
2 ) 機械文明によって変えられた人々の意識構造
江戸時代、中央には幕府という、全国を統括する組織がありました。しかし、基本的には地方分権がなされていて、地方の人々は独自の意識を保っていました。ところが、鉄道が発達していくにつれ、日本は“狭く”なっていき、地方の意識は「日本人の意識」という、統一的なものに変わっていったのです。これには、廃藩置県の影響もあったと思われます。
 
3 ) 伝統的な旅行習俗と鉄道がひとつに
日本の伝統的な旅行習俗は、「巡礼」と合わさったものでした。つまり、信仰する神仏を祀る全国各地の神社・寺院へ参拝することが盛んに行われ、「巡礼」は非日常の息抜きとしての要素もありました。しかし、鉄道の開業によって、「巡礼」から、「遊覧」「周遊」に性質を変えていきます。

*ここでひとつ、講義の中で私が印象に残った、巡礼と鉄道にまつわる面白いエピソードをご紹介します。みなさんは「恵方詣」という参拝行事をご存知でしょうか。恵方とは、縁起の良い方角のこと。その方向にある寺社へ参拝することが良いとされたのですね。5年周期で方角が一巡する恵方詣のため、伝統的に毎年異なる方角の寺社へ参拝することが盛んに行われていました。しかし、鉄道網が発達するにつれて、毎年同じところへ参拝することが一般化してきます。これには鉄道会社の宣伝によるところもあり、恵方に当たらない年の参拝を「初詣」と称して集客率をあげていったのです。また、参拝者のために鉄道を建設するという例もあったとのこと。有名なところでは、川崎大師や西新井大師へ参詣するための短い路線がありますね。

▲総距離わずか4.5㎞( 川崎駅と川崎大師間は2.5km )の京急大師線

このように、旧来の「巡礼」習俗が、鉄道会社の経営方針の下敷きになっていった歴史があったのです。宗教と交通が密接に関係しているとは、まさにこのことだったのですね。
 
みなさん、いかがでしたでしょうか。
このような歴史背景を知った上で、全国の路線図を見てみると、これまでとはだいぶ違った見方ができそうです。
夏休みを利用して、鉄道旅行に行かれる方も多いことでしょう。お出かけの際には、ぜひ路線図もチェックしてみてくださいね! 何か発見があるかもしれません☆

■□■小林先生おすすめの本■□■ ※ 画像のリンク先 → 紀伊国屋書店BookWeb

おすすめポイント ( 左から順に 上段:A→B 下段:C→D )

A. 折本仕様の路線図が魅力的です。旅のお供にぜひ!

B. 路線をぬりつぶしながら、自分だけのオリジナル旅手帖を作ってみませんか♪

C. まさに「鉄道と宗教」のテーマが集約されている1冊です。

D .近代化における人々の生活様式の変遷を、柳田民俗学がアプローチします。
 *図書館に所蔵あり → OPAC

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▲  Aの本を手にとる小林先生。私もこの本欲しいです(笑)

(おまけ)

===図書館員吉田おすすめの本===
書名:『旅  江戸の旅から鉄道旅行へ』(国立歴史民俗博物館 発行)  → OPAC

おすすめポイント
少し前の話になりますが、国立歴史民俗学博物館にて、今回のテーマに関連する企画展が開催されました。これはその図録となります。関連サイトもご参照ください。
http://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/project/old/080701/index.html

 
さて、次回の小林先生のラーニングコモンズレファレンスですが、引き続き「宗教と交通」について、よりディープに展開していく予定です! 関西圏の鉄道事情や、“宗教団体専用列車”とはどのような存在なのか…等々、興味深いお話が聞けそうです!
また、夏休み旅行に行かれた方で、路線図にまつわる発見エピソードがありましたら、ぜひ一緒に語り合いましょう(^o^)♪ ( 日時等、詳細については後程お知らせします。)
 
Have a nice summer!!
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