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綜合仏教研究所
【開催御礼】公開講座「バーヴィヴェーカの初期不二一元論批判―『中観心論』および『論理の炎』に見る「瓶空喩」をめぐって―」について
綜合仏教研究所では、平成25年2月20日(水)に、何歓歓先生(中国社会科学院哲学研究所 助理研究員/東京大学大学院人文社会系研究科 外国人研究員)を講師にお迎えし、公開講座「バーヴィヴェーカの初期不二一元論批判―『中観心論』および『論理の炎』に見る「瓶空喩」を巡ってー」を開催いたしました。
公開講座では中観派の論師バーヴィヴェーカ(清弁)が、初期ヴェーダーンタ思想をどのように批判したのか「瓶空喩」(ghatākāśadṛṣṭānta)を中心にお話しいただきました。
内容は次の通りです。
初期ヴェーダーンタ派の学匠ガウダパーダが、『アーガマシャーストラ』(ガウダパーダに帰せられる著作)の中で、梵(最高我)と個我(jīva)が不二(2つではない)という“不二一元論(advaita)”を特徴づける際に用いた「瓶空喩」があります。
この「瓶空喩」は、瓶を「瓶空」(瓶の中の空)あるいは「虚空」(瓶の外の空)などと喩えたもので、中観派論師であるバーヴィヴェーカは、著作『中観心論』(Madhyamakahṛdayakārikā)でこの「瓶空喩」から虚空に焦点を当て批判をなしています。
何先生は『アーガマシャーストラ』と『中観心論』、これに『中観心論』の注釈書『論理の炎』(Tarkajvālā)を加え、「瓶空喩」の類似点と相違点を比較考察することで、<バーヴィヴェーカがどうしてこれを批判したのか?><バーヴィヴェーカとガウダパーダの生存年代をどう推定するか?>などの諸問題について解説してくださいました。
また講演の後半では、何先生の母校である北京大学や、所属されている社会科学院で現在どのような仏教研究がおこなわれているかについてもお話しくださいました。
本公開講座は中観派思想やヴェーダーンタ思想の中心となる部分の一つを扱った内容であり、複雑な部分もありましたが、何先生のわかりやすい英語とパワーポイントを使った解説によって、度々、会場でうなずく人の姿も見られ、講座終了後も当研究所の研究員と本発表の内容について議論していたことが印象的でした。
何歓歓先生をはじめ、ご来場いただいた皆様に厚く御礼を申し上げ、ご報告にかえさせていただきます。
綜合佛教研究所事務局