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綜合仏教研究所
【開催御礼】公開講座「後期インド密教経典の制作に関する一考察―『サンプタティラカ』とその素材となったテキスト―」について
綜合仏教研究所では、平成27年2月23日(月)にピーター・サント先生(オックスフォード大学オールソウルズカレッジ研究員)を講師にお迎えし、標記の講座を開催いたしました。
インド後期密教のタントラ『サンプタ・ウドゥバヴァ』は、先行する他のタントラから借用した文章をつなぎ合わせることで構成されています。
今回の講義では『サンプタ・ウドゥバヴァ』の釈タントラ(註釈書)とされる『サンプタティラカ』も同様に、様々な文献のつぎはぎによって成立していること、さらにそれが意味することについてお話し頂きました。
前半は『サンプタ・ウドゥバヴァ』の写本情報や成立年代、どのタントラをどのようにつなぎ合わせて構成されているかなどの解説、後半は『サンプタティラカ』がタントラのみならず、『中辺分別論』とその註釈など、より広い分野から文章を取り入れて構成されていることを、本文を比較しながら解説して下さいました。
最後に、『サンプタ』においてはタントラと註釈の境界が曖昧になっているため、「タントラは成就者タイプの下層文化により制作され、その註釈書は難解なタントラを理解しやすくするために僧院の環境において制作された」という従来の見解を見直すべきこと、『サンプタ』のようなテキストを読む場合、我々にとって一見意義のない引用も無意味に存在することに注意しなければならないこと、また、時としてタントラの主要な役割は存在すること自体にあり、実際に何かを述べることではない、との指摘をなさいました。
質疑応答では『サンプトードゥバヴァ』に関して多数の研究を発表されている本学教授の野口圭也先生をはじめ、タントラ研究を専門とする諸先生方との間で活発な意見交換がなされ、参加者にとっては斯界の最先端の知見にふれることのできる有意義な講座となりました。
なお『サンプタ・ウドゥバヴァ』については、野口先生の概説『インド後期密教〔下〕』「温故知新」があります。ぜひご覧下さい。
ピーター・サント先生をはじめ、ご来場いただいた皆様に厚く御礼を申し上げ、ご報告にかえさせていただきます。
綜合仏教研究所事務局
ピーター・サント先生 ご講義の様子