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綜合仏教研究所

【開催御礼】平成26年度 特別講座『仏教テキストの変遷をめぐって』(落合俊典先生)および各種講座について

綜合仏教研究所では、国際仏教学大学院大学 学長・教授にして日本古写経研究所 所長でいらっしゃる落合俊典先生をお招きし、標記の講座を、春学期・秋学期を通し全10回にわたって開催いたしました。

 

落合先生が研究を進めておられる日本の仏教写本は、中国ではすでに散逸してしまった経論が残されている点で、また、刊本大蔵経より古い本文の形を保持していることが多い点で、学術的な校訂を行う場合にとても重要な資料となるものといわれます。

そうした古写本を毎回ご紹介くださり、どの回においても『大正蔵』だけを見ていたのでは分からなかった事柄が明らかにされ、たいへん興味深くまた有益なお話を伺うことができました。

 

七寺および興聖寺所蔵の一切経の調査によると、例えば『馬鳴菩薩伝』の場合、唐仏教の正統な蔵経を転写したのは七寺本と興聖寺本の写本系のものであり、『大正蔵』に収載された高麗版や宋版系のものはなんらかの理由によって置き換えられたもののようです。

『大正蔵』に収載された経本だけでは不鮮明だった問題も七寺本と照合することによって解決をみる可能性があるということになります。

 

さらに、七寺一切経は「不入蔵目録」に挙げられている経典を書写しているのですが、そもそも仏教経典目録の正式書目に挙げないという意味で「不入蔵」とされたものを七寺一切経はなぜ書写したのだろうかという疑問が残ります。

こうした問題の解明に、多方面からのアプローチが展開される落合先生のお話に聴衆はつい引き込まれていました。

 

仏教テキストの変遷をめぐる非常に興味深いテーマで、全10回にわたってご講義くださった落合俊典先生に心より御礼申し上げます。

 

 

なお、昨年度に続き、平成26年度も、特別講座・公開講座・所内研究発表会のほか、国内・アメリカ・ドイツ・イギリスから講師をお招きしての講座を開催いたしました。いずれの講座においても、研究所関係者・本学学生・学外の方々の積極的な意見交換が行われ、盛況のうちに終えさせていただきました。

ご講義いただきました先生方、ご来場の皆様、企画・運営にご協力下さいました関係者の皆様方へ、厚く御礼を申し上げます。

平成27年度も新たな各種講座の開催を計画し、大勢の皆様のご参加をお待ちいたしております。

 

 

綜合仏教研究所事務局

 

 

 

落合俊典先生 ご講義の様子

落合俊典先生.JPG

 

 

様々な経典を多方面からアプローチされるご講義に参加者も引き込まれました落合先生ご講義風景.JPG

 

 

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