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綜合仏教研究所

【開催御礼】特別講座「文献と考古学から観たガンダーラの佛教」(講師:桑山正進先生)について

綜合仏教研究所では、京都大学名誉教授 桑山正進先生を特別講師にお招きし、「文献と考古学から観たガンダーラの佛教」というテーマで、平成27年5月から平成28年1月にかけて全10回にわたる特別講座を開催いたしました。


ここに、本研究所研究員による、最終講義でのレポートを掲載いたします。


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 桑山先生は、実際にガンダーラ地方における僧院の発掘調査を重ねてこられたご経験から、今回の特別講座では、ガンダーラの東アジア仏教の策源地としての特異性について、考古学と文献の両面から縦横に考察してお話しくださいました。

 
 先生がご自身で描かれた地図や僧院の図面(発掘後の基盤図)を見ながらのご講義はたいへんにリアルで、聴講者もガンダーラの地に立ったような思いを味わいながらお話を伺いました。  「地理上のガンダーラとその歴史」に始まり、「宇宙軸信仰とストゥーパの生成」あるいは「インドの無仏像とガンダーラの仏像」、そして「ガンダーラの凋落」「中国の末法思想」など非常に興味深いテーマでお話は進みました。

 
 1月27日の最終回では、先生が描かれた数々の図面を基に、僧院の姿についてお話しくださいました。Dharmarājikāのストゥーパを囲む僧院の図は、最も新しいIII期からII期、I期への変化が分かる内容で非常に興味を引かれました。  
 ほかに、川を見下ろす山間に点在する塔院や僧坊の図は、眺めていると、そこを行き来していた僧たちの姿も浮かんでくるようでした。  
 Jamal Garhiの個室的僧坊が並ぶ僧院の図では、広いテラスがそれぞれの僧坊の周囲にあって、経行にでも使われていたのだろうかなどと想像しました。Jaulianの僧院では石を敷き詰めた中庭をぐるりと囲んで個室が30ほど並び、それが2階建てなので60室、これは玄奘の記している数字よりかなり小規模とのこと。  
 ほかにも堂内にストゥーパのあるKālawānの僧院や、Taxilaのストゥーパと僧院など、多くの発掘例が紹介されました。

 
 全10回の桑山先生のご講義を通して、仏教学の研究も、文献だけでなく歴史学、考古学、文化美術など多方面から総合的に進められてこそ、理解が深められるのだということを実感させられました。
 このような学びの機会をいただけたことに深く感謝申し上げます。



 【最終回のご講義の様子】
(リアルな内容のご講義に、最終回まで多くの方々にご来場いただきました) 講義風景①


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 以上、本研究所研究員によるレポートでした。

 桑山先生のご講義では、所員・本学学生のみならず、学外研究機関からも幅広い分野の研究者の方々に御参加いただきました。本連続講座の開催にあたり、貴重なご講義を頂いただけでなく、広く学術交流の機会を持つことができましたことを、主催者としても感謝申し上げます。
 ご講義をして下さった先生、ご来場下さった方々に、厚く御礼を申し上げ、ご報告にかえさせていただきます。


綜合仏教研究所事務局

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