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綜合仏教研究所
【開催御礼】 特別講座 「仏教と日本の建築」
綜合仏教研究所では、藤井恵介先生をお迎えし、全5回の特別講座を開催いたしました。以下、小宮俊海研究員の報告レポートです。
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綜合仏教研究所では、平成28年度特別講座として2016年9月27日から全5回にわたって「仏教と日本の建築」と題し、東京大学教授の藤井恵介先生をお迎えしてご講義頂きました。
先生は、東京大学工学部建築学科のご出身で、日本の仏教寺院建築史がご専門です。年代や宗派における建築様式の変化や特徴といった側面に注目する長年のご研究の成果を数多くの写真資料を用いながらわかりやすく解説頂きました。建築史の立場から多面的に仏教文化を捉えていく姿勢は、主に仏教学を研究対象とする者にとっても資するものが大いにあり、とても有意義な講座となりました。
講座は毎回、仏教学を専門とする学生のみならず、歴史学・建築学といった多分野から大学内外の方々が来場し、教室はいつも満員でした。内容は、時代や宗派を限定せず、日本の仏教建築史を網羅的に解説されました。日本における仏教文化の変遷は、建築史においても政治史や思想史と密接に関わっていることがよくわかります。また、栄西や重源といった中国留学を経験した多くの僧たちが持ち帰ったたくさんの文物や技術が禅宗様や大仏様といった建築様式の展開にも多大な影響を与えることが伺えるとされています。
全5回の講義の中でも特に第3回「礼堂論―日本的仏堂の成立」では、現在日本における典型的な寺院本堂の内部とされる内陣と外陣といった僧侶と俗人の境界がいかに成立してきたかのという問題について解説されました。具体的には俗人が畳を持ち込み、參籠して夢見という宗教体験を得る目的が関わっているとする独創的な学説について当時の日記資料から紐解かれました。そこでは、建築史研究において指図や資材帳といった歴史文書や、柱や基石といった解体・発掘調査の成果のみならず、文書や仏典や古典といった文献資料を総合的に解読する必要性について指摘されました。それらは同時に日々、仏典解読に従事する仏教学研究の重要性を示唆するものでもありました。
近年、学際的な研究が叫ばれるなか、仏教研究においても専門分野を超えた横断的研究が重要であることが証明された講座となったと思います。ご多忙の中、集中的にご講義頂いた藤井先生に篤く御礼申し上げます。ありがとうございました。
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ご来場いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。
綜合仏教研究所では、今後も研究の第一線で活躍されている先生方を講師としてお呼びする予定です。予約不要・参加費無料ですので、皆様ぜひふるってご参加ください。
綜合仏教研究所事務局