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綜合仏教研究所
【開催御礼】特別講座「修行者の目から見た唯識思想」
綜合仏教研究所では、佐久間秀範先生をお迎えし、全5回の特別講座を開催いたしました。以下、伊久間 洋光 研究員の報告レポートです。
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総合仏教研究所では筑波大学教授の佐久間秀範先生を講師としてお招きし、全5回の特別公開講座を開講いたしました。講座のテーマは「修行者の目から見た唯識思想」です。
瑜伽行唯識思想は、その名称から「識のみが存在して、外的世界が存在しない」という観念論と捉えられる傾向がありました。また多数の論書・諭師が存在するため、その思想を把握しにくい点がありました。
先生はまず瑜伽行唯識思想がヨーガ行者の実践から生まれたものであるという前提を示され、我々が真実の世界を言語概念によって歪めて見ていること(虚妄分別)を自覚することが修行の出発点であることを解説してくださいました。そして、唯識とはその虚妄分別によって認識対象を想い描き出しているに過ぎないということであると示されました。
また先生は、『瑜伽師地論』「本地分」「摂決択分」・『大乗荘厳経論』・『中辺分別論』・『解深密経』などの唯識思想を説く諸典籍について、最新の研究に基づき新古の層を整理されました。そしてそれらの典籍において、「三性説」・「転依思想」などの理論の展開がどのように跡付けられるのかを示されました。さらに、玄奘による中国唯識教学の形成を、それらの思想の展開から改めて整理されました。
今回のご講義を通して、大乗仏教の重要な潮流である瑜伽行唯識思想について改めて理解を深めることができました。また、個別の理論の展開を、諸典籍の新古の層の正確な把握に基づき跡付けるという文献史学の基本姿勢を改めて学ばせて頂くことができました。
ご多忙のところ貴重なご講義を賜りました佐久間先生に心より御礼を申し上げます。
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ご来場いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。
綜合仏教研究所では、今後も研究の第一線で活躍されている先生方を講師としてお呼びする予定です。予約不要・参加費無料ですので、皆様ぜひ、ふるってご参加ください。
綜合仏教研究所事務局