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綜合仏教研究所
【開催御礼】公開講座「中世インド宮廷料理の再現の試み:サンスクリット文レシピ本『料理の鏡』に基づいて」
綜合仏教研究所では、2月12日(火)に、駒澤大学講師の加納 和雄先生を講師にお迎えし、公開講座を開催いたしました。以下、横山 裕明 研究員の報告レポートです。
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経典の字面を追うだけで仏教を理解することはできません。なぜなら経典の意図は地理・風土・気候・政治情勢など幅広い知識に基づかなければ読み取れないからです。しかし、生活の中心である「食」に関して学べる機会はほとんどありませんでした。そのような「食」の中でも宮廷料理は特に仏教との関係を様々な場面で見出すことができます。お釈迦様自身もシャーキヤ国の王子でありましたし、それ以降の仏教教団も様々な国の王族と切っても切れない関係にあったことは様々な文献から読み取れます。このような事情から中世インド宮廷料理に関するご講義をいただきました。
まずはインドの食文化を知る資料について概要を教えていただきました。壁画や絵画などに遺された調理や会食の風景、料理書の他にも医学書や文学作品などに見られる料理の方法や効能などを具体的に取り上げていただきました。また、それらに基づいて特定の地域・時代におけるインド食文化を再構成し、現在の伝存文化も含めて総合的に突き詰めれば当時の中世インド宮廷料理の再現に見通しがつくだろうという学際的な知見のご紹介には強い感銘を受けました。
次に、インド料理を記述する文献資料に焦点を当て、さらに詳しい内容をご紹介いただきました。『ローコーパカーラ』『マーナソーッラーサ』『クシェーマクトゥーハラ』など様々な文献を挙げていただき、その上で今回の講義の中心となるサンスクリット語で書かれた料理レシピ本『料理の鏡』の概要と位置を詳しく取り上げていただきました。『料理の鏡』の成立年代、成立地域、基礎資料となる3種の校訂本と4種の写本など、詳細なご紹介をいただき、実際の料理に関する記述も和訳で見やすく示していただきました。
最後に、いくつかの再現料理のレシピをご紹介いただき、現代において代用できる食材や調理方法について教えていただきました。多くの文献資料に加え、プロジェクターで再現料理の調理動画や完成品の写真を見せていただき、味の感想なども教えていただくことで理解もより一層深まりました。貴重なお話を賜りました加納和雄先生に心より御礼申し上げます。
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ご来場いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。
綜合仏教研究所では、今後も研究の第一線で活躍されている先生方を講師としてお呼びする予定です。予約不要・参加費無料ですので、皆様ぜひ、ふるってご参加ください。
綜合仏教研究所事務局