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綜合仏教研究所

【開催御礼】公開講座「臨床宗教師の不都合な未来」

綜合仏教研究所では、1月16日(木)に、種智院大学 教授の松本峰哲先生を講師にお迎えし、公開講座を開催いたしました。

以下、田中杏珠さん(大正大学臨床宗教師養成課程修了)の報告レポートです。

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 116日、「臨床宗教師の不都合な未来」と題して、松本峰哲先生の公開講座が開催された。私自身、臨床宗教師として真摯に活動しようとすればするほど、この制度に内在するジレンマに葛藤する日々を過ごしていたので、この葛藤に対する答えが用意されているのではないかという期待を胸に、受講させていただいた。

 まず、そもそも臨床宗教師とはどういうものなのか、誕生の経緯を含め、丁寧に説明していただいた。これによって、心のケアをするために、なぜわざわざ臨床宗教師という資格制度を創設しなければならなかったのか、その必要性について、改めて理解することができた。

 次に、松本先生ご自身が臨床宗教師であり、かつ種智院大学で臨床宗教師養成講座を受け持っておられるという立場ゆえに直面する、臨床宗教師という言葉だけが先行する危うさを語っていただいた。すなわち、臨床宗教師という言葉だけが独り歩きし、その本質や宗教という枠組みを実感しないまま、これを目指そうとする危うさである。この点については私自身もあまり実感していなかったため、新たな視点を提示していただいた。

 そしてこれらを踏まえて、不都合な未来として、先生の実体験等を基礎に、想定される最悪な例として、仮想の事例を3例ご紹介いただいた。しかし、いずれの事例も私たちが活動していく中で頻繁に耳にするものばかりで、「最悪の」事態とも「未来の」事例とも思えなかった。もちろん先生は、このような事例を挙げて、私たちの不安をあおるのでも、臨床宗教師制度を批判するのでもなかった。これから私たちがどのような方向を向いていけばよいか、理想の形を示して、講座は終了した。

 先生が指摘してくださった問題は、臨床宗教師という資格制度が動き出すと同時に、その制度にすでに内包されていた問題であったのだろうと思う。だからこそ「最悪」でも「未来」でもないと感じるのである。しかし、この不都合に目をつぶって、これまでと同様に活動していくのか、それと向き合って、あるべき姿を模索しながら方向転換をしていくのかで、行き着く未来は全く違ったものになるのだろうと思う。もちろん、私が抱えているすべての葛藤に答えが出たわけではなかったが、臨床宗教師の資格制度や養成課程に関わっている先生の中に、このような視点を持っておられる方がいらして、このような機会が私たちに与えられたことは、幸せだったと思う。改めて、地に足をつけた地味な活動ができる臨床宗教師のままでいたいと決意させていただく機会となった。

 最後になったが、ご多用中のところ、遠方からご来所いただき、講義を賜った松本先生に、心より御礼申し上げたい。



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ご来場いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。

綜合仏教研究所では、今後も研究の第一線で活躍されている先生方を講師としてお招きする予定です。予約不要・参加費無料ですので、ぜひふるってご参加ください。

綜合仏教研究所事務局

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