学部・大学院FACULTY TAISHO
東洋史コース
☆○o。高校生に薦める東洋史理解のための書籍-その1-。o○☆
木々の緑も日に日に濃くなってきました。
夏が少しずつ近づいているようです。
今回から、高校生へ薦める東洋史理解のための書籍を紹介していきたいと思います。
1回目となる今回は、中国古代史を専門としている小林伸二先生のオススメ本です。
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史料を読む
東洋史コース教授 小林伸二
安本 博『春秋左氏伝』
(ビギナーズ・クラシック 中国の古典 角川ソフィア文庫、2012年)
歴史はその時代を対象にした史料を通じて語られるものです。史料の理解が歴史像をつくるともいえます。東洋史にとって史料は、多くがいわゆる漢文で書かれたものです。漢文を読むことは史料そのものを深く探ることにつながります。
わたしが研究の対象とする中国古代史は、とくに漢文を読む力が求められる分野です。儒学の集大成としての経学に代表される、その学術世界にあって、古典には膨大な「読み方」あります。春秋時代の歴史説話集としての『春秋左氏伝』、通称『左伝』は、中国古典として著名な史料です。前8世紀から前5世紀にかけての魯国の年代記『春秋』に関する注釈書として、戦国時代にはそのかたちが出来上がってと考えられています。中国はもとよりわが国でも古くから読みつがれ、「読み方」そのものが多様です。あの福沢諭吉や夏目漱石の愛読書としても有名です。
『春秋左氏伝』には春秋時代の各国の政治や外交、軍事に関するはなし、ときにはわたしたちのこころに響くことばなど、さまざまな興味深い面が見られます。古典の世界は大きくそして深く、いまの時代でもいろいろと考えさせられるところがあります。
本書はそうした『春秋左氏伝』の漢文を紹介しながら、日本語訳をほどこし、わかりやすく伝えるものです。謎めいた夏姫という女性をめぐるはなし、晋・楚の二大国による鄢陵の戦いなど、史料としてそこに何が語られているかを、漢文の学習を通じて理解することができます。また、それぞれの項目についての解説とコラムも興味深いものです。史料の理解から歴史を学んでみてはいかがでしょうか。
きっと東洋史のおもしろさが感じられると思います。
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小林先生、どうもありがとうございました。
なかなか、手に取ることのない本かもしれませんが、これを機に手に取ってみてはいかがでしょうか?