学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

仏教文化遺産コース

特別企画「学びの探索 教員版」第5回 中村夏葉先生

公式Facebookページ開設を記念して、学科教員の研究の紹介や教員になった経緯などを紹介する企画です。
大学HPの教員紹介よりも一歩踏み込んだ内容となっております。
高校までには居なかった、専門分野において突出した知識や経験を持つ仏教学科の先生たちを余すことなく紹介します。

学びの探索 教員版 №5
※「学びの探索 教員版」では、学科教員の研究の紹介や教員になった経緯などをご紹介します。

第5回は仏教文化遺産コースの中村夏葉先生です。

 

📜📜仏教美術研究へといざなったもの 📜📜
📕食卓での日常の話題📕

私の母は仏画を専門に描き続けている日本画家です。特に私が幼い頃、母は毎晩遅くまで作業をしていました。必死に絵を描いている母に遊んでほしいとも言えず、傍らでゴロゴロしながら、絵の外枠の端っこに怒られない程度に落書きをして遊んでいたのを覚えています。その頃、父は仏教系の大学の助手をしていていました。ある書店で立ち読みした雑誌にたまたま載っていた曼荼羅に魅せられ、父は仏教を学び始めました。特に空海が日本へ初めて請来した両部曼荼羅に強い関心をもっていました。そんな両親と囲む食卓での話題は、私にとってはチンプンカンプンな仏教や曼荼羅に関する話でした。

 

📕子供時代のディープな海外旅行📕

初めて海外旅行は小4の時でした。行先はインド。オールドデリーの路地裏で飲んだチャイが今でも忘れられません。父は大学の調査団で何度もインドの遺跡調査に訪れていました。そんな父が母のために計画したのがこの旅でした。きっかけは空海請来の両部曼荼羅を復元制作するという大きなお仕事を頂いたことでした。父はプロデューサーとして母に曼荼羅をいかに描かせるか、その第一歩として重要なのが、曼荼羅の故郷であるインドの地に母自身が立って、土地の空気を感じることだと考えました。そこで、それから毎年のようにインド・中国の各地を訪れ、遺跡や文化財を見るだけではなく自然・風土をも体感する旅が続きました。まだ小中学生だった私は、何も分からず両親について行くだけでしたが、それでも驚きや感動はたくさんあり、無意識のうちに仏教の魅力に引き込まれていったように思います。

 

📕モノから歴史やメッセージを読み取る美術史学の道へ📕

こうした環境で育った私ですが、最初から仏教美術の道を志していたわけではありません。高校卒業後は外国語大学で中国語を学んでいました。中国語の勉強はとても楽しく、卒業後は中国語を活かして何かがしたいと思っていましたが、就職のイメージが湧かずどうしようか迷っていました。そうしたところ、母が「仏教美術の勉強してみたら?」と一冊の本を渡してくれました。それが、当時、名古屋大学の教授だった宮治昭先生の『仏教美術のイコノロジー:インドから日本まで』という本でした。一般向けに優しく書かれた本ですが、仏教美術の表現をもとに、その背景に広がる豊穣な仏教世界のイメージを鮮やかに説明した内容でした。幼い頃のインド旅行で感じた感覚が呼び起こされるようでもあり、非常に興味をもちました。そこで「よし!仏教美術を学んでみよう」と美術史学の道へ進むことを決めました。

 

📕曼荼羅の表現とそれを支えるイメージ📕

 私の研究対象は絵画化された絵図としての曼荼羅です。空海がもたらした両部曼荼羅の淵源はインドにありますが、その図様には多くの相違があります。この違いが意味するものは何か、表現する内容が違うのか、または表現方法が違うだけなのか、曼荼羅には分からないことだらけです。インドから伝えられた曼荼羅を見た唐の人々が何を感じ、何を想って新たな曼荼羅図を作り出したのか、曼荼羅の背後に広がる重層的な思想・文化のイメージに少しでも迫れるよう日々研究を続けています。

中村先生の経歴やご専門についてもっと詳しく知りたい方は、以下のリンクをご覧ください。
https://researchmap.jp/ka-nakamura

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