学部・大学院FACULTY TAISHO
仏教学コース
【無憂華 プロジェクト】平野隆光さんからのメッセージ
平野 隆光(ひらの りゅうこう)
2012年度卒/仏教学科宗学コース(真言宗智山派)
真言宗智山派 華藏院 副住職
青山学院大学経営学部卒業後、智山専修学院にて一年間修行。のち、大正大学人間学部仏教学科3年次編入。
卒業後、大正大学の事務職員として7年間勤務。
学生のキャリア支援に従事し、学生支援のほか、学生の就職先企業の開拓・信頼関係の構築、各種就職イベント・キャリア講座等の企画運営も担当。(2020年3月、大正大学を退職)
みなさん、こんにちは。
今年(2020年)3月末まで大正大学にお世話になりました平野と申します。
僭越ながら、無憂華プロジェクトに私からのメッセージを寄せたいと存じます。
私は千葉の田舎寺の長男として生まれ、“跡を継ぐ”ことを半ば宿命づけられていました。
周囲からは「坊主丸儲け!」「将来安泰!」とよく言われ、子供ながらに「坊主になりたくねー」と思うようになりました。
社会における坊さんの「存在価値に納得できなかった」(=「坊さんなんかいらない」と思っていた)ことも、坊さんを避けたかった理由です。
そこそこの人生を、それなりに歩み、18歳の時、進路決定を迫られました。つまり、「坊さんの跡取りを目指して、お前は大正大学に進むのか?」という問いに答えなければなりませんでした。私は、「絶対いやだ」と即断し、キリスト教系の大学に進みました。
大学を卒業する頃、改めて進路決定を迫られます。今回はよく考え、「資格を取ればマイナスにはなるまい。他にやりたいことも無いし。」という下心に従い、一年間本山での修行に入ることにしました。
この一年が、本当に大きかった!
様々な糧を得ることができましたが、特筆すべきは「仏教との出会い」だと思っています。
この「仏教」なるものの真の姿は、私がイメージしていた“坊さん”とは大きく異なるものでした。 必ずしも「“坊さん=仏教”ではない」(少なくとも、そういう現実もある)という事実に気づき、「ああ、仏教ってこんなに素敵なんだな」と思わされました。
この時以来、“自分が寺に生まれてきたこと”がどれだけ恵まれているか、とつくづく感じます。
寺に生まれなければ、修行に入り、仏教のリアルな姿に出会えることはなかったでしょうから。
私がそんなに魅力を感じた仏教とは何か、私見を述べれば、仏教とは『生き方の攻略本』であり、『大きな安心(あんじん)を与えてくれるもの』です。 その教えについては、今現在「仏教系大学」である大正大学に在籍する皆さん自身で触れていただければと思います。
この中身こそ大切な気がしますが、とても書ききれないので割愛します。
さて、今回私が皆さんにお伝えしたいのは、「大正大学という“仏教に出会える環境”にいられることは、すごく恵まれているんだ!」ということ、そして「仏教との出会いは、今後死ぬまでのあなたの人生にとって、大きな糧になる!」ということです。
もちろん、社会人になるべく就職活動に臨む学生にとっても、あるいはビジネスマンにとっても、仏教はとても有益だと確信しています。仏教は「生き方の攻略本」ですからね。
さてさて、修行後の私の歩みに話を戻したいと思います。
私は修行ののち、父である当寺の住職にこんなお願いをしました。「もっと仏教を学びたい。寺の仕事は疎かにしないから、仏教が学べる大正大学に通わせてほしい」と。
そして私は3年次編入にて大正大学に入学し、坊さんをしながら、2年間仏教を学ばせていただきました。
この2年間でも多くのご縁に恵まれ、これらも一つのきっかけに「大正大学事務職員」の就職試験を受けることになりました。
様々な人に助けられ、なんとか試験に合格でき、その後7年間大正大学で勤めさせていただきました。
たまたま一度の異動もなく、最初から最後まで、就職課のメンバーとして、多くの学生、多様な企業、また保護者の方々と関わりを持たせていただきました。本当はここも詳述したいのですが、それはまたの機会にしたいと思います。
未曽有の状況で、いつでもどこでも何をするにも「コロナ、コロナ、コロナ…」。
これほどまでに社会を蝕むことになった脅威も、一年前には誰も予想することはできませんでした。
この世界にはどうも、多くの不確定要素があるようです。
仏教では、この世界を「“思い通りにならないこと”や“自分にはどうしようもないこと”で満ちている」とみます。
自分の希望通りにはならないから、自分の心と現実との間にギャップが生じ、苦しまねばならない、とこの世のリアルを説きます。
ただ、仏教の素敵なところは「この世は苦しい」で終わらせないところです。
その「苦」とどう向き合えばいいのか、思い通りに運ばない現実の中でどうやって生きればいいのか、そのヒントまで与えてくれます。
だから私は、仏教は「生き方の攻略本」だと思うのです。そして、苦しみを攻略すれば心は安らぎます。
だから、仏教は「大きな安心(あんじん)を与えてくれるもの」だといえるのです。
時代を選ばず、人には悩みや迷いが伴います。だからこそ、移ろい続ける世間の中で、決して変わらない仏の教えが拠所となるのだと思います。大正大学で学ぶ皆さんこそ、その教えに触れ、激流たる世間に呑まれることの無い人間性を築いてほしいと願っています。
最後に、素敵だなぁと思える言葉の一つを贈ります。
(意味等はご自身でお調べください。その上で、自分なりの解釈をしてみてください。今に沁みる言葉になると思います。)
ときは今
ところ足元
そのことに
打ちこむ命
永久(とわ)のみ命
合掌