学部・大学院FACULTY TAISHO
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仏教学コース
特別企画「学びの探索 教員版」第3回 工藤量導先生
公式Facebookページ開設を記念して、学科教員の研究の紹介や教員になった経緯などを紹介する企画です。
大学HPの教員紹介よりも一歩踏み込んだ内容となっております。
大学HPの教員紹介よりも一歩踏み込んだ内容となっております。
高校までには居なかった、専門分野において突出した知識や経験を持つ仏教学科の先生たちを余すことなく紹介します。
学びの探索 教員版 №3
※「学びの探索 教員版」では、学科教員の研究の紹介や教員になった経緯などをご紹介します。
第3回は仏教学コースの工藤 量導先生です。
(PDFダウンロード可)
工藤先生の経歴やご専門についてもっと詳しく知りたい方は、以下のリンクをご覧ください。
https://researchmap.jp/kudoryodo
中国仏教研究を通じた不思議な出会い-ルーツをめぐる旅の始まり-
青森をルーツとする恩師との出会い
生まれ育ったお寺(自坊)は、青森県の津軽半島にある「今別」という、津軽海峡冬景色の歌で有名な竜飛岬から車で20分ほどの小さな町にあります。境内に青銅製のお墓のような直方体の建立物があって、小中学生の時分はその周辺も遊び場の一つでした。ところが、なんとそのお墓が、私自身の専門領域である中国仏教研究へとつながっていたことが後に判明します。
大正大学の大学院へ入学した際、最初に面倒を見てくださったのが金子寛哉先生でした。先生は青森出身で、そのご縁もあったようです。私は他大学の教育学部から院進したのですが、仏教に関する本格的な知識はほとんどなく、入門書を読みこなすので精一杯でした。金子先生はそれを見かねて、私に基礎から学ぶことを勧め、定評のある概説書を読む勉強会を提案してくれました。先生が選んだ本は、望月信亨博士による『浄土教の起原及発達』(1930年)という計860頁の大著でした。
運命の指南書との出会いと現在の研究課題
どんな本(奥義書?)だろうとワクワクしながら頁を繰ってみたのですが、1頁目から分からない単語ばかりでした。亀茲(きじ)、馬鳴(めみょう)、甘殊爾(カンギュル)、就中(なかんずく)…。音読することすら難しかったです。ところが、一緒に勉強会に参加してくれた先輩はスラスラと読みこなしていました。何もできない自分の無力さと恥ずかしさを強く感じた記憶があります。しかし、この本には何か魅力があると感じました。そして、この一書が私の研究を進めるうえでの最重要の指南書となりました。
現在の研究課題は「中国仏教における仏土論の源流をめぐる研究」です。さまざまな浄土のランク付けを行う「仏土論」は、実は中国仏教で始まった議論なのですが、従来その起源がほとんど解明されていませんでした。その発生期とみられる東晋代から南北朝期の新出資料をもとに、いつ、どこで、誰が関わり、どのような思想状況で仏土論が成立し、東アジア世界に展開していったのか、少しずつ明らかにしています。振り返ると、研究のアイデアの源泉は間違いなく望月博士の金字塔ともいうべき研究書との出会い、そして憧れにあったと思います。
あのお墓に刻まれていた驚きの経文
そのような研究書を最初に紹介してくださった金子先生の卓見にも唸るばかりです。驚くご縁は他にもあって、先生は「貞伝上人東域念仏利益伝」について」(1975年)、「念仏多善根について」(2000年)という2本の論文を書いていました。前者は実は自坊の第五世である貞伝という浄土宗僧侶の伝記について研究したもので、青森の縁と念仏聖への興味から題材に選ばれたようです。後者は中国のある地方に伝わる、通常版の経典にはない念仏の多大なる善根を主張する21文字が増稿された石刻の『阿弥陀経』に関するものです。
一見するとまったく関係のない二つの論文ですが、平成20年に大蔵経研究を専門とされていた佛教大学の松永知海先生が夏休みの家族旅行で自坊を訪れて、貞伝が生前のうちに鋳造した青銅塔婆の側面に21文字多い『阿弥陀経』の経文が刻まれていることに気づき、教えてくださいました。そう、これは冒頭に紹介したあのお墓のことです。
幼い頃になんの気なしによじ登ったり、鬼ごっこや雪合戦の舞台になったりしたことも数知れなかったあのお墓に、なんと中国仏教研究に直結する貴重な文言が刻み遺されていたことが発見されたわけです。すぐさま金子先生に報告して、その驚きと興奮を伝え、数年後、自坊で執り行った私の結婚式の折には先生へ実物をお見せすることが叶いました。
不思議なご縁―夢の続き―
研究を続けていると、わざわざ向こうからやってきてくれたとしか思えないような、不思議なご縁に出会うことがあります。果たして自分なんかが研究を継続しても大丈夫だろうか、そんな不安や諦めの気持ちがフッとよぎったときに、そっと「続ける気持ち」を後押ししてくれた知られざる私の研究のルーツの発見。思いがけず大学教員になることができた今も、まだ、不思議な夢の続きを見ているような気がしてなりません。
【参考】工藤量導「全国念仏行脚―知られざる教化の歴史とエピソード―」(『浄土宗宗報』平成24年2月号)
https://l.facebook.com/l.php?u=https%3A%2F%2Fresearchmap.jp
【参考】工藤量導「全国念仏行脚―知られざる教化の歴史とエピソード―」(『浄土宗宗報』平成24年2月号)
https://l.facebook.com/l.php?u=https%3A%2F%2Fresearchmap.jp
工藤先生の経歴やご専門についてもっと詳しく知りたい方は、以下のリンクをご覧ください。
https://researchmap.jp/kudoryodo