学部・大学院FACULTY TAISHO
国際文化コース
カルチュラルスタディーズ的考察
カルチュラルスタディーズってどのようなことをするところなのだろう、と疑問に思われる方も多いのではないかと思います。
直訳すれば「文化研究」、でもあえて「カルチュラルスタディーズ」なのです。
「文化」ということばには「権威」がどことはなくつきまといます。
たとえば「文化人」、これは一般人にはない特別な文化的教養や能力を身につけている人のこと。
文化を楽しむのに文化人である必要はない、むしろ「普通の人々」のまわりにどのような文化的なネットワークが存在しているのかを感じとることのほうが大切、というのがカルチュラルスタディーズコースの出発点です。
文化的に権威づけられてはいないけれども、私たちの身近にある楽しいもののほうが、ずっとリアリティのある文化であるということはよくあることです。映画やアニメ、ポップソングや広告、私たちの日常にあるものから、いろいろな意味を引き出して考えるのです。
先日のオープンキャンパスの模擬授業の導入で、『ハウルの動く城』を聴講してくださった方たちと考えました。
「動く城」はどう見ても「スチームエンジンのキャンピングカー」です(ジブリファンの顰蹙を買ってしまうかもしれませんが・・・)。つまり、想像力が生み出した「新しい」ものも、19世紀の産業革命を支えた蒸気機関とアメリカのモビリティを象徴するキャンピングカーという異質なものの組み合わせにすぎない、ということです。たぶん、蒸気機関でキャンピングカーを作るというような非効率的なことが現実社会で行われることはないでしょう。ファンタジーという領域でこそ通用する発想にちがいありません。
このように言いましたら、聴講してくださっていた高校生から、「私もそう思っていた」という発言がありました。この洞察力は、文化について考えるときに重要です。
新しく見えるものも、古いものの再活用にすぎない、とうことはよくあることです。
想像力は無限、ではなくて、想像力はリサイクル、ということもできそうです。
もちろんリサイクルされるときには、デザインもコンセプトも変わり、新しい意味も加わります。
『ハウルの動く城』には、エコロジー、エイジズムへのアンチテーゼなどさまざまな方向からまだまだ分析する余地が残っています。
私たちを楽しませるものがどのように構成されているのか、直観的にひらめいたら、つぎに調べることは山のようにでてきます。
これが
楽しむ+ひらめく=知的実践力
ひらめいたあとに、大学で身につける「考える力、論じる力」が発揮されます。