学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

国際文化コース

授業点描②

今回はカルチュラルスタディーズコースの1年生の必修科目である「基礎ゼミ」について紹介します。基礎ゼミは春学期がⅠ、秋学期がⅡ、いわばカルチュラルスタディーズコースの1年生のホームベースのような科目です。

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基礎ゼミそのものは大正大学のどのコースにも設置されている科目ですが、カルチュラルスタディーズコースの基礎ゼミの特徴は、コースに所属する教員全員で担当していることです。授業は教員が順番に3回ずつ行うのですが、毎回、学生とならんで教員も全員参加します。授業の通常のかたちは教員一人に学生多数です。カルチュラルスタディーズコースの教員も、じつは最初はこのような形態で授業を行うことにとまどいがありました。教員は学生の前で講義することは「得意」(のはず)ですが、自分の授業を他の教員に見せることには慣れていません。

にもかかわらず、このような形態の授業を計画した理由は二つあります。一つは、カルチュラルスタディーズは「権威的な視点」を排除する文化研究の方法であるということです。教師は「教室のディクテーター(独裁者)」になる危険性をいつも孕んでいます。何をテーマにするか、どのような課題を出すか、どのように評価するか、どのような考え方を導入するか・・・、教師の一存で決められることはたくさんあります。こう考えるのが正しいのだ、と一方的に見解を押しつける可能性もあります。だからこそ、教室を閉じられた場所ではなく、開かれた場所とし、一人の教員の考え方だけではなく、すぐに他の視点からの見解を提示できる環境、教員たちのディスカッションに触発されて学生も積極的に自分の意見を言える環境を作りたい、と考えたのです。

もう一つの理由は学生と教員の距離を1年生の早い時期から縮めたい、ということです。カルチュラルスタディーズコースはチュートリアル方式のカリキュラムを実践しています。学生は2年生から各教員のゼミに入ります。ゼミの選択は2年生のはじめに学生の希望をきくのですが、そのときまでに教員の研究の傾向や人となりを把握してほしいというのが第二のねらいです。

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広告3.gif 3回の授業が1ユニット、最初のユニットはシャウマン先生でした。テーマは広告、聞きなれない記号論(semiotics)や意味論(semantics)の用語広告3.gifにもたくさん出会いましたが、広告を読み解く方法を実践で習いました。シャウマン先生も、学生の口頭での質問や質問票に書かれた疑問に、丁寧に答えました。現代の消費文化において欠かすことのできないメディアである広告を読解するおもしろさを学生はたくさん発見しました。外国のイメージが広告にどのように利用されているか、広告がどのようにジェンダーを反映しているか、商品の排他的高級感、あるいは大衆性はどのように演出されているか―、最近では、電車の吊り広告や雑誌の広告記事を目にするたびに、コノテーションとかデノテーション、メトニミー(換喩)やメタファーを分析する癖がついてしまったという愚痴(?)も学生から聞こえてきます。広告1.gif

大学祭で一回お休みが入りましたが、来週の授業で次の内田先生のユニットが終わります。ここではフランス文化のなかでどのように「人間」の概念が変化してきたか、ということを、ぺローの「青髭」を出発点に考えてきました。昔話も文化の文脈において考察してみると、さまざまなものが見えてきます。物語の背後にある力関係、物語を成立させている社会の構造、などなど・・・。

1ユニットが終わるたびに、学生は2000字のレポートを書きます。レポートの書き方の基本は春学期の「大学入門4」で学習していますが、理屈がわかれば書ける、というものではありません。日本語、つまり多くの学生にとってはもっとも「自信のある」言語を使ってレポートを書くのですが、自分にとって一番身近なことばとして信頼していた日本語が、じつは自在にはならないということも実感しているはずです。考えていること、伝えたいことを相手に受け入れてもらえることばと論理に当てはめていく作業は、思うほど容易なことではないからです。

でもそのストラグルから学生たちは力を培っていきます。努力の成果は確実に現れています。     ♪♪♪♪  

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