学部・大学院FACULTY TAISHO
国際文化コース
イスラエルからムアレム博士をお迎えして
先日、星川先生の担当されている「異文化特別研究」の授業に、イスラエルから来日されているムアレム博士( Dr. Shlomy Mualem)が講演にいらしてくださいました。ムアレム博士はイスラエルのBar-Ilan Universityで比較文化を研究されていて、日本文化にも強い関心をお持ちです。
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授業は英語で行われました。普段とは違う言語空間に、学生たちは最初は緊張の表情でしたが、丁寧に言葉を選んでくださるムアレム博士の 話に、しだいに引き込まれていきました。
政治的なことは語りたくない、政治のことは皆が語っているのだから、今日は文化の視点からイスラエルについて話したい、という説明から講演は始まりました。ユーモアやジェスチャーも交えながら、講演の内容は①イスラエルの多様な文化、②ムアレム博士ご自身の家族の多様な文化的背景、③ウィトゲンシュタインの二つのオリジナリティ理論(「種の文化」と「土の文化」)、④レヴィナスの「他者性」理論、というように、個人的なことから文化的、かつ理論的な話へと展開していきました。
イスラエルは人工的にできた国であるけれども、だからこそ世界中の文化が集まった場所、そのことを活かすために、異文化がどのように共存できるかということを真剣に模索しているのだとおっしゃられたときには、教室は感動に満ちていました。
異なる文化どうしが相手をねじふせて自分を理解させようとしたり、あるいは相手のすみずみまですべて理解したいという欲求をいだいたりすることは「暴力的」なことなのだ。「他者」とは理解しえない部分を含む存在だと認めるとき、相手の文化を「リスペクト(尊重)」する気持ちが生まれる、相手をつかんだり、つかまええたり、抱きしめたりするのではなく、そっと優しく触れるような姿勢、それが異文化間の理解には必要なのだ、というムアレム博士の考えに、多くの学生が共感しました。
オチは「それは夫婦円満の秘訣」。同じユダヤ教徒でもムアレム博士はスファラッドの文化的背景、奥様はアシュケナージの文化背景、外見もアラブ的風貌とヨーロッパ的風貌。さまざまに異なるところのある夫婦がいっしょに暮らしていくためには、相手の違いを尊重し認め合うことが必要であると、笑いをさそいながら話してくださり、お子さんの写真も披露してくださいました。
国際的な視点から、哲学理論も応用して、文化について深く考えた貴重なひとときでした。
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カルチュラルスタディーズコースでは、さまざまなゲスト講師をお迎えし、文化研究の視点を広げます。