学部・大学院FACULTY TAISHO
国際文化コース
授業点描⑥ 課題論文のタイトル紹介
前回紹介した「異文化理解の発展」の課題論文集の編集がほぼ終わりました。今回はその目次を紹介します。
この授業のテーマは【ホラーとファンタジー】、ステファニー・メイヤーの『トワイライト』は児童文学であり、恋愛物語であり、吸血鬼伝説を利用したファンタジーであり、ゴシック的ホラー小説。恐怖をテーマとするホラーと、夢を描くファンタジーは正反対の物語であるように思えますが、『トワイライト』の例が示すように、ホラーとファンタジーは密接に関連しています。ホラー的な物語要素がどのようにファンタジー的な想像力に結びつくのか、さまざまな作品を読み解きながら授業では考察してきました。
目次を見ると、じつに多彩な題材が取り上げられています。タイトルを見ただけで、論文が何を分析しているかわかるもの、タイトルではどのような素材を研究にしたのかを特定できないもの、題名の付け方にも個性が表れています。授業担当者の立場からすると、タイトルを見て論文の内容が推定できるほうが論文的です。論文はニュアンスではなく、はっきりと論点を打ち出していくことを大切にする表現方法です。
それにしても、大学の研究とはこのように「自由」なものなのかと驚かれるかもしれません。そうです、大学で勉強するということは、この自由を使いこなす力を身につけることにほかなりません。高校まではアニメや映画、ライトノベルは教室で分析したり議論したりするものではなかったかもしれません。大学に入学した途端に、これまで「ふまじめ」のレッテルをはられがちであったものが、研究対象としてむしろ奨励されたりするのです。
カルチュラルスタディーズコースでは、サブカルチャーもハイカルチャーも同じ意義をもつものとして分析の対象にします。私たちは「大まじめに」アニメとゲームの話をします。いまの文化を語る言葉を探して、さまざまな学問分野の成果を逍遥します。学際的(interdisciplinary)な研究姿勢を保つことは、タフでなければできません。
自由に耐えられる体力(知的な粘り強さのことです!)を作るために、私たちは「基礎トレ」に励みます。
◆◆◆目次◆◆◆
ホラーの境界線
万人を怖がらせるホラーとは
『MONSTER』の狂気、幼性というホラー
アンデルセンの『人魚姫』からみる異形のホラーの機能と効果
映画『カラフル』における「死」の宗教観
映画『SE7EN』からみるサスペンスとホラーの境界線
山村貞子と異化効果
ティム・バートンのコープスブライド
逆転する恐怖
「Disney’s クリスマス・キャロル」とホラー
恐怖の対象と性差
『千と千尋の神隠し』にみる恐怖
別人になるというホラー
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』における若返りのホラー
サロメ ―恋が生むホラー―
ぜ子供はバイキンマンに恐怖を感じないか
なぜ童話はホラーとして認識されないのか
『美女と野獣』からみるホラーからラブロマンスへの変化
『遊☆戯☆王』からみるホラーとファンタジーのイメージ
ファンタジーの中から生まれるホラー
『ブラザーズ・グリム』からみる表現方法とホラー
ティム・バートンのコープスブライド
変態(フェチズム)とはホラーの創造物となるか
ヒューマニティーの落差
恐怖とホラー ―『鉄コン筋クリート』から考えるホラー―
宗教から発生するホラーとファンタジー
『魔女の宅急便』からみるファンタジーとホラー
「恐怖」にリアリティをもたらす「POV」
「知る」という行為がホラー作品においてどのような効果を生み出すか
ホラーとコメディ ~「怪奇大家族」より~
なぜ殺人事件が娯楽になり得るのか
『コワイ童話:親ゆび姫』とテレビドラマ『南くんの恋人』の比較
『アイアムレジェンド』からみた、孤独というホラーと逆転するホラー
ジャンルの境界
フレンドシップによるホラーの変化
『DEATH NOTE』のホラーを呼び起こす力
◆◆◆
このあと授業で「校正」を体験して、論文集は完成します。自分の書いたものが人の目に触れるものになる、という少しuneasyで、でも excitingな経験を学生たちには楽しんでほしいものです。
論文集の中身は3月のオープンキャンパスで回覧いただけるように準備をしておきます。
受験生の皆さんにも読んでいただきたい論文集です。私たちの取り組みを紹介できる機会を楽しみにしています。 ♪♪♪