学部・大学院FACULTY TAISHO
国際文化コース
26年度卒業論文のテーマ①
本年度の卒業論文のテーマがでそろいました。早い学生は2年生の終わりから方向性をしぼり、文献を読んだり調べたり、考察を深めてきました。たくさんの候補のなかから、迷いに迷って、ようやく決めることのできた学生もいます。12月の提出です。これからじっくりと取り組んでいきます。
卒業論文は時間をかけて書く論文です。授業で提出する課題論文やゼミ論とは、そこが違います。課題論文がファストフード、あるいはささっと食べるカフェテリアのランチとすれば、卒業論文は丹念に用意されたフランス料理、あるいは懐石料理。ゆっくり時間をかけて会話を楽しみながら料理を味わうように、卒論も一つひとつを仲間といっしょに確認して、丁寧に執筆してほしいと願っています。くれぐれも執筆スケジュールの時間配分を間違えて、芸術のような料理を一気にひとのみにするごとく、批評し合って時間をかけて仕上げていく卒業論文の本来の醍醐味を台無しにしないようにしてほしいと願っています。卒業論文執筆は、そういう意味では、個人的な行為ではなく、ソーシャルなものなのです。
学生たちの選んだテーマを、何回かに分けて紹介します。
まず、伊藤ゼミの一部を。
『さよならソルシエ』における「魔法使い」の表象
何もないところから「美」や「感動」を生み出すという意味では、芸術も、ある意味では錬金術かもしれません。いまでは絵画の代表のように思われている印象派も、最初は人びとの意表を突きました。印象派を代表するゴッホを題材に、漫画という自由な表現メディアは史実をゆるやかに変更しつつ、芸術とは何か、魔法とは何か、根源的な問いを浮かびあがせます。芸術、魔法、錬金術をむすぶ興味深い論考が生まれそうです。
日本のストリートダンス:踊るのはだれか、躍らされているのはだれか
ストリート系のダンスがいま脚光をあびています。学校教育にも取り入れらて、体育の授業でヒップホップダンスをそろいのユニフォームでいっせいに踊っている風景も珍しいものではなくなりました。その一方で、風営法によってダンスは規制の対象になりました。日本の社会では、「みんなでダンスをしよう」と言いつつ「踊ってはいけない」と言うという相反する現象が起こっているのです。現代日本において「ダンス」とはどのような行為なのでしょうか。だれが踊り、そのことによってどのような利益がだれにもたらせているのでしょうか。「ダンス」がどのように実践されているのかを視野に入れ、現代社会における「ダンス」の文化的な意味を探っていきます。
ジブリ猫
ジブリ作品にはたくさんの猫が登場します。忠犬の印象の強い犬と異なり、猫は昔から気まぐれで自己中心的なイメージがあります。ところがジブリ作品では、猫はきわめて忠実に物語の展開を支えます。『となりのトトロ』の猫バスはさつきとメイを行きたいところに運びます。『アリエッティ』の猫はアリエッティと翔のメッセンジャーです。ジブリ作品で猫はどのような役割を果たすのか、ジブリ作品が新しさをもっているとすれば、猫の描かれ方もそのことに貢献しているのではないか、と仮説をたてて、ジブリの猫を物語構造と表象の両面から探ります。
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続きは次回。それぞれのテーマが達成感のある成果を生み出すように、学生同士が励ましあい、助言し合っています。教員は見守ります。ハンドルを握るのは学生自身、教員はときどき助手席に乗せてもらいます。もちろん、下手な運転には「罵声(=厳しい指導)」が飛ぶときも・・・いっしょに事故にはあいたくないですから。多くの学生には一生に一度の大学の卒業論文です。論をたて、文章で述べていく楽しさを十分に堪能してほしいと思います。
♪伊藤淑子