学部・大学院FACULTY TAISHO
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国際文化コース
キーワードは「多様性」と「現代」
今年もあとわずかとなりました。受験生は年が明けたらすぐのセンター試験、そして2月からの一般入試に備えて、最後の仕上げに余念のない日々でしょうか。
カルチュラルスタディーズコースの学生たちにとっても、それぞれの学年で、それぞれに重要な冬休みです。
1年生は学年末のテストと課題に余裕をもって対応できるように、冬休みを有効に過ごしてください。2年生も課題のラッシュに備えなければなりませんが、シーズンごとの忙しさにはもう慣れているでしょうか。いよいよ大学生活も後半に入ります。必修の授業が多い1,2年生と比べて、3年生になると時間割の自由度が増えます。とくにカルチュラルスタディーズコースのカリキュラムは1,2年生のあいだは幅広く学び(=履修する科目が多い)、3,4年生は所属ゼミを中心に各自の研究テーマを深く掘り下げるように構成されています。自分が何を研究したいのか、それをしっかりつかんで3年生への進級に備えてください。3年生はまもなく進路を決定する時期を迎えます。就職活動と卒業論文の執筆を両立させるコツは、先輩たちを見ていると、どちらも一生懸命に取り組むことのように思えます。何かを言い訳にせず、計画的かつ柔軟に、自分のペースを維持して前に進む学生の姿勢から、ときには教員も勇気づけられるのです。進学希望の人は大学院入試の受験も意識しはじめていることでしょう。
4年生たちは卒業論文を提出し、ほっとすると同時に、1月に控えている口述試験に備えなければなりません。また、卒業後の新生活に向けて、気持ちの準備も必要でしょう。充実した大学生活の締めくくりの日々を過ごしてほしいと願っています。
カルチュラルスタディーズ、世間ではまだあまり認識されていない表現のようで、就職活動を経験した学生たちの多くが、「カルチュラルスタディーズコースは何を勉強するのですか?」と面接官から尋ねられたと言います。待ってました!と自分が学んできたこと、取り組んでいる卒業論文のテーマを説明したとのことです。簡潔に説明できず、悔しそうに振り返る学生も、面接官と意気投合したと得意そうに話す学生もいます。面接官は「プロ」ですから、話をうまく合わせてくださったのかもしれません。そうして、学生たちの意欲と達成感を引き出してくださったのだと思います。学生たちが評価されることは、教員にとっても、とても嬉しいことです。
カルチュラルスタディーズコースは文化を研究します。私たちは生活に関わるすべてのものを文化であると考えています。文化は既成の価値を反映し、再生産するとともに、新しい価値を生み出すものだと考えています。文化は経済や政治とも密接に関係し、科学や技術の発達とも関わっています。文化の「いま」は歴史の集積、文化間交流のない文化もなく、追いかけたら逃げていく影を追うような行為が文化研究であるといえるかもしれません。(もっとも、一つの問いに答えようとして、その何倍もの問いを拾ってしまうのは文化研究にかぎらず、どの学問にもいえることです。)
どこまでも広がる文化研究というフィールドで、カルチュラルスタディーズコースの学生たちは「自分のテーマ」を見つけなければなりません。自分たちが生きている文化的空間の成り立ちと意味を探るために、さまざまに関わり合う要因を解きほぐしていきます。キーワードは「多様性」と「現代」、文化研究に挑戦した4年生の卒業論文のタイトルがその証です。あらためてまして、提出論文の論題を紹介いたします。
アリスとマザー・グース |
アメリカとアウトサイダー―モーリス・センダック絵本研究― |
昭和ノスタルジーの記号としての駄菓子屋とファンタジー |
超自然的能力の比較研究~「魔法」と「陰陽術」~ |
『ハウルの動く城』における魔法 |
高橋留美子の1/2 |
「初音ミク」の比較研究 |
ディズニーが描く悪 |
ジブリが描く『ゲド戦記』―ステレオタイプを受容する人々― |
日本におけるラップの受容 |
「人魚」にみる女性像の変容―アンデルセンとディズニーの「人魚」を比較して― |
侍映画と桜――実写映画『るろうに剣心』を中心に―― |
現代の声優についての考察 |
『月刊少女野崎くん』に見るジェンダー |
道徳発信装置としてのヒーロー―ウルトラマンを中心に― |
クトゥルフ神話の神 |
神話としての『スター・ウォーズ』 |
ロボットの限界 |
富野由悠季のガンダム |
日本は難民を受け入れるべきか |
ディズニープリンセスからみる女性の変容 |
『鬼灯の冷徹』からみる地獄.―地獄は恐怖の世界なのか?― |
ホラー映画からみる恐怖表現の変容 |
現代で描かれるグリム童話の魅力 |
X-Menから見る人種差別 |
日本における「お笑い」文化の一考察 |
ゲームの繁栄と衰退 |
アルベール・カミュにおける生と死の一考察 |
カードゲームにおける一考察 |
アイドル戦国時代における一考察 |
柔道とJUDOの一考察 |
日本映画の変容――観客と戦争映画の距離をめぐって |
鈴木孝夫研究――日本人の母語意識を探る―― |
キャラクターは人々に何を与えるのか |
少女雑誌のふろくと少女の憧れ |
ファンのグッズへの愛着~ジャニーズグッズを例として~ |
クールジャパン~政府と担い手のあいだで~ |
祇園の舞妓の作り方 |
『旅の絵本』を読み解く―安野光雅の描いた「旅」とは― |
「アイドルマスター」シリーズ、「ラブライブ!」から見る二次元アイドルの変遷 |
韓国はなぜ美容整形が盛んなのか |
見向きもされず、必要ともされぬ創作物~インターネット空間に潜むヴァナキュラー性~ |
音楽家の定義~ボカロPは音楽家なのか~ |
「絵本を届ける運動」が担うもの |
ヒップホップの政治コミュニケーションの可能性―音楽で政治と社会が変わる時― |
口述試験ではみごとに自分の論をディフェンス(防御)してください。
そして4年間の学生生活の集大成としてください。
カルチュラルスタディーズコースの学生にとっても、すでに合格の決まっている入学予定者にとっても、そしてこれから受験する人たちにとっても、新しい年が希望にあふれた一年になることを心から願っています。
♪伊藤淑子