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国際文化コース

ポム・プリゾニエール(閉じ込められた林檎)


 私は1か月に1度くらい、寿司屋にいくのですが、いつもは日本酒を呑んでいます。しかし、この前いったときには、珍しく他のお客さんがいませんでした。そこで、「変わったお酒はないでしょうか?」と尋ねて、出されたお酒がこれでした。


 よく見てください。瓶の中に入っているのは林檎(リンゴ)です。梅ではありません。不思議なのは、瓶の口から入るはずのない大きさの林檎が入っていることです。
 みなさん、どうやって林檎を瓶のなかにいれたと思いますか? 「林檎を瓶に入れたあとで、瓶の底を溶接した」などと想像するのではないでしょうか?

 きょうは、このお酒について紹介します。
 「カルヴァドス 」(calvados) というお酒があります。これは、フランスの「カルヴァドス県」で造られる、リンゴを原料とする蒸留酒です。
 カルヴァドス県は、フランス北西部、ノルマンディー地方の県です。

 カルヴァドス県は、カルスタで大人気の「ウォルト・ディズニー」とも関係があります!

 「ウォルト・ディズニー」の本名は「ウォルター・イライアス・ディズニー」 (イライアスは父名)で、彼の一族はもともとアイルランドからの移民です。姓の「ディズニー」は、フランスノルマンディー地方のカルヴァドス県の「イズニー」から、11世紀にイギリスやアイルランドに渡来したノルマン人の末裔であることに由来するのです。
 
 その「カルヴァドス」というお酒のなかに、「ポム・プリゾニエール」(La Pomme Prisonnière/閉じ込められた林檎)というものがあります。それが、写真のお酒です。
 林檎1個を丸のまま漬け込まれたものが販売されているのですが、たいていは瓶の口よりも大きな林檎です。

 しかし、どうやって、瓶の口より大きな林檎を瓶にいれることができたのでしょうか? 「お酒の豆知識」にはこうありました。
 
  春、リンゴの実がまだ小さい内に、その実を空瓶の口から通し、瓶を木の枝に直接くくり付けます。
  こうすると、瓶の中で林檎が成長します。
  9月末にリンゴが成熟すると、瓶とともに木から注意深く切り離されます。
  そしてアルコール度数45%1回目のカルヴァドスを瓶に注ぎ、リンゴの実をアルコールに浸します。

 小さいうちの林檎を酒瓶に入れて育てていたのですね! 長期間にわたって、虫を始めとしていろいろなものが混入しないようにするのも、大変でしょうね…。


出典:http://www.graines-agriculteurs.com/nomine-3-thibault-alleaume

 1回目のカルヴァドスを瓶に注ぎ」とありますが、実は、これで終わりではないのです。さらに、最低3~4週間後、「瓶内に残ったカルヴァドスを空け、2回目のアルコール度数45%のカルヴァドスを瓶に注ぎます」。さらに、4~5週間後、「瓶のカルヴァドスを再び空け、アルコール度数40%の3回目のカルヴァドスを注ぎます」。その後、瓶は封をされ、ようやく出荷となるそうです。
 そして、私が初めて呑んだカルヴァドスが日本にやってきた、というわけです。

 最後になりますが、「この地域以外で作られる同様の蒸留酒がカルヴァドスを名乗ることはできず、アップル・ブランデーと呼ばれ、区別される」そうです。手間暇かけてつくったものですから、愛着があるのでしょうね。

 それにしても、カルヴァドスを全部呑んでしまったあと、残った林檎はどうなるのでしょうか…。

参考資料: 
(1)「お酒の豆知識」                     
https://www.sakekaitori.com/knowledge/spirits/%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%89%E3%82%B9%E3%81%AE%E7%93%B6%E3%81%AB%E6%9E%97%E6%AA%8E%E3%81%8C%E3%81%BE%E3%82%8B%E3%81%94%E3%81%A8%E5%85%A5%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E8%AC%8E/ 2018年5月24日閲覧)
(2)「Brandy Daddy
http://brandydaddy.com/chishiki_21_pomme.html (2018年5月24日閲覧)
(3)「カルヴァドス」(ウィキペディア、2018年5月24日閲覧)
(4)「ウォルト・ディズニー」(ウィキペディア、2018年5月24日閲覧)

星川啓慈(人文学科教授)
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