学部・大学院FACULTY TAISHO
国際文化コース
【人文学科国際文化コース】4年生による「カルチュラルスタディーズ総論」の授業
2021年12月には、卒業論文を書きおえた4年生の先輩が、「カルチュラルスタディーズ総論」の最終回で、卒論をもとに、下級生たちに授業をしました。完成したばかりの卒論に対する先輩の熱意と着眼点のおもしろさに、クラス全体が引きこまれました。授業のあと、質問もたくさん出され、意見も活発に交換されました。先輩から、卒論の要約が、授業の感想とともに届きました。
●●●
〈卒業論文「化粧をする男性の美意識」〉
私は、昨今の男性化粧の普及を受け、化粧をする男性の美意識について考察しました。まず、化粧には身体管理機能、社会的機能、心理的機能があり特に、心理的機能は、対自的機能と対他的機能に分けられ、心理的な効果や役割があります。
美意識に関しては、「自らをより良く見せたいという男女ともに持ち得る意識」と定義しました。勉強や筋トレなど、美容以外のことも根本には「良く見せたい・心理的な満足感を得たい」という化粧と共通の意識があるのでは、と考えたのです。ただ、化粧に対する意識には、男女で差が見られます。女性の場合、幼い頃からおもちゃなどから女性は化粧をするというイメージが備わっていたり、社会的に見ても、化粧が礼儀のように求められたりする一面があるのではないでしょうか。また、化粧に関する情報にも富んでいるため、化粧に興味を持てば、たくさんの化粧品や方法を試しながら行える余裕もあります。
しかし男性の場合、外見的な魅力の他にも、収入や仕事での出世、家庭を支えるような役割が重視される傾向も見られることがあり、化粧との接点が少ないかもしれません。そのため、美意識(自分をより良く見せたい)を持っていてもその意識が化粧に向けられることは少なく、化粧は、女性のするものではないかという、暗黙の了解のようにもなっています。
そのような中で、男性と化粧を結びつけるような役割を果たしたのが、様々なメディアです。まず、化粧品広告においては、プロモーションで男性を起用する流れが見られます。女性がモデルを務め、あたかも女性が使う化粧品のように思われていたものも、男性が起用されたことで、化粧品の対象がジェンダーレスであるという印象を与えました。また、化粧品広告の男性起用は、社会的なジェンダーレスの動向を汲んだものでもあり、ジェンダーに対する意識を再確認させるものとなりました。次に、男性の美容専門雑誌として、『FINEBOYS+plus BEAUTY(ファインボーイズ プラス ビューティ)』を取り上げました。この雑誌の発売からは、化粧を含め美容に興味をもつ男性や、化粧をする男性が増えていることが読み取れます。加えて、YouTubeなどのSNSによる発信も男性の化粧を後押しし、化粧を学べる場としても機能しました。このように、メディアが、男性に化粧をするきっかけを与えたり、男性の化粧に向けた興味に応えたりする働きを見せています。
加えて、男性の肌質に特化した化粧品の発売が見られています。メイクアップに関心のある男性もおり、化粧水などのスキンケア商品だけでなく、男性に向けたメイクアップ化粧品も発売されています。化粧品も、男性専用として新たなシリーズが誕生したり、ジェンダーレスの価値観から生まれた男性対象の化粧品ブランドが登場したりするなど、男性が化粧をする環境が整ってきました。
これらの男性の化粧に関連するメディア、化粧品など踏まえ、本論文では、現代における化粧をする男性の美意識とは、良く見られたいという本能的な美意識に気づかずとも目覚めさせられ、社会によって創り出された意識であるとしました。男女が持つと定義した美意識とは異なり、メディアによって刺激されながら化粧のジェンダーの壁を越え作られた美意識の形です。
ただし注意したいのは、男性の化粧が、絶対的正しさとして義務的になってはいけないと言うことです。女性も含め、化粧に対する価値観の多様性を認めていくことが大切だと考えます。
〈授業での発表を終えて〉
まずは、4年間の集大成として発表の機会を作ってくださった伊藤先生、熱心に発表を聞いてくださった学生のみなさん、本当にありがとうございました。質疑応答を含め、自分の考えをしっかり発表出来たのではないかとほっとしています。オンライン・オフライン含め、大勢の前で発表する機会はめったにないので、良い経験になりました。私の発表を聞いてくださった学生の方から、たくさんの感想や化粧に対する意見をいただけ、とても嬉しかったです。
〈4年間を終えて〉
本当にあっという間に、全ての授業が終わってしまいました...レポートに追われ、提出がギリギリになって焦っていた頃も、今となっては懐かしく思います。私は、学科の授業だけでなくチャレンジプログラム(今はなくなってしまいましたが…)に参加し、経営について学んでみたり語学研修に行くなど、いろんなものに触れた4年間でした。コロナで制限されてしまった活動も多々ありましたが、逆にコロナ禍だからこそ学べたこともあります。大学生活での学びを無駄にせず、また春から頑張ります!
●●●
先輩から後輩へ、学びの伝統が引き継がれていきます。
「コロナ禍だからこそ学べたこともある」、何よりの力強い励ましです。
楽しく、自分の納得のいく勉強をすることの大切さが後輩たちに伝わりました。
授業に出席した後輩たちのコメントをいくつか紹介します。
●●●
発表お疲れさまでした…!4年生の先輩ってこんなにもすごいんだな、言葉を選ぶのが上手だな、見習いたいな、と思いながら発表を聞いていました。男性の化粧について深く考えたことがなかったのですが、とても興味深かったです。ためになる発表をありがとうございました☺︎2年後、私も先輩のようになれるように頑張ります…!
●●●
私は男性の化粧についてはずっと批判的でした。しかし、自分の個性を出すという面では少しありな気がしてきました。やはり化粧とは自分の気分をあげたり自分のコンプレックスを隠せたり自信を持たせてくれるものです。そこに男も女も関係ないなと感じました。
●●●
現在はコロナもあり大学内で先輩に会う機会は滅多になく、私自身サークル活動などもしていないのでこういった機会に直接先輩からのアドバイスや具体的な研究結果を拝聴させていただけるというのは大変貴重に思います。まずは学生生活を楽しんでほしいとありましたが、先輩の非常にレベルの高い研究を見ると、身が引き締まる思いでございます。今回は本当に有難うございました。
●●●
大学は学びあうところです。それを実現してくれた先輩から、後輩たちはたくさんの刺激を受けとりました。100人を超える学生たちに授業をしたことは、先輩にとっても大きな自信になったことでしょう。これからも学生同士で学びあう機会をたくさん作っていきたいと思います。
人文学科国際文化コース