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国際文化コース
【人文学科国際文化コース】 リレー国際体験記(5)星川啓慈先生②
国際文化コースの教員によるリレー国際体験記、今回で5回目です。
ぜひお楽しみください。
バックパッカーとしてのヨーロッパ一人旅
なお、写真は1枚を除いて、すべて星川が撮影したものです。やや古ぼけていますが、かえって味わいがあるかもしれません(笑)。
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「ユーレイルパス」というヨーロッパの鉄道が乗り放題の切符で、気分の赴くままに旅をしました。電車で一緒になった年配の方は、「働きづめだった会社を退職したので、1年かけて私はドイツ語を、妻はフランス語を勉強しました。いま、1年かけてユーレイルパスでヨーロッパを巡っているところです」と話してくれました。羨ましい老後生活ですね!
私は、学生だったので、もちろんリッチな旅はできませんでした。夜行電車で移動したことが1度(か2度)だけありましたが、隣の列車では夜通し大勢の乗客が大騒ぎをしていて、まったく眠れませんでした。パリの北駅では1200円の安い宿に泊まったり、旅先でのお昼はスーパーで買ったもので済ませることもあったりと、学生の身分に相応の旅でした。
先回、「何度も騙されそうになったけど、どれも無事に切り抜けた」と書きましたが、1つだけ紹介します。
フランスのレストランで昼食をとったときのことです。勘定を払いましたが、「どうも高すぎる」と思って、「計算は合っているのですか」と確認しました。相手はすぐに計算しなおして(じつはそのふりだけ!)、余計に払った分を返してくれました。その後、レストランを出たのですが、「やはり高い」と思って計算してみるとまた間違っています。私が再びレストランに入ると、今度は、私を見るや否や、何も言わずに慌てて、正しい釣銭の残りの金額を向こうから差し出しました。このことからわかるように、客を2回(3回だったかも)騙しているわけです。悪質ですね。
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カンザス大学の学生証には “University” という文字があるので、「大学生である」ことがどこの国でもわかってもらえて、多くの美術館や博物館は無料で入ることができました。フランスでは、「ルーヴル美術館」を訪れました(この美術館に無料で入れたどうかは、記憶にありません)。
授業でも毎年話している「ジョコンダ」(=「モナ・リザ」)だけはきちんとケースに入れられて陳列されていました。湿度や温度の管理がなされているのでしょう。しかし、ほとんどの作品は鑑賞者と作品を隔てるロープなどがなく、作品に近づいてじっくり細部を見られることに、驚きました。
皆さんも知っている、かの有名な「ミロのヴィーナス」も、「無造作に」展示されていました。思わず触ってみたくなりましたが、もちろんそこは我慢しました! その時「これはレプリカに違いない」と思っていたのですが、後日、美術館に詳しい人に確認したら、「本物だと思います」という回答でした(自分で調べてもそうでした)。
作品と鑑賞者の距離が短いことに関連して、もう1つ。
それから数年して訪れたロンドンの「テート・ギャラリー」(現テート・ブリテン)でのことです。ウィリアム・ブレイクの作品は水彩画なので、光が当たると色が薄くなるため、鑑賞されないときには黒い布で覆われています。しかし、作品を鑑賞したい人は、自分でその布を取り去って「直に」その作品に向かう事ができます。ドキドキしながら、黒い布をとり、ブレイクの作品と対面したのを思い出します。
作品と鑑賞者の距離が近いことは、鑑賞者にとってはありがたいことですが、当然、心無い人々によって、傷つけられたり盗まれたりすることもあるようです。それでも、日本と比べるとヨーロッパでは(リスクがあっても)作品と鑑賞者の距離が近い、と思います。なぜそうなのか、比較文化研究の種になりそうですね。
スイスでは、山岳鉄道でツェルマットに到着しました。目的は「マッターホルン」を見ることです。最初の日は、山の一部が短い時間見えただけで、がっかりしました。そこで、もう1日もう1日と3泊しましたが、あとの2日はまったく見えず…という結果に終わってしまいました。
3泊した宿では、温めて飲むワインの存在を知りました。たしか「グリューワイン」(Glühwein)と呼んでいましたね。ただし残念ながら、私の好みの飲み物ではありませんでした。ちなみに、この種のワインは、フランスでは「ヴァン・ショー」(vin chaud)、英語では「モルドワイン」(mulled wine)と呼ばれるそうです。日本でも最近はかなり知られるようになっています。
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「記憶は過去を美化する」という名言もありますが、このシリーズを書くようになって昔のことを思い出し、頭の良い体操になっています(笑)。
次回は、「ヨーロッパで一番、車窓の景色が美しい」ともいわれる、ノルウェーの「フロム鉄道」について書きます。哲学者のウィトゲンシュタインが何度も乗った鉄道です。ご期待ください!
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バックナンバー
⑴「カンザス大学留学体験記」(2022年5月アップ)
https://www.tais.ac.jp/faculty/department/cultural_studies/blog/20220518/76445/
次回のアップも楽しみにしてください。
◆人文学科 助手