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国際文化コース
【人文学科国際文化コース】リレー国際体験記(14)伏木香織先生③:世界の暦と春節について
国際文化コースの教員たちによるリレー国際体験記を今年もお届けします。
今回ご担当くださるのは伏木香織先生です。
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あけましておめでとうございます。
前回から大変間があき、本来は「留学手続き中のこと(2)」と続けるべきところですが、前回、春節の話をしているので、せっかくですから暦と春節の話をしておきましょう。
現在、日本はグレゴリオ暦(太陽暦)に基づいて生活していますが、これが日本で正式に使用されるようになったのは明治6年1月1日のことでした。それ以前の日本では、天保壬寅暦(太陰太陽暦)を用いていたので、実は赤穂浪士の討ち入りの季節は、今のカレンダーとは季節感がちょっと違うなどという話は有名なところです。
これと同様に、世界では、その地域ごとに用いられるカレンダーに独自のものがあります。春節とは、中国の伝統的な暦法によるカレンダー(太陰太陽暦)で導き出されるお正月のことを意味します。中華人民共和国、台湾のほか、過去に中国文化を受容した国々、たとえば大韓民国や朝鮮民主主義人民共和国などの東アジアの国々のほか、ベトナム、シンガポール、マレーシア、インドネシアなどにおいても広く祝日として祝われています。日本の天保壬寅暦(太陰太陽暦)も実はこれに非常に近く、時差による朔日の違いから、中国と日付がズレることもありますが、日本で旧暦と現在呼ばれている暦と感覚的には似ているといってよいでしょう。
しかしながら、注意したいのは、日本では旧暦に基づく慣習が行われていたとしても、それが公的な祝日になることはほとんどないのに対して、春節はグレゴリオ暦を採用した国々においても現在も伝統的な暦に基づいて祝日とされる、という違いがある点です。
中華人民共和国や台湾はいうに及ばず、大韓民国やシンガポールなど、みなさんにとっては意外に思われるかもしれない国々でも、春節を挟む年末年始は、それぞれの地域的なお祭りやイベントがあって、思いがけず楽しい日々があったり、あるいは留学などをしようとするとすべての役所や学校が閉まっていて手続きができなかったりして困ったことになりかねないので注意が必要です。
私もシンガポール大学を受け入れ機関として3ヶ月ほどシンガポールに滞在していた時、その当初の期間が春節だったので大変だった覚えがあります。春節を大変心待ちにはしていたのですが、大学や役所は春節から数日間は開いていないし、わずかに開いていても職員がほとんど休んでいるので機能していなかったのです。また春節の直前、大晦日までには数日間の食料も買い込んでおく必要がありました。なぜならその日、スーパーなどの商店はほとんどが閉まってしまうし、コンビニエンスストアは日本とは扱う商品が違って、インスタント食品くらいしか買えなくなってしまうからです。
でも春節は確かに楽しい期間でもあります。シンガポールだと、「オープンハウス」をする人々もあり、友人たちが相互訪問して、美味しい食事や飲み物、おしゃべりを楽しむような習慣もありますし、寺廟の調査をしている私にとっては、普段は人気がなくて入りにくいかな?というような各地の寺廟がオープンして、盛大に儀礼をしているのを見学できるので、飢えているような暇と時間はありません。
なお、このようにカレンダーが異なれば「正月」も当然変わるので、世界にはたくさんの種類の「正月」や祝日があるのだ、と知っておくといいでしょう。
ちなみに2024年の春節は2月10日(土)です。日本でも横浜中華街などをはじめ、各地で春節を祝う人々とそのお祝いを見ることができますので、よかったら出かけてみてください。
伏木香織
人文学科国際文化コース