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情報文化デザインコース
出版・編集コース誕生記念シンポジウム開催!
11月21日、今年度スタートした表現学部表現文化学科「出版・編集コース」を記念して、コース主催による初のシンポジウム「出版の現状と未来を考える」が開催された。
当日は、総勢80名近い聴衆が参加。出版・編集コースの学生だけでなく、小嶋知善先生の計らいにより、クリエイティブライティングの学生も多数参加し、盛況な会となった。
シンポジウム開始にあたって、コース長の渡邊直樹先生より「出版不況と言われて久しいが、いまこそ『編集の力』が求められている」と、出版・編集コース誕生の意義を語ってくれた。
続けて、登壇したのは柳瀬博一氏。柳瀬氏は記者、編集者を経て現在、日経ビジネス編集チーフ企画プロデューサー。日本の最大級のビジネス情報サイト「日経ビジネスオンライン」を作った一人でもある。また、TBSラジオ「文化系トークラジオ Life」で人気パーソナリティを務めるなど紙とデジタルを越えてマルチに活躍する編集者である。柳瀬氏は、自ら編集した『日本美術応援団』(赤瀬川源平、山下裕二)を例に挙げ「これまでダサいと注目されていなかった日本の美術に、新たな視点を与えることで、アートとしての価値を再発見することができた」と説明。それこそが「編集の力」のひとつだと強調した。
また、「日経ビジネスオンライン」の人気の秘密として語ってくれたのが幅広いコンテンツの発見。「日経ビジネスオンライン」では、単にビジネスにこだわらず、人気コラムニスト小田嶋隆氏の「ピース・オブ・警句」を連載するなど、しっかりとした固定ファンを持つ書き手を数多く取り込むことで、幅広く多くの読み手を「日経ビジネスオンライン」に集めることができたと人気の秘密を公開。
そして、登壇したのが山本春秋氏。山本氏は中央公論新社で書籍編集者として歴史・伝記シリーズを手がけ、現在は小学館デジタル事業局でウェブメディアを担当する。山本氏が担当する女性向けネットメディア「WooRis」「BizLady」は業界最大手の小学館がどのようにネットメディアに進出を果たすのかの試金石として注目の的である。
山本氏はまずネットメディアを水に例え、器によって形を変える特性を強調。読み手が扱いやすく楽しく読めるメディアとして、その裏側を支える技術「HTML」と「CSS」を紹介。またネットメディアの特徴として、どこから読者が来て、どこへ行くのかもリサーチできる点を上げ「読者の流れを設計し、それをモニタリングする」ことも新たな時代の「編集力」となることを示唆してくれた。
最後に登壇したのが三浦崇典氏。三浦氏が経営する池袋の雑司ヶ谷・天狼院書店は出版不況下にあって、新たな書店の在り方を提示するニューウェーブ。書店だけでなく、出版社、著者まで巻き込んでの話題作りなど、従来の書店の枠を越えた活動から目が離せない状況だ。先日創刊した雑誌「READING LIFE」もそのひとつ。三浦氏は「本日のテーマである『出版の現状と未来を考える』の答えはこの『READING LIFE』に書いてある」と話を展開。その答えのひとつが「READING LIFE」で取り上げた蔦屋重三郎。蔦屋は江戸時代の大編集者で山東京伝や歌麿の黄表紙、浮世絵本で大ヒットを生み出した、現代でいう出版プロデューサーだ。その蔦屋に出版界再生の鍵があるとして、その蔦屋を描いた小説『蔦屋』(谷津矢車)を紹介し、その著者である谷津矢車氏が次世代の伊坂幸太郎となるとの大胆予言も飛び出した。
三者三様の立場から「出版の現状と未来を考える」が語られたが、その方向は、現状に甘んずることなく、この先を切り開く「編集の力」が大いに求められていることに一致していた。
会場の学生たちも、この展望に大いに刺激され、シンポジウム終了後もパネリストたちを取り囲んでの歓談が大いに盛り上がった。
今後も出版・編集コースでは、こうしたシンポジウムを開催し、新たな出版の未来を模索していきたい。
(大島 記)