学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

情報文化デザインコース

編集の仕事を克明に書いたジュブナイル

この春、TBS系で始まったドラマ「重版出来!」が評判で、私も楽しく観ている。
ある漫画週刊誌での新人女性編集者の成長物語だが、主人公の真摯で一途な仕事への取り組みに、素直に引きつけられる。
「これが出版社の現実か?」と問われれば、「ファンタジー」と言いたくなる部分が多々だが、出版・編集コースの学生にとっていい教材になると思う。しかし、実際の編集の仕事の描写は多くないので、その点では物足りない。そこで、最近、本の編集の現場をリアルに書いた本を見つけたので紹介したい。
それが『青い鳥文庫ができるまで』(岩貞るみこ 講談社 青い鳥文庫)という児童書だ。
DSC_0347
物語としては、青い鳥文庫編集部の女性編集者が数々の困難を乗り越えつつ、人気作品の年末発売を実現するというもの。「重版出来!」は人間ドラマが中心だが、こっちは1冊の本の企画から出版までを担当編集者の作業を軸に克明に書いている。
DSC_0348
例えば、原稿段階でのチェックに専用ソフトを使っている部分など、初めて知った。用字用語の統一など、テキスト原稿中心のいまならソフトを使う方が便利だが、原稿整理用の専用ソフトがあるとは、さすが大手の講談社だ。その点では、普通の出版社に比べると編集を助けるスタッフの多さとか、編集局の存在などうらやましい部分が多く、どの出版社でもああやっていると思うのはよくないだろう。
他にも気になる部分もなくはないが(一点だけ書いておくと、編集者に宛てたメールが実際を模した状態で掲載されているのだが、そのメールにタイトルがない)、編集作業の内情をリアルに伝えようとしている点で参考になる部分が多い。
総ルビ、「」の文末の句読点ありの表記など、まさに児童書なのだが、出版・編集コースの学生にはよい副読本になると思う。

(大島・記)
GO TOP