学部・大学院FACULTY TAISHO
日本史コース
推薦図書(弐)ー君は、歴史書を読んだことはあるかー
高校生に薦める日本史に関する図書の第2弾!
今回は、日本近世史を専門に研究されている坂本正仁先生の推薦図書を紹介します。
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◎書名:
『コロンブスからカストロまで(Ⅰ)―カリブ海域史、1492-1969―』(岩波現代文庫/学術307)2014年1月
『コロンブスからカストロまで(Ⅱ)―カリブ海域史、1492-1969―』(岩波現代文庫/学術308)2014年2月
(原題は「FROM COLUMBUS TO CASTRO The History of the Caribbean.」)
原本は1970年に出版。1978年に「岩波現代選書」の一冊として翻訳が刊行された。また2000年にも「岩波モダンクラシックス」として刊行されている。
◎著者:E.ウィリアムズ(Eric Williams) 川北稔[訳]
◎出版社:岩波書店 ◎価格:1,480円+税
◎推薦理由・内容紹介:
E.ウィリアムズ(1911-1981)は、英国植民地のトリニダード島に生まれたアフリカ系植民地人。オックスフォード大学で歴史学を学び、以来、カリブ海域史、とくに西インド諸島とイギリスの関係を植民地経済の面から考察して、多数の研究成果を発表した。それらを通じ、イギリスの産業革命はつまるところ、ニグロ奴隷の血と汗の結晶とする「ウィリアムズ・テーゼ」を提唱し、産業革命史に影響を与え続けている。のち初代のトリニダード・トバゴ国首相に就任。
本書は、所謂コロンブスの「新大陸発見」ののち、ヨーロッパやアメリカ合衆国による帝国主義に侵された5世紀に及ぶカリブ海域史である。書店の宣伝文句に「欧米主体の世界史観から脱却するために」とある。カリブ海域、西インド諸島の歴史は、欧米の価値観から語られるのが常であったが、正反対の立場から歴史事実を直視すると全く異なる世界史が見えて来ることを、教えてくれる古典ともいえる著作。
概説として執筆されているが、実に豊富な、各種の史料や著作類をもとに書かれており、歴史の研究方法を学ぶ上でも恰好の書といえる。欧米の歴史書には、このような作品が実に多い。日本史を学ぶ上でも是非、参考にすべきである。
E.ウィリアムズの言。
「歴史の研究とは、戦闘と政治家、年代と事件を記録することではない。人間の愚劣さや欠陥を衝くことでもない。形態はいろいろなのだが、いずれにしろ人間性が陶冶されてゆく過程、人びとの生活や社会が発展してゆくさまを記録することこそが歴史なのである」(「訳者あとがき」より引用)
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坂本先生、ありがとうございました。
雨が続いていますが、そんな時は家で読書を楽しんでみてはいかがでしょうか。