学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

日本文学科

【在学生の活動】学芸員実習体験記

大正大学文学部日本文学科では、学芸員資格を取得することが出来ます。日本文学科や、大学院国文学専攻の方針としても、文学系の資料を扱うことの出来る学芸員の養成は今後の目標とするところです。先日ご紹介した新設科目「日本文学実践演習」や「日本文学踏査」もそうした取り組みの一つといえます。

そればかりではなく、生涯にわたって学ぶ姿勢を身に付け、地域や社会に文化的に貢献する視点を養う上でも、学芸員課程における体験や身に付けることの出来る資質が、日本文学科の学生にとって非常に大切なものであるとも位置付けています。

本日はそうした学芸員課程で奮闘中の学部4年の在校生から学芸員実習の体験記を寄稿してもらいました。末尾には3年生以下の後輩にあたる皆さんや、これから後輩になる受験生に向けたアドバイスもいただきましたので、ぜひ読んでみてください。


皆さまはじめまして。私は日本文学科の4年生で、現在古典文学を専攻しながら学芸員課程を履修しています。今回田中先生にお声がけいただき、私が行なった学芸員実習について執筆させていただく運びとなりました。

まずはじめに、私が学芸員資格を取得したいと思った経緯についてお話ししたいと思います。大学生のうちに何かしらの資格を取得したい…とぼんやり考えていた私は、2年生の春学期に行われた資格ガイダンスに参加しました。そこで学芸員課程についての説明を聞き、もともと博物館や美術館を訪れることが好きだったこともあって、学芸員という仕事に興味を持ちました。2年生・3年生では博物館法や博物館の経営論など、博物館に関する基礎的な知識を身につける授業が中心でした。3年生からは実習に向けての授業も始まりましたが、新型コロナウイルスの影響でオンラインでの授業であったことや、就職活動のこともあり、実習が始まるまでは「ちゃんと着いていけるだろうか」という不安な気持ちのほうが大きかったです。

さて、ここからは学芸員実習についてお話しさせていただきます。私は今年の6月に埼玉県桶川市のさいたま文学館にて7日間実習を行いました。

1日目から4日目までの実習前半は、常設展(博物館で常に行われている展示のことです)の展示構成を考えたり、展示の入れ替えの実務、収蔵品の取り扱いについて学びました。

さいたま文学館は埼玉県にゆかりのある作家(出身地だとか、作品の舞台が埼玉だとか)の資料を常設展にて展示しているのですが、その埼玉県にゆかりのある作家というのが、恥ずかしながら日本文学科に所属している私でも名前すら知らない作家がほとんどでした。ひとりの作家につき展示したい資料を5・6点選び、どういったレイアウトで置くのかなどもすべて自分たちで考えなければならなかったのですが、ひとりの展示を完成させるまでにその作家の生い立ちや代表作、作風などを調べなければならず、苦戦しました。

展示が完成した後は、自分の考えた展示構成を文学館の職員の方々に「なぜその展示品を選び」「どういった意図で並べたのか」を説明しなければならず、かなり緊張しましたが、学芸員の方のアドバイスを参考に展示を考えたこともあり、職員の方々からもお褒めの言葉をいただくことができました。とても嬉しかったです。そして、私たちが普段何気なく見ている博物館の展示は、展示を考えている学芸員の方・職員の方が長い時間をかけて考え練られたものだということを改めて実感することができました。

実習後半の5日目から7日目は、「もし自分がさいたま文学館で企画展を開催するなら?」をテーマに企画展を立案、企画書を作成しました。私はさいたま文学館が近代作家を中心に展示を行なっていることから、企画展では近代以外の時代の展示を行いたいと考えました。「企画展は開催する年に何かしらのアニバーサリーを迎える人物や作品をメインに据えるとよい」という学芸員の方のアドバイスを参考に、私は2021年で生誕475年を迎える埼玉県の戦国武将・成田長親に着目し、「埼玉と戦国武将展」を立案しました。戦国時代は平安時代や江戸時代など、前後の時代に比べて「文学」のイメージがあまり無いかもしれませんが、和歌を詠むことが得意だった武将の和歌集や直筆の書状など、たくさんの資料が現存しています。

この企画展立案は「どんな資料を展示したいか」「どのような広報活動を行うか」なども自分で考えなければならないので、メインテーマに据えた人物や時代に関する知識がないと企画展の構成を考えることができません。短い期間で企画展の内容を考えるのは大変でしたが、他の実習生の方と「どんな企画にする?」などと話しながら企画を考える時間はとても楽しいものでした。学芸員の方からもアドバイスをいただきながら企画書を完成させ、発表を行いました。発表にはたくさんの職員の方や司書の方がいらっしゃったためとても緊張しましたが、皆さん真剣に聞いてくださって嬉しかったです。

博物館が好き、という半ば趣味の延長で履修し始めた学芸員課程でしたが、展示の入れ替え作業や企画展の立案など、来館者側から見ることのできない裏側の仕事を中心に体験させていただいたことで、普段学芸員の方々がどういった仕事をしているのかを実務を通して知ることができてよかったと思っています。「私たちの目に見えないところで仕事をしている人がいる」ということを、社会人になる前に実習を通して実感することができたのも、人生において良い経験になったのではないかと思います。

また、これから何かしらの実習に参加する方・したいと思っている方にアドバイスしたいのは、「下調べは入念にしていくべき」ということです。私の場合は文学館での実習でしたが、前述したように、実習館で中心的に展示されている近代作家への知識が不足しており、少し大変な思いをしました。学芸員実習の場合は、少なくとも「何をメインに展示をしているのか」は下調べしていったほうがいいように感じました。実習館が近くにあるようなら、一度実際に足を運んでみるといいと思います。

以上が私の実習での体験と、実習で学んだことになります。緊急事態宣言最中での実習であったため、はじめは不安な気持ちのほうが大きかった実習でしたが、博物館の職員の方々や学芸員の方々、他の実習生の方々に支えていただいたことで無事終了することができました。拙い文章だったと思いますが、現在資格を取ろうか悩んでいる、これから実習が控えているけど不安…そんな方々に、私の経験が少しでも参考になったら幸いです。学部生の皆さまや、これから入学される受験生の皆さまの充実した学生生活を心より応援しております。



以上で4年生による学芸員実習の体験記はおしまいです。お忙しい中で、学生の実習にご協力くださいました、さいたま文学館に深謝申し上げます。

ちなみに、ご寄稿いただいた学生さんは、既に一般企業に内定を得ていますが、本文中の「目に見えないところで仕事をしている人がいる」ことへの実感は、書かれているとおりに非常に貴重な体験であったことと思います。ぜひこれからも学芸員課程で学んだことを活かして活躍してほしいと思いました。

日本文学科では今後も学部の在校生、卒業生の活躍をお伝えしたいと考えています。教員から声をかけることもありますが、執筆したい体験がある方は、ぜひ日本文学科の専任教員もしくは日本文学科事務室までお問合せください。

大正大学文学部 日本文学科
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