学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

日本文学科

【日本文学科・課外活動】博物館探訪第二弾を実施しました

大正大学日本文学科では、豊富な古典文学関連の所蔵資料を有する恵まれた環境の中で、在校生の皆さんが充実した古典の学習・研究ができるようになることを目指して、「古典へのいざない」プロジェクトを実施しています。

今回は学内の在校生向けとして、教員の付き添いのもとで古典関連の展示を実施している博物館への探訪の、今年度第二弾を1月24日(金)に実施しました。今回の行き先は以下の二箇所でした。

(1)太田記念美術館
 「江戸メシ」

(2)根津美術館
 「古筆切 分かち合う名筆の美」

ジャンルは異なりますが、浮世絵と古筆切の優れた資料をたくさん見ることのできる充実した一日となりました。以下、学生の体験記を一部要約していくつか紹介します。ぜひ、各自が体感したことに着目してください。なお、今回の展示はいずれも撮影ができませんので、外観を撮ったものを何点か掲載します。

【太田記念美術館入口】
 

(1)太田記念美術館に関する体験記

・料理や料理を楽しむ場所など多様なジャンルで浮世絵を楽しむことができました。浮世絵と一口に言ってもその絵柄は絵師によって様々で、私が特に気に入ったのは歌川広重と歌川国貞(三代豊国)のものです。歌川広重は他の浮世絵にはないコミカルな表情が特徴的で、人々の生き生きとした様子や写実的な風景が特徴的で、歌川国貞は人物の細かい描写と鮮やかな色遣い、小道具などの描き方に目を惹かれました。また、これらの作品を通して江戸時代から存在するグルメについて知ることもでき、現代と食文化がそれほど変わらないこともわかりました。特に花見の場面では、まさに花より団子という様子が描かれているものもあり、江戸時代の人々の生活に親近感が湧きました。(1年生)

・江戸の代表的な食べ物である寿司や天ぷら、蕎麦の他にもスイーツの浮世絵を見ることができてとても嬉しかった。特に、歌川国貞の『誂織当世島 金花糖』で初めて「金花糖」というお菓子の存在を知ったのだが、調べてみると現代でも作られていることがわかったのでぜひ実際に食してみたいと思った。また「極製御菓子」と書かれた菓子袋を見て、当時には現代のようなフィルムがないため紙の袋が用いられていたのだということを学ぶことができた。浮世絵を袋のパッケージのように用いるという発想がなかったためとても意外だったが、現代の縁日の綿あめの袋も子どもの興味を惹くために中身とは全く関係の無いキャラクター系のデザインがされているので、その感覚に近いのだろうか。他にも、現代で食されているような桜餅や白玉、飴を見ることもできて良かった。『志ん板猫のそばや』と『道外十二支 未』では、この時代には既に擬人化が好まれていたのだということが理解出来た。また、ヤギが蕎麦ではなく紙を食べているのが面白いと感じた。私が太田記念美術館の浮世絵の中で最も気に入ったのは歌川国次の『桜下遊宴図』である。男女の花見の様子が描かれている作品であったが、一目見た瞬間に色のつけ方がとても鮮やかで美しい絵だと思った。あの絵のためにもう一度太田記念美術館に行きたいと思えるほど深く印象に残った。全体的な傾向として、酒の絵が多いように感じた。また、剣菱や豊島屋本店のように現代でも営業し続けている店があることに対して感動した。機会があれば店に行ってみたいと思った。(2年生)

・太田記念美術館では、多くの方が訪れており、「江戸メシ」という展示やタイトルに目を惹かれるものがあるのではないかなと感じました。実際に私も江戸時代どのようなものが食べられていたのか気になっていたため、浮世絵で江戸時代の食べ物や当時の人が食べている様子を確認し、食文化が盛んであったこと、活気にあふれていた様子であったことが伺えました。文字だけでは想像しづらいことも、絵とキャプションを同時に見ることで、楽しみながら学べている感覚になりました。和菓子やお魚、お酒を飲む様子、休憩している様子、お相撲さんが皆で囲って大皿を食べている様子など様々な浮世絵の展示物がありましたが、全体的にお酒が描かれている浮世絵が多いと感じました。男性が蕎麦を食べている浮世絵では、立ちなが蕎麦を食べていて、当時も立ち食い蕎麦があったということを知りました。また、当時は枝豆を枝のまま食べていて今でいうスナックのようなものだったことも学び、今も昔も手軽に食べられるものであると気付きました。印象に残っていた浮世絵を踏まえると、当時の人は休憩中でもすぐ動けるように、蕎麦や和菓子など早く食べられるものを好んでいたのではないかと考えました。(4年生)

・料亭や屋台などの食事の風景を描いた浮世絵を鑑賞しました。現代でもお馴染みの天ぷらや西瓜などを景色と共に楽しむ人々の様子から、食のルーツや当時の流行文化を汲み取ることができましたが、その他にも、登場人物全てが猫で描かれる『志ん板猫のそばや』(作・四代歌川国政)など作者のユーモアな一面を感じ取れる作品も多々あり、浮世絵の表現の幅を学びました。また、食の種類ごとに作品を並べる展示の仕方や、浮世絵の作り方を載せたパネルの展示など、展示方法にこだわっている点も印象深かったです。(修士2年)

(2)根津美術館に関する体験記

【入口にいたる通路の様子】学生による撮影

・根津美術館では、入口の『如来坐像頭部 天龍山石窟第16窟(石造、中国・北斉時代、6世紀)』がとても気に入った。私は像に対する造詣が深くないのでなぜこの作品に惹かれるのかを考えたところ、他の像は正面を向いているのに対してこの像は下を向いているので高さの都合上表情が見やすく、親しみやすいからだということに気がついた。古筆切の展示では「料紙」という単語を学んだ。個人的には大きな金箔の入った砂子の料紙と破継が綺麗だと感じた。手鑑は紙が色紙のように厚く丈夫そうだと思った。また、古筆見という鑑定家がいることを初めて学んだ。今回の展示の中では『上東門院彰子菊合残巻(十巻本歌合)』、清巌宗渭、狩野探幽の字が読みやすいと感じた。古筆切の展示の中には、和古書の整理の際に頻出した西行や古典文学の中に登場した藤原公任、紀貫之等の有名な人物の名前がよく出てきたので、飽きることなく見学することができて楽しかった。(2年生)

・根津美術館では古筆切の固有名称の由来やその作品の解説があり、大変勉強になりました。『古今集』『伊勢集』『斎宮女御集』など大学で学んだ作品やゼミの人が卒論で扱った作品がありました。今では詞書は和歌に対して二字下げというルールがありますが、古筆切の展示を確認すると、今とは違った字下げが見られ、徐々に書き方の決まりのようなものができていったのではないかと思いました。また、個人的に一行書の展示が印象に残っています。書道を習っているので、どのような筆の繋がりがあるのか、バランスや筆の動きなど書き方に惹かれるものがありました。実際に展示を見ながら、遠くから指でなぞるようにして文字の繋がりを考えたり、文字のバランスの芸術性を感じたりと、楽しみながら見ることができました。一行書は迫力のあるもの、古筆切は書いた人によって文字の太さや書き方は異なりますが、文字の繊細さや一行書とは違った芸術性を感じ、双方の展示の良さと違いに気付くことができました。(4年生)

・古筆切の展示でしたが、所々にコラムとして用語の解説があり、勉強になりました。古筆家の歴代の極札が展示されていましたが、何代も同じ極が行われていて、さらにその極札が大切に残されているのは興味深く感じました。また、定家筆の『奥入』も展示されていて、キャプションを見ると、作品名やどの巻の切なのか判明したのが最近と書いてあり、驚きました。物語を研究している側からすると切られてしまうのはもったいないとも思いますが、古筆切にしかない作品があることを考えると夢があって面白いと思いました。(修士2年)


【庭園の様子】学生による撮影

 (3)総合的な体験記

・今回の見学は全体的にはバラエティに富んだ展示を見ることができて、とても満足の行くものでした。渋谷区や港区といった都心にこれほど大きな美術館があるとは思っていなかったため、そのギャップにも感動しました。(1年生)

・今回太田記念美術館、根津美術館を見学して、中には読めない単語も多く出てきたが初めて知る単語や物も多く、様々なことを学ぶことができたので良かった。今後、個人でも積極的に美術館や博物館の見学に行き知見を得たいと思った。(2年生)

・博物館・美術館ごとの展示方法や企画内容の違いを比較することもでき、学芸員を目指す学生や歴史文化が好きな学生にとって学びの多い貴重な体験になったと思います。(修士2年)


以上、学生の皆さんの体験記でした。様々な発見や学習があったようでよかったと思います。在校生の皆さんには引き続き同様の見学の機会を設けていきたいと思います。受験生の皆さんには来年以降になりますが、どうぞお楽しみに!

なお、日本文学科の「古典へのいざない」プロジェクトは2024年度大正大学学長裁量経費の補助を受けて実施しています。

大正大学文学部日本文学科では、これからも様々なイベントや取り組みを行っていく予定です。日本文学科公式SNSアカウントにおいて、情報発信をしていますので、良かったらフォローや拡散のほど、よろしくお願いします。
 
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