学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

公共政策学科

測るということ、推定するということ(高原先生より)

 測るというのはなかなか難しい。子供のころは、学校で年に1回身長や体重を測っていた。台風などが来ると、気圧や雨量などが測られる。水害の恐れが高まると測られた河川の水位が報道される。山の高さも測れる。高い山の高さを測るのは、昔は大変だったが、今ではずいぶん簡単になった。これらは、比較的素直なもので、人手と費用と時間を掛ければ測るのはそう難しくはない。

 受験前には、模擬試験を受けて、学力を測っていた。これは結構測るのが難しい。学力とは何だろうか。学力に物理的な長さや重さがあるわけではない。だからといって学力というのは観念があるだけで、実態はないとも言えない。何とか学力を測ろうとして、テストを工夫することになる。しかし、これのテストを使えば、学力が完璧に測れ、それを数字で表せる、そういうテストは存在しない。

 日々の新型コロナ新規感染者数は学力とは違って本来数字なのだが、これは別の意味で測りにくい。毎日、新規コロナ感染者数というものがマスコミで報道されてはいる。しかし、これは感染者数ではない。新型コロナウィルスに感染した人を、直ちに把握することはできない。感染したらその日のうちに高熱が出る訳ではない。本人も気が付かないことが多いだろう。発熱などの症状が出たり感染者と接触したりして感染した疑いがある人を検査して、陽性になった人の数が分かるだけだ。厳密にいえば、検査で陽性になった人が必ず感染しているとも言えない。検査結果が出た日付は感染した日付とは一致しない。感染の疑いのある人をすべて把握して検査できるわけでもない。感染の恐れのある人の把握も、その人たちに検査を受けてもらうのも容易なことではない。日々の新規感染者数を直接測るというのは、現実には不可能なのだ。そこで、関係者は、理論的なモデルを利用し、入手可能なデータから、何とか新規感染者数を推定しようと努力している。これが実態だろう。

 社会に大きな問題、深刻な問題が起こっているとき、その実態を簡単に測れることは少ないように思える。測ることから、不確実ではあっても推定することへ足を踏み出していかなければならない。大学での学びは、その第一歩になりえる。若い人たちが第一歩を踏み出してくれることを願っている。


天山山脈、最高峰はポベーダ山 (7,439 m)

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