学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

公共政策学科

地域実習は真に実践的な学びなのか?(京都市での地域実習を終えて・村橋先生より)

 「とてもよく分析されており,発表いただいた方向性などはまさに,我々が取り組んでいる具体策と合致しており,あらためて,学生さんのレベルの高さを感じました。是非,引き続き,連携させていただければと思います。本年の取組をベースにさらに一歩踏み込んで検証などをしていただける学生さんがいらっしゃれば,喜んで御協力をさせていただきます(本文ママ、一部抜粋)」

 地域実習の成果発表会を傍聴下さった京都市のご担当者様からいただいたメールの文面だ。学生たちの頑張りがこのように評価され、非常にうれしく思う。あらためてその活動を振り返る。

 今年度、私が担当した京都チームは2つのテーマ(問い)を掲げて活動した。1つは「有名観光スポットに集中している観光客をいかにして周辺(穴場)に分散させるか」。もう1つは「京都市へのふるさと納税寄付額をいかにして増やすか」である。どちらも京都市が直面している喫緊の課題であり、学生にとって難易度は高いが、非常にやりがいのあるテーマをいただいた。まさに生きた教材を使った実践的な学びの機会となったと言えるだろう。

 現地に入る前の準備学習では、文献レビューや有識者からの聞き取り、アンケート調査などを行い、課題解決策の仮説を立てることに注力した。行きつ戻りつを繰り返し、徐々に仮説の精度が上がっていくことで、学生たちは自信を深めていったようだ。現地での実地調査はもちろん大切だが、事前の情報収集から情報編集、仮説設定において、自分の頭で徹底的に考え抜くということがいかに大事で、いかに人を成長させるかということをあらためて認識させられた。

 10月中旬、いよいよ京都市に入り、2チームに分かれ、現地でのリサーチを開始した。事前学習で立てた仮説を検証するプロセスだ。学生たちは若者らしい機動力で、予定していた調査を進めていった。短い期間ではあったが、様々な場所を訪れ、五感をフルに活用して京都のまちを調べ尽くした。多くの人に会い、話を聞いて回る刺激的な6日間だった。加えて、彼らが単に決められた予定をこなすだけでなく、日々の調査活動における気付きを踏まえ、臨機応変に計画を書き換え、調査の充実を図っていたことを記しておきたい。これこそが実践力・応用力であり、社会で生き抜くために必要な力だ。機会を存分に活かし、成長する姿に頼もしさを感じたものである。

 帰京後、調査結果をまとめ、考察を加え、政策提案をするという作業に取りかかった彼らはとても苦労しているように見えた。事前に立てた仮説と現地での調査結果が必ずしも合致していなかったり、情報が多すぎて消化しきれなくなっていたのだ。各チーム10名ずつ、意識も知識も異なるメンバーの意見を1つに集約していくというのが最大の難問だ。それでもリーダーを中心に議論を重ね、なんとか良い提案に仕上げてくれた。その成果が発表会での京都市様からの高いご評価である。

 地域実習は、あくまでも大学の授業科目であり、模擬実験でしかない。学生の活動が社会や地域の問題解決に直結することは少ないだろう(うまくすれば自治体に採用されることもある)。しかし、京都市にこれまで特段のご縁があった訳でもない20名の学生たちが本気で自分事として取り組み、難しい課題に何とか応えようと奮闘したことは無駄では無い。彼らもきっと自身をつけたことだろう。実社会での活躍が今から楽しみだ。

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