学部・大学院FACULTY TAISHO
社会福祉学科
第38回大正大学社会福祉学会が開催されました
社会福祉学科では、7月20日に、第38回大正大学社会福祉学会(大会テーマ「地域における生活支援のあり方を考える」)を開催しました。当日は、学部卒業生・大学院修了生22名、3・4年生143名、大学院生6名、旧教員や現教員11名(のべ182名)の参加がありました。
まず、学会の総会があり、学会事務局より、2013年度決算案、2014年度予算案等の議案が提案され、承認されました。
その後、私から、「社会保障制度改革の動向」と題して、人口減少の将来予測、社会保障財政の現状を述べた上で、小泉政権から安倍政権までの改革の内容について、審議会報告書等をもとに基調講演をいたしました。改革にあたっては、経済成長論や財政論の見地ばかりではなく、ナショナルミニマムなど、生活をトータルに捉えられる概念や理念の必要性に言及しました。
続けて、シンポジウムに移り、金子賢太郎氏(台東区福祉事務所、本学大学院修士課程2013年度修了)より、多くの資料をもとに、昨年12月6日に成立した改正生活保護法の動向を中心とした報告がありました。改正生活保護法は、本年1月1日および7月1日に施行されましたが、現時点で、「福祉事務所で大きな混乱はないということ、ただ来年度の生活困窮者自立支援法施行に伴い、今後は各福祉事務所で混乱があるかもしれない」とのことでした。また、生活困窮の内容が複雑化・多様化する中でケースワーカーの担当数も増えているが、業務のマニュアル化が進む傾向もあり、福祉事務所ケースワーカーの専門性(あるいは非専門性)について問われているという趣旨の問題提起がありました。
続いて、田中美喜子氏(長崎純心大学、本学学部1996年度卒業)より、2011年以降の介護保険制度の改正にともなう地域包括支援センターの実際の報告、本年2月に実施された全国調査「地域包括支援センターにおける業務実態に関する調査」の紹介がありました。近年国が進める「地域包括ケアシステム」展開の拠点としての地域包括支援センターは、今後ますます地域における相談援助機関として重要な役割を担っていくと予想されますが、諸課題へのセンターの対応力やソーシャルワーカーの職域の行方を冷静に見つめる必要性を感じました。
最後に、岩上洋一氏(特定非営利活動法人じりつ、本学大学院修士課程2001年度修了)より、近年の国の障害福祉政策の概要、埼玉県埼葛北地区における精神障がい者の地域生活支援の取り組みについての報告がありました。「障がい者がコミュニティを作る」「障がい者支援がコミュニティ再生につながる」ことの数々の実践は私も大きな刺激を受けました。また、相談支援体制の構築にあたってはソーシャルワーカーが力をつけていくための人材育成事業が重要であって、新任職員研修やフォローアップをどこが担うかが課題になっているとの指摘がありました。
現在、退院促進などを背景とする、「地域生活支援」「地域包括ケア」などが社会福祉の大きな潮流となろうとしています。岩上氏の問題提起にあった通り、その中核を担う、「福祉事務所」「生活困窮者支援事業」「地域包括支援センター」「基幹相談支援センター」を始めとする相談援助機関は、どのように「縦割り」にならずに相談に応じていけるのでしょうか。大会当日は時間の関係もあり議論が深まりませんでしたが、これは社会福祉関係者全体に投げかけられた「問い」であり、引き続き学会としても取り組むべきテーマだと思われます。
シンポジウムの後、会場を移して開かれたティパーティでは、卒業生、大学院修了生を中心に近況報告をして旧交を温め、和やかな懇親会となりました。
(文責:松本一郎)