学部・大学院FACULTY TAISHO
社会福祉学科
100年福祉-47 卒業生シリーズ⑪
卒業生を紹介するシリーズの11回目は、卒業生が多数在籍し、実習生も毎年お世話になっている、八王子平和の家の冨松奈央さんです。
①卒業年次、取得資格取得資格
卒業年次 2004年(平成16年)
資格取得 社会福祉士 公民科・福祉科教員免許(高等科)
②卒業後の略歴
2004年(平成16年) 社会福祉法人九十九会つくも幼児教室 指導員
2006年(平成18年) 社会福祉法人みずき福祉会八王子平和の家 支援主任
③大正大学社会福祉学科での思い出、選んでよかったところ
社会福祉を学ぶといっても、その分野は多岐にわたります。入学したての頃の私は、漠然とソーシャルワーカーになりたいと思っていました。大正大学で学ぶうちに、福祉には様々な分野とのつながりがあることを知り、その中の一つである福祉科教員の教育課程取得が大学生活での目標の一つとなりました。福祉学科と並行しての教育課程の学びは大変なことも多かったですが、教育実習をはじめその時でしかできない経験ができ、その経験を通して福祉の学びについてもっと実践を積みたい、という思いが芽生えたことが、卒業後の進路に大きく影響しています。大正大学では、社会福祉を様々な角度、アプローチで学ぶことができると思います。私の大学生活はまさに、それを凝縮した充実したものだったなと感じています。
また、大学生活とその後の進路にも大きく影響したもう一つの思い出は、恩師との出会いとゼミでの卒業研究の作成でした。卒業研究の作成過程で、先生は丁寧に、また時に厳しく愛情たっぷりに指導してくださいました。その時のやりとりの中で今後どのようにして福祉に携わっていきたいのか、自分の思いに気づくことができ、現在に至ります。「当事者の立場で、その人の目線で」と言葉にするのは簡単ですが、実際にその人が感じていること、発信したい想いに気づき、支えていくことは容易なことではありません。けれども、そのことこそが福祉に携わる人の役割でやりがいであることも恩師から学んだことです。先生に胸を張って「頑張っています!」と言えるような支援をしていたいと、卒業して10年以上経ちましたが今でも思っており、そんな恩師がいることを幸せに思っています。
④社会福祉を学ぶことや社会福祉の仕事の魅力について
現在は、知的障がい者支援施設八王子平和の家の施設入所支援の支援スタッフとして働いていますが、ここでは、支援を通して、利用者の皆さんの人生に寄り添うことへの覚悟が必要であること、良いも悪いも全てのことを、利用者の皆さんと共有し乗り越えることで築かれる関係性の大切さを学びました。色々なこと乗り越えていく過程で、支援者としても成長でき、支援していているつもりでも支えられていることに気づいたり、自分と向き合うきっかけになったりすることも多く、人間としても成長できるように感じています。
人を支援するということは簡単なことではありませんが、その人を支えるうえで大事なことは、利用者の皆さんから学ぶことが多いと思います。言動だけでなく、表情や体の状況(力が入っているなど)発せられるいくつものサインを感じ取り、スタッフは必要な支援を利用者の方と相談したり、考えたりして支援していきます。そのサインに気づけるよう、アンテナを張りますが、アンテナの感度を上げるためには、利用者の方との信頼関係を作ることは言うまでもありません。上手くいかないこともあるけれど、試行錯誤して積み重ねた中で、利用者の皆さんとつながった!と思える瞬間がありそれは何にも代えがたい喜びでもあります。
支えあうのはスタッフ間でも同じです。社会福祉の仕事は一人ではできないことの方が多く、チームなどの連携によって様々な視点で支援していくことが求められるからです。私は、お手本にしたいスタッフが前職にも今の職場にも多くいます。お手本にしたいスタッフからは、利用者の方とかかわる上でのヒントや、支援の引き出しの増やし方を学びました。後輩と呼べるスタッフが増え、主任という立場に立つ今は、チームで支援することの重要性をとても感じていますし、後輩のスタッフみんなの利用者の方と向き合う姿勢から学ぶことも多いです。お互いが切磋琢磨しながら、時にはフォローもして、チームとしても、個人としても成長できるのも福祉の仕事の魅力だと思います。
現在、八王子平和の家には、恩師とのつながりで大正大学の卒業生6名がスタッフとして働いています。気づけば後輩が増えていき、他のスタッフからは「大正派閥だね」なんて言われますが、自分たちでは「T大の会」と称して、恩師も交えて時々、近況報告会を行っており、楽しい時間となっています。みんな個性豊かでそれぞれの色がありながらも、平和の家の良さを引継いでいるなと感じています。今後も、「T大の会」のメンバーが増えていくのかは分かりませんが、同じ学びを経ているスタッフが増えていくことも、私を含め今のメンバーが日々成長していくのも楽しみだなと感じています。
社会福祉の仕事は毎日が同じということがありません。日々違うことに出くわすことも多く臨機応変力も試されますが、だからこそ1日その時を大切にしたいと思えるのだと思います。人を支える、支援をしていくということには、計算を解くような正解も、これをやったら完了というような終わりもありません。だからこそ、向き合い方によっては日々学び、成長をすることが出来るのだと思います。利用者の皆さんとの日々の積み重ねによって信頼関係が得られ、信頼関係による安心を土台に新たなチャレンジに繋がります。それが生活の幅の広がりや経験の引き出しを増やすことになり、そこで得られる楽しみ、やりがいが利用者の皆さんの自信に繋がります。そこに携われるということも社会福祉の魅力ではないでしょうか。卒業してから色々な経験を重ねた今は、利用者の皆さんや、スタッフの新しいことへの一歩を応援できるスタッフでありたいと思っています。
八王子平和の家におけるT大の会も、随分と大所帯となり、一大勢力となっていますね。安心して実習生や後輩を送ることができるのも、皆さんがいてくれるおかげです。冨松さんをはじめとした職員集団が、現状に甘んじることなく、利用者の思いに対する飽くなき探究心を持ち続けることを諦めない雰囲気が、いつもそこにあります。今後もよい実践を積み重ねていってください。
(文責;沖倉智美)