学部・大学院FACULTY TAISHO
社会福祉学科
ゼミナール2019~沖倉ゼミの1年を振り返って~
社会福祉学科では、ゼミナール(以下、ゼミ)という単位で、各学年に高校でいうところのクラスが設けられています。そして各教員が担任としてゼミ生の学修支援を担当します。今回は、その1つである沖倉が担当する1・3・4年次ゼミを紹介します。
(1)基礎ゼミナールⅠ・Ⅱ(1年次)
これまでもこのブログでご紹介してきた通り、1年生の基礎ゼミナールは4クラス開講し、各区民ひろばでCSWや職員の支援を受けながら、コミュニティソーシャルワークを体験的に学ぶ「サービスラーニング」を行っています。
区民ひろば千早担当の沖倉クラスでは、ゼミ生21名が3グループにわかれて、各グループから4プログラムの企画に携わるリーダーを選出し、全員がそのいずれか1つにリーダーとして関わるプロジェクトを2018年度からスタートさせています。今年度初めて、障害のある人たちとの協働が生まれましたので、その活動をご紹介します。
就労継続支援B型Base Camp(以下、ベース)は、2018年に区民ひろば千早最寄りの豊島区要町にある統合失調症などを抱えながら地域で暮らす障害当事者の団体です。今回はこの団体の設立1周年記念イベントに参画させていただきました。ゼミ生は、ベースの皆さんに教えていただいて、学生自身の「自己病名」を発表しました(当事者研究や自己病名の詳しい内容は、ベースHP https://base.or.jp/ にアクセスしてみてください)。
ベースの当事者研究に取り組んだ2名の声を聞いてみましょう。
吉田泰自さん「ベ―スの仕事場に赴き、当事者研究や自己病名について学びました。自分の抱えている問題などをゼミ生で議論し、その問題を解決する糸口を探しました。一人ではなく全員で考えるからこそ、自分では考えつかない解決策が見えてくるのではないかと考えました。一人で抱え込まず、人に話すことによって心に余裕が生まれるのではないかとも思いました。同じ境遇に人が話すことで、本当に心を許しあえる仲間になるのではないかとも考えました。」
牛島百香さん「ベース1周年イベントに来ていた方々は、地域の人は少ないように感じ、関係機関やもともとベースに関わりのある方が多いように感じました。イベント自体はとても温かで、見に来ているお客さんも一緒に参加し、全員が主役であるような包み込む雰囲気でした。もっと定期的に区民ひろばを使って、当事者研究を取り入れることができれば、地域ともより強いつながりを作ることができるのではないかと考えました。区民ひろばは男性利用者が少ないとのことでしたが、ベースの活動は性別や年齢もさまざまで一緒に活動していることから、世代間交流にもなるのではないかと思いました。」
区民ひろば千早のメインイベントの1つである「収穫祭」や、先日区民ひろばで行った「サービスラーニング報告会」にも、ベースの皆さんが多数参加してくださり、担当した学生と再会を喜び合っていました。次年度以降にも期待が高まります。
なお、2018年度にサービスラーニングを終えた2年生は、後輩1年生の活動がスムースに展開できるよう、事前学習の地域探索や企画プロジェクトにアドバイザーとして参加してくれていて、学年を越えた協働学修が行われています。
(2)プロジェクト研究Ⅰ・Ⅱ(3年次)
2年次までのゼミは、教育効果を勘案して学科で配属を決めていますが、3年次から2年間のプロジェクト研究Ⅰ~Ⅳについては、2年次が終了する時点で、8名の教員が開示した研究や実践に関するテーマと照らし合わせて、学生自身が興味関心を踏まえて、所属ゼミの希望をエントリーする方法を採っています。
今年度の沖倉ゼミは「障害者と家族」と「個別支援計画」の2つのテーマを掲げ、10名のゼミ生が集まりました。春と秋に各々のテーマで1冊の本を分担して読み、ディスカッションをする基本文献の購読を行いましたが、課外授業として、7月25日(木)に参議院議員会館で行われた、JD(日本障害者協議会)主催のサマーセミナー「価値なき者の抹殺 優生思想 –私たちはどう立ち向かうか‐」に参加してきました。
このセミナーは、皆さんもご存知だと思いますが、2016年7月相模原の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた障害者殺傷事件や、「旧優生保護法」のもと多くの障害のある人たちに強制不妊手術が行われていた事実を背景に、障害者団体が開催した講演とマスコミ討論会です。(前者に関する裁判員裁判は1月8日に始まり、3月には結審する予定です。皆さんも判決の行方を注視してください)。
セミナーに参加した3名の声を聞いてみましょう。
大谷風歌さん「基調講演で一番感じたことは、障害があることは決して特別なことではないということです。JD代表の藤井克徳さんの話の中でも『障害者は特別な人ではなく、特別なニーズをもつ普通の市民である』とありました。藤井さんには視覚障害があり、文字やスクリーンが見えない中、普通の人と変わりなく講演を行い、スライドの内容を把握し、スライドを変える時には指示を出していました。目が見えない=何もできないではなく、目が見えないぶん他で補い、難しいことは他の人の手を借りるただそれだけのことであることを、藤井さんの講演を通して強く感じました。」
開田美穂さん「基調講演のポイントに挙げられた『優生思想』『無抵抗者』『不可逆的』は、特別報告にて、優生手術被害者である北三郎さんや仙台の原告第一号のお義姉様である佐藤路子さんのお話で痛感しました。『法の壁は厚く、性と生殖は当然のことであるのにそれを奪ったのは優生保護法』、『人生の楽園はなかった』、『生身の身体にメスを入れられ、手術の傷は今も残る』といった言葉の一つひとつが魂の叫びであり、このような過ちを斡旋する法律が二度と生まれないように学んでいくことが大切であると感じました。」
沖野初美さん「私たちにできることは、今回のようなセミナーや講演などに集まり、歴史や当事者のニーズに関心を持ち、さまざまな人とつながり、つながった先で実践することが求められています。紹介のあった美空ひばりさんの『一本の鉛筆』の歌詞にあったように、‘一枚のザラ紙が あれば、私は子供が 欲しいと書く’と思っていることを言葉で表すことが難しい、また当たり前のことが許されない人に対してできることは何なのか、差別がなくなるよう、常に多様性という言葉を意識して、多くのことを学んでいきたいと思いました。
(3)プロジェクト研究Ⅲ・Ⅳ(4年次)
11名の4年生は、3年次の終了時点で決めたプロジェクトによる、卒業研究の作成に取り組みました。今年度は、①「自閉症者のおやじの会活動への参加に基づいて考えるセルフヘルプグループの役割」、②「就労支援B型事業所におけるボランティア活動から考える個別支援計画作成」、③「生活介護事業所におけるボランティア活動とスーパービジョンから考える支援のあり方」の3プロジェクトが展開されました。沖倉ゼミの研究の特徴は、長期間にわたるフィールドワークに基づくインタビュー調査にあります。今年度も紆余曲折ありながら、皆で協力して3作品が仕上がりました。
卒業研究の口頭試問が終わり、今年度も12月第3木曜のゼミの時間に「クリスマス会」を開催しました。4年生が3年生を招待し、ゲームをしたりケーキを食べたりする中で、卒業研究の取り組み方や、沖倉の「トリセツ(取扱い説明書)」が引き継がれたりもするようですが、一番の盛り上がりは、「プレゼント交換」です。各自が用意した1000円(+税)のプレゼントにナンバリングをし、順に好きな番号を選び、受け取ったプレゼントを皆の前でオープンし、プレゼントを用意した人が選んだ理由を説明する、結構楽しい時間です。
主催側の4年生と招待を受けた3年生の声を聞いてみましょう。
近藤孝洋さん「今回の交流会は、これから卒業研究が本格的に始まる3年生への激励と、沖倉先生へ感謝の思いを伝えるため企画しました。私は、人の前に立って企画し、進行係をすることが今回初めてでした。入念に準備をしましたが、皆がどんな反応をするのか、楽しめなかったらどうしようと不安に思うこともありましたが、当日は私の考えたレクのお題を和気藹々と考えている姿を見て、進行係を申し出て良かったとその時感じました。最後に、お忙しい中写真撮影をしてくださった赤坂さん。交流会を盛り上げてくれた4年生、3年生。優しく見守りつつ、楽しまれていた沖倉先生に感謝を申し上げます。ありがとうございました。」
渡辺達也さん「みんな最初は緊張していましたが、4年生が企画してくれたゲームやプレゼント交換でとても盛り上がり楽しい思い出となりました。楽しい時間を私たちに企画していただき、4年生のみなさん本当にありがとうございました。来年度からはいよいよ卒業に向けて、大きな壁がいくつもありますが、3年生沖倉ゼミ一同で乗り越えて頑張っていきたいと思います。」
クリスマス会を終えた今、4年生は社会福祉士の国家試験受験勉強の追い込みをする人、就職内定のために最後のひと頑張りをする人など、卒業に向けて各々学生生活の総仕上げの真っ最中です。3年生は卒業研究のグループ決めや3月のゼミ合宿の準備に取り掛かっています。
(文責;沖倉智美)