学部・大学院FACULTY TAISHO
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哲学・宗教文化コース
ドーハで見たイスラム社会(3)
再度、ドーハの話です。
「無宗教」とは名乗りづらい?
出張の目的は「宗教間対話会議」という国際会議に出席することでした。
宗教対立を防ぐために、世界から集まった様々な宗教の人たちが、直接対面して話し合い、相互理解を深めるための会議です。
参加登録用紙に「宗教」を尋ねる欄がありました。
私は、日本国内で信仰する宗教を尋ねられたら、「無宗教です」と答えるのがふつうです。
しかし、その用紙に「無宗教」と書くことは躊躇しました。
結局、仏教系大学からの参加だからという意味で、「仏教」と書きました。
信仰の強い人たちは、無宗教の人を警戒することがあるからです。
神を否定していると受け取るからです。
もちろん、宗教者でないのなら、そもそも宗教間対話の会議に参加する必要はないとも見えるかもしれませんね。
大会には、私のように無宗教であるにもかかわらず、研究目的で参加している人たちもいたのですが、
だんだんそれに宗教者の人たちも気づいたようで、
だんだんそれに宗教者の人たちも気づいたようで、
「次回からは宗教者だけの会議にしませんか」
という提案も出ました。
宗教と宗教の違い以上に、宗教と無宗教の違いが大きい!と思った人たちがいたのです。
宗教と宗教の違い以上に、宗教と無宗教の違いが大きい!と思った人たちがいたのです。
イスラム教徒とユダヤ教徒の仲
会議で印象深かったのは、
日本にいますと、2001年の同時多発テロ事件以降の国際対立は、「イスラム対アメリカ」、
言い換えれば「イスラム対キリスト教」の対立に見えやすいと思いますが、
言い換えれば「イスラム対キリスト教」の対立に見えやすいと思いますが、
この会議で感じたのは、イスラム教徒とユダヤ教徒の間の深い溝でした。
「仲良くしよう」という会議のはずなのに、イスラム教徒の発表者が、ユダヤ教徒が傷つくようなことを平然と言ってしまうのです。
「もともとユダヤ人(イスラエルの民)はパレスチナに住んでいなかった、というのは今や歴史学・考古学上の事実です」
とか。
イスラム社会の「反ユダヤ」意識は、食事の席でも感じました。
朝食はホテルのビュッフェだったのですが、
パンの種類1つとっても国際色豊かで、
中東のピタパンもあれば、
何種類も揃っていました。
おまけに、「Japanese rice」と「miso soup」までありました。
炊飯器とお鍋のままどーんと置かれ、「お好みでワカメを」とありました。
それなのに、欧米でも日本でもポピュラーなパンである、ベーグルがなかったのです。
ベーグルの定番の付け合わせ、スモークサーモンとチーズは置いてあるのです。
(スモークサーモンをはさんだベーグル from wikimedia commons)
それなのに、ベーグルはないとは。
これは、ベーグルがユダヤ的だからでしょうか。
ベーグルは東欧に移住したユダヤ人たちが作ったパンといわれています。
会議でのイスラム教徒の様子を見ていると、これはどうも、ホテルは意識的にユダヤ人のパンを排除しているんじゃないかと思えてなりませんでした。
それは、現代のイスラエル-パレスチナ問題が、イスラム教徒にとってはいかに深刻なものか、許しがたいものかということでもあるのです。
しかし日本のポップ・カルチャーは
しかしそれは、イスラムの人たちが異文化に不寛容だということではないようです。
現地の日本大使、門司健次郎氏に伺ったのですが、
日本のポップ・カルチャーを紹介するというイベントを行ったところ、会場は満杯になり、
スクリーンにアニメ「ONE PIECE」を映しだしたら、
となりの部屋から「キャー!」という歓声が聞こえてきたそうです。
(女性の参加者は全員、別の部屋で、イベントの様子を中継・モニターで観ていたのです)
黒いイスラム服の女性たちも、日本のアニメをよく知っているということですよね。
続いて、ジャニーズが映ったときも
「キャー!」
という黄色い歓声が。
えーっ、アラブ圏では「男っぽい大人の男」がモテるのかと思っていたのですが。
中性的な日本のアイドルがそんなに人気だなんて。
しかも紹介される以前に、すでにみんな知っているところがすごい!
ひるがえってみれば、日本の私たち、中東のアイドル俳優や歌手を1人でも知っているでしょうか?
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