学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

哲学・宗教文化コース

先生、質問です(2)

コースの教員陣に対する、1年生からの質問の続きです。
 
質問
どうやったらそんなに博学になれるんですか? やっぱりひたすら研究ですか?
 
私(教務主任)も、学生の時に、「先生はすごい!」驚嘆したことを思い出しました。
昔の学者が書いた本の出版年が、ズラズラとソラで出てくるのです。
なぜ語呂合わせもせずに、年号を大量に覚えられるのだろうと驚きました。
コースの先生方はいかがですか?
 
春本先生の回答:
一つの事を続けて20 年、30 年としていれば、自然に博学になってしまうものです。
10 年ではまだまだ遥かに浅いと思います。
20年、30年でもまだまだなのだとは思いますが、とにかく、一つの事をひたすら続けて行く、それしか無いと思います。
一朝一夕は有り得ません。
 
星野先生の回答:
自分がそれほど博学であるかどうかは定かではありません。
しかし講義に際しては、プリント作りや講義の語りのためにかなり準備するのは確かです。
 
司馬先生の回答:
僕は博学ではありません。
研究というより、アップアップしながらの授業準備を止むを得ず重ねているだけです。
最近は「ド忘れ」も激しくなりました。
 
謙虚な先生方ですが、大学の先生も、地道に努力を重ねているという点は共通しているようです。
私(教務主任)はどうかといえば、もし質問者が、授業の感想として、
「なぜそんなに色々知っているのか」という意味で「博学」という言葉を使ったのでしたら、
それは学生のみなさんのおかげも大いにあります。
春本先生のご回答にあるように、大学の教員はそれぞれ自分の「専門」を持っています。
1つのことを深く研究してきたということです。
でも、授業では、自分の関心事にみなさんをひきこむだけでなく、
みなさんが興味を持っていることを私も調べ、それを哲学や宗教文化に結びつけるようにしています。
そうすると授業の内容が自然と広がっていくのです


 
質問
先生たちは哲学してますか?
 
これは鋭い質問ですね。
過去の哲学者の思想について知っているだけでなく、自ら「哲学する」ことなくては、
哲学者とはいえない――その通りです。
 
司馬先生の回答:
例えば、ある曲を聞いていて「なぜ今、こういう曲が出てきたんだろう」と思う事があります。
こんな疑問も哲学に通じるとしたら、しょっちゅう哲学しています。
もう一つ、
60歳近くなると、お浄土が近づいてきます。
この世に生まれたことにはどんな意味があったのかという疑問が、時折頭をかすめます。
 
司馬先生、今日はいつにもまして謙虚なご発言が続いていますが、
「疑問をもつこと(反省的思考)」と「生と死を見つめること」は
「哲学すること」のまさに両輪なのです。
 
春本先生:
日々毎日、哲学しています。
如何に生きたらいいのか、日々反省をしながら前進するようにしています。
哲学・宗教は人の生き方と関係をしています。
時事刻々、如何に生きたらいのかを自問自答して自らの生きる方向性を考えています。
『論語』里仁篇に「朝に道を聞けば、夕に死すとも可なり。」とあります。
聖人君子の孔子のようにそこまでは行かなくとも、そんな方向性の気持ちで生きております。
 
春本先生は「人生を見つめること」にウエイトですね。
 
私(教務主任)は、どちらかというと「世界に疑問をもつこと」の方。
テレビも「哲学する」きっかけになります。
先週放映された、TBS「飛び出せ!科学くん」の国立科学博物館「秘蔵お宝公開」シーン、
なかでも、珍しい動物のはく製についつい見入ってしまいました。
最初は素朴に「あのヒグマ、でかい!」的反応をしていたのですが、
気になりだしたのは、はく製はいつどこで作られるようになったのか、
そこに宗教文化はからんでいたのかということ。
さっそく調べてみました。
はく製の作成は、宗教上はキリスト教思想に関係づけることができ、
盛んになったのは
19世紀、帝国主義時代(ヴィクトリア朝)のイギリスだということがわかってきました。

当時、イギリスで有名だったはく製師に、ウォルター・ポターという人がいます。
彼は動物のはく製を作るだけでなく、動物に人間のかっこうをさせ、「うさぎの学校」などの見世物を次々と作りました。
そう、同じころ、ピーターラビットの絵本シリーズが刊行されますが(作者の姓が同じポターなのは偶然)、あの世界を、はく製で、3次元で作ったという感じの作品です。
一見とてもかわいいのですが、はく製だと思うと、ちょっと怖くなるといいますか、かわいそうになるといいますか。
(そう思う人のために、ブログ中には写真を載せません。こちらのサイトでご覧下さい↓)
これを授業で紹介したら、「現在のイルカ・クジラ漁問題、毛皮問題と比較してどうかな?」と話がはずみそうです。
このように、当たり前と思っているものの背後に、疑問の目を向け、
その由来や隠された意味を探ることは、私たちを今までとは別の見方に導きます。
どうでしょう、みなさんも一緒に「哲学」しませんか?
 
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これはデンマーク・コペンハーゲンの動物博物館にある、「グリフィン」のはく製。
鷲の頭部・翼、ライオンの胴体をもつ架空動物を、はく製を組み合わせて作ったもの。
こういったニセはく製も、ヴィクトリア朝の見世物文化として流行ったとのこと。
 
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