学部・大学院FACULTY TAISHO
社会福祉学専攻
「低所得世帯における親役割代行と背後にある親子のダイナミクス」-呉楚玲先生の講義を受けて-
7月19日(水)、呉楚玲先生(シンガポール国立大学)をお招きして、「低所得世帯における親役割代行と背後にある親子のダイナミクス」と題した講義をしていただきました。当日は、大学院生ならびに豊島区民社会福祉協議会のコミュニティソーシャルワーカーなど多くの方が参加されました。
今回の講義では、シンガポールにおける貧困家庭の実態、貧困家庭を支援する社会資源、政府の動きなどを詳しく説明したうえで、低所得世帯に関する研究成果を通して、従来の研究と異なる考えを示してくださいました。さらに、子どもは単なる被害者という認識から親的子どもの強みへのシフト、ソーシャルワーカーはどのような社会資源を活用し、どのように介入していくのが望ましいのか、呉楚玲先生が研究成果を通して受講者に多くのヒントを与えていただき、院生にとってもコミュニティソーシャルワーカーの方々にとっても学び多き講義となりました。
当日出席した豊島区民社会福祉協議会のコミュニティソーシャルワーカー1名と院生3名の感想を紹介いたします。
感想①
呉先生の講義で、私が特に興味深く聴かせていただいたのは、シンガポールにおけるファミリーサービスセンターの取り組みについてです。ファミリーサービスセンターでは、機能していない家庭に対して、多機関協働で早期発見や防止、エンパワメントを行っており、従事するCSWは、関係機関へのつなぎや住民間の調整、DVへの対応、そして地域ニーズに応じた支援活動などを展開しているとのことでした。国や地域の状況は違いますが、今豊島区内で実践しているCSWの取り組みと重ね合わせながら、個々のワーカーの専門性を高めるとともに、多機関連携の進め方などについて、より良いあり方を検討していく必要があると感じました。
また、呉先生の研究テーマである「低所得世帯における親役割代行」においては、子どもは家庭内でのただの被害者ではなく、子どものストレングスが家庭に与える影響にも着目するという視点を学びました。そして、ワーカーは親のサポートを行うことで、子どもの負担を軽減していくアプローチが必要であるとのお話を聞き、現在豊島区内で行われている子どもへの学習支援活動や子ども食堂の取り組みなどにも、同様の視点を持つことが大切であると、再認識しました。貴重な講義を聴かせていただき、ありがとうございました。
豊島区民社会福祉協議会CSW:田中 慎吾
感想②
ゲストスピーカーの呉楚玲先生の授業では、始めにシンガポールにおける貧困家庭の問題を国の歴史的背景や経済政策を踏まえてお話いただき、シンガポール全土に設置されているファミリーサポートセンターの機能とそこで活動するCSWの説明に続き、呉先生の低所得世帯における親役割代行と背後にある親子ダイナミクスの研究成果について解説していただきました。
ファミリーサポートセンターがフォローしている貧困家庭の母子へのインタビューから、北米の先行研究では子どもの発達に悪影響とされる親役割代行を、子どもが持つ能力のひとつであると捉え直しているところにオリジナリティを感じました。
国の経済政策に関する科学的分析から地域の文化や家族構成員ひとりひとりの思いに至るまで、ミクロ・メゾ・マクロレベルで展開する躍動感のある研究活動を学ばせていただきました。
呉先生、通訳の金先生、ありがとうございました。
社会福祉学専攻 修士1年 羽毛田 幸子
感想③
日本での取り組みに参考になる点が多くありました。例えば丸ごと受け止める場としてのファミリーサービスセンターや建物ごとの近隣助け合いシステムであります。また、子どもが一方的な被害者ではなく能動的であるということは、強みを見つけどう支えるかが重要になります。そして親など周りの環境に働きかけることも必要だと分かりました。
社会福祉学専攻 修士2年 小林 俊暁
感想④
今回の講義で、「子どもは単に被害者という考えを持って欲しくない」という言葉が一番心に残りました。親役割代行は、アダルトチルドレンに通じるものがあると考えます。子どもが持つ力や考えには影響力があることを改めて知る機会となりました。
また、ファミリーサポートセンターの取り組みについても初めて知ることができました。ファミリーサポートセンターの役割は、子どもそして家族も包括的に支援することを理解できました。
社会福祉学専攻 修士3年 水口 真理
(文責:金潔)