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鴨台会報・ホームページ連載企画「My Way -私の歩んできた道-」・・・2014年度第5回 伊藤 淑子先生 『時代や学科の移り変わりとともに』が掲載されました
鴨台会報NO.96のホームページ連載企画
「My Way -私の歩んできた道-」
(文学部 伊藤 淑子 教授)
今回は続編 第5回
『時代や学科の移り変わりとともに』です。
本学の学部・学科体制もかつてとは大きく変わってきました。それに伴い、授業で扱うテーマも大きく広がっています。学生との学びがますます楽しくなったと先生は言います。
●カルチュラルスタディーズコースへ
アメリカ文学の専門として採用されたわけですから、まずそこのところをしっかり教えたいという思いで仕事をしてきました。しかし、表現文化学科、人文学科と学科の名前が変遷し、さらにカルチュラルスタディーズコースと所属も変わりました。そうなると、アメリカに限らず、イギリスも、あるいは日本のものも、それ以外の話題になっている文化的現象も視野に入れることになって、学生との自由な議論にとても興味をそそられています。
教育という面で思うのは、現代を生きていくうえで、英語が自由に使えるほうが有利であるという現実があって、学生の情報取得の手段としての語学力を伸ばしたいという思いもあります。
●ディズニー、ファンタジーも学ぶ
このような状況のなかで、欧米文学、アメリカ文学に基盤を置いていることは研究においても教育においても、いまでも変わりませんが、教え方やアプローチの仕方は変化しています。はじめのうちは、私自身が受けた教育と同じようにテキストをしっかり読もうというオーソドックスなことをやっていました。着任からしばらくのあいだは男子学生のほうが多かったので、男性作家のほうがいいだろうと、マーク・トウェイン①やトルーマン・カポーティ②などを読んだこともあります。でも、そんな授業ができたのはほんのわずかの間でした。
英文学科、国際文化学科から、表現文化学科、人文学科へと変わり、学生の関心も時代の要請も変わってきました。文学の古典を読んでいるだけでは、学生のニーズに沿いません。学生が興味を持ちやすく、しかも深い学びができる題材を考えた時に、音楽や映画やディズニーアニメ、ファンタジー児童文学、コマーシャルなどを通して文化研究をしよう、という構想が生まれました。学生時代とは違う題材を扱うのですから、それからは一生懸命勉強しました。
●学生主体のテーマで魅力ある授業を
学生が興味を考慮し、魅力ある授業作りをしたいと思っています。かならずしも成功していることばかりではありませんが、いろいろと試行錯誤しながら工夫を重ねています。考察や分析の素材は何でもいい、学生が関心を抱きやすいものを扱えばいい、と学生主体に考え、一緒に議論を始めました。現代文化の当事者は学生たちです。そこに驚きと発見を加えることができたら、と思い、ディズニーやファンタジーを題材にするようにもなりました。議論の楽しさを覚えた学生は、3年生、4年生になったときに、どんな話題にも食いついてきます。
ファンタジーは、いまブームに乗って再発見されたようなところもあります。新しいものを一生懸命勉強しなければいけないのは当然ですが、ファンタジーは19世紀に書かれているものも多く、さらに古い物語を源流としています。ナルニア国物語③、ロード・オブ・ザ・リング④、ピーターパン、不思議の国のアリスなど、学生たちの多くは子ども時代に親しんだ作品です。新しく映像化することによって活用されているファンタジーはたくさんあるのです。ファンタジーをさまざまに議論していると学生から気づかされることもたくさんあって楽しく私自身も学んでいます。
次回のテーマは「学生と共に学ぶ楽しさ」。学生が興味を持っている漫画やアニメを先生も積極的に学んでいるといいます。学生を思う先生の人柄が伝わるお話です。
①アメリカの小説家。ミズーリ州出身。『トム・ソーヤーの冒険』の著者として知られ、
数多くの小説やエッセーを発表。数々の名言も残し、講演やスピーチで引用される
ことも多い。
②アメリカの小説家。ルイジアナ州出身。中編小説『ティファニーで朝食を』は
オードリー・ヘップバーンの主演で映画化されて大ヒットとなる。
③イギリスの批評家・小説家C.S.ルイスが1950年から56年にかけて発表した7編の
連作童話。2011年現在、4編が映画化され公開されている。
④イギリスの作家・詩人、J・R・R・トールキン著『指輪物語』を原作とした映画
シリーズ。「旅の仲間」「二つの塔」「王の帰還」の3部構