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比較文化専攻長 星川先生が代表を務める科研費研究チームの研究調査結果の概要を公開

大正大学大学院 比較文化専攻長 星川先生が代表を務める科研費研究チームが、数年にわたって行った「宗教的信念をめぐる世界規模の意識調査」(科研費、基盤研究(A)=交付金額4900万円)の結果が公開されました。本研究は「生命主義と普遍宗教性による多元主義の展開――国際データによる理論と実証の接合」というテーマで行われ、詳細は下記URLよりご確認いただけます。

https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25244002/

 

この調査の特徴は下記の通りです。

(1)Webを活用した世界的規模の調査
Webを活用した世界的規模の調査で、仏教、キリスト教、イスラム教、道教、ヒンズー教などのいわゆる世界宗教を網羅できるように、日本を含めた8か国で(それも現地の言語によって)データを収集した。

(2)世界初、確率的統計モデルを宗教に関する研究に応用 
100以上の宗教的信念と4000人以上の個人の信念体系の特徴とを同時に反映できる「確率的統計モデル」を、宗教的信念の分析に世界的規模で本格的に応用した。

(3)各宗教の信念要素が実は「世界共通の構造」を持っていることを証明
調査結果を分析すると、一見、宗教ごとにバラバラにも見える宗教の信念要素が、実は世界共通の構造をなしていることをつきとめた。

(4)今回の研究成果は「世界平和の実現」に貢献
調査から得られた知見は、宗教的信念の不一致によってエスカレートする混乱・紛争解決の糸口になり、世界平和の実現に理論的・実証的貢献ができる可能性がある。

 


本研究の成果は、各宗教間の「相違点」を探すのではなく、「共通点」を発見した点にあります。

星川先生より、本研究の意義について下記の通りコメントをいただきました。
「世界的ベストセラーとなった、S・ハンチントンの『文明の衝突』(原書出版、1996年)の最後は、次のような言葉で締めくくられています。

  ”来たるべき時代には文明の衝突こそが世界平和にとって最大の脅威であり、文明にもとづいた国際秩序こそが世界戦争を防ぐもっとも確実な安全装置なのである。”

 文明の根幹にあるのは「宗教」ですが、世界の主要宗教によって人類がどれほど分裂しているにせよ、ハンチントンは”これらの宗教もまた重要な価値観を共有している”と述べています。それで、多文明的世界平和のためのルールの1つが「共通性のルール」になるわけです。

すなわち、ハンチントンのいう「共通のルール」の発見・構築に、今回の調査結果が貢献する可能性がある、ということです。」

 

 

本研究に関する要約については下記をご参照ください。

1.今回の調査において、確率的統計モデル(項目反応理論)を用いて、宗教的信念には世界共通の要素と構造があることを発見した。宗教について、世界で共通する宗教的信念の要素(教義的命題)とその構造(信仰者の宗教度と教義的命題がどれくらい信じやすいかという難易度)を1次元(1つの尺度)で表現できることを発見した。

2.今回の調査では、その共通の要素と構造は、キリスト教国(アメリカ、イタリア、ロシア)、イスラム教国(トルコ)、民族宗教と仏教の混合国(タイ、日本)、ヒンズー教や道教などの巨大民族宗教国(インド、台湾)からなる8か国全てで共通であった。

3.世界各国の宗教性は全く違うものだと多くの人は信じており、宗教学者のなかにもそのように主張する人がいるなかで、これは画期的発見になるかもしれない。

4.その共通の要素と構造には、「神は宇宙と一体の大生命である」などの賛成される確率が高い(難易度が低い)ものから「宗教教団を通じて、救いがもたらされる」など賛成される確率が低い(難易度が高い)ものまでのバリエーションがある。従来の研究では、そのような賛成確率(つまり難易度)のバリエーションを整合的に考慮できなかったため、各宗教の表面的な相違(外形や行動、語彙の相違など)にとらわれてしまい、宗教的信念には実は共通要素や共通構造があることを見落としていたように思われる。

5.今回の調査結果は、単純な共通構造に基づいた多宗教間の効率的な合意形成を可能にするのみならず、各宗教の特徴を(共通性を考慮に入れた上で)明確にすることにより、それぞれの多様性を認め合う道も開き、諸宗教の平和的共存に資するという実践的な価値ももつ。たとえば、前述の「神は宇宙と一体の大生命である」という信念要素は、これまで日本的宗教性の特徴と考えられることが多かったと思われるが、実際には多宗教間で共通であり、世界の多くの人が賛成するものであった。


※今回の調査で得られた膨大なデータの詳細な分析・解釈は、今後、国内外の学術論文やメディアで発表していく予定です。

本調査は「JSPS科研費JP25244002」の助成を受けたものです。
日本学術振興会に厚く御礼申し上げます。

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