宗教学専攻

　学会発表に先立ちまして、4日15時より宗教学研究室で、プレ発表会がありました。今回は、全員がパワーポイントで発表します。いわき市と宗教の現状を図や写真を駆使して報告することによって、聴衆のみなさんによりよく理解していただくためです。プレ発表では、発表内容のほか、時間配分やスライドの分量についても議論しました。これで、満を持して9日の本番に臨めそうです。

　（文責・齋藤知明）

 

なお、本パネル発表の趣旨は以下のようになっております。

 

　「東日本大震災後における〈いわき市〉と宗教」　　　　　　　

 

 　代表者：寺田 喜朗

・星野 壮　　 「地域構造と宗教分布－被災・避難地域と新旧宗教の立地－」

・齋藤 知明　「現地の宗教者の意識と支援活動－高野山真言宗僧侶を中心に－」

・小川 有閑　「伝統教団内の支援のネットワーク－浄土宗の事例から－」

・寺田 喜朗　「新宗教の震災対応－創価学会と天理教の取り組みを中心に－」

 

　コメンテータ：對馬 路人

　司会：寺田 喜朗

 

　東日本大震災の発生後、大正大学宗教学研究室では、いわき市とその周辺をフィールドにした総合的な宗教調査を進めている。これまで、震災被害(原発問題を含む)、および被災地の復旧・復興の状況を押さえながら、①宗教者・宗教団体がどのような活動を行い、地域コミュニティの中でどのような役割を担ってきているか、また、どのような期待を受けているか(受けていないか)、②東日本大震災は被災地の伝統的宗教文化にどのような影響を与えているか（葬送・祭礼・芸能等といった伝統的な宗教文化の頓挫・消滅／再興・再編）について、当該地域の仏教・神道・キリスト教・新宗教の諸宗派・諸教会・諸教団へ断続的に現地調査を実施している。

　震災発生から約１年半が経過する時点における今回のパネルは、主に①の領域に含まれる諸データと分析結果を提示するものとなる。震災発生直後から2012年8月までに、宗教者・宗教団体は、どのような支援・対応を行ってきたか、それは、地域コミュニティにどのような影響を与えるものであったか、これを学会へ報告し、情報と知見を共有することによって、宗教者・宗教団体の復興支援のあり方、ひいては社会貢献活動のあり方について検討を図りたいと考えている。

 

【星野】

　我々の調査フィールドであるいわき市の概要と新旧宗教の分布を報告する。いわき市の人口、産業構造、行政区分と被災の影響（温度差）等を明らかにすると共に、いわき市とその周辺に展開する様々な宗教の分布・立地を報告する。

 

【齋藤】

　高野山真言宗冷泉寺の事例を中心に、地元の宗教者が震災発生直後から、どのような活動を行い、地域コミュニティの復興にどのような役割を担ったか、報告を行う。当事者の意識や様々な出来事に対する意味づけに注目しながら、宗教者の社会参加・社会貢献のあり方について議論を試みる。

 

【小川】

　浄土宗の若手僧侶が中心となって結成された支援ネットワークの取り組みを報告する。地元の若手僧侶達とそこに連携した（いわき市外部に在住する）人々の属性、および活動を、現地寺院との連携・協力、行政・宗門との交渉・協調等に注目しながら、議論を行う。

 

【寺田】

　天理教と創価学会を中心に扱いながら、新宗教の震災対応について報告を行う。オヤコ型教団（天理教・真如苑等）と、なかま-官僚制連結型教団（創価学会・立正佼成会等）との支援体制の差異、および地域コミュニティにおける役割期待の態様に触れながら、伝統宗教と対比させる形で新宗教の震災対応の特質を明らかにする。

 

　以上の4発表の後、阪神淡路大震災を現地にて経験し、その復興のプロセスを熟知する宗教社会学者、對馬路人氏よりコメントを頂き、その後、議論をフロアに開き、討議を行う予定である。

　本パネルを通じて、伝統宗教・新宗教の社会関係資本に立脚した復興支援の態様、また、地域コミュニティにおける宗教の役割について様々な角度から議論を深めたいと考えている。

 

（この記事は、大正大学宗教学会のホームページの内容を掲載しております）

大正大学宗教学会HP　http://www.taisho-shukyogakkai.net/