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宗教学専攻

【震災と宗教】いわき・南相馬、震災から3年②

若林彩香記(教育人間学専攻4年)

 12日は弓山達也先生、齋藤知明先生、若林の3人でいわき市から南相馬市に移動し、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会主催の「東日本大震災のつどい鎮魂並びに復興合同祈願式」に参加すべく、カトリック原町教会を訪れました。

 会場には全体で50人ほどの宗教者・関係者・報道陣が集まっていました。14時より祈願式が始まり、東日本大震災復興タスクフォースの前島宗甫責任者(WCRP日本委員会理事・日本キリスト教協議会元総幹事)によるご挨拶がありました。その後、宗教宗派別の祈りでは下記の8教団がそれぞれの祈りをおこないました(50音順)。

 ・カトリック
 ・清水寺
 ・黒住教
 ・浄土真宗本願寺派
 ・日本聖公会
 ・日本ムスリム協会
 ・妙智會教団
 ・立正佼成会

 祈りの後は、14時46分に参列者全員で黙祷を行いました。最後に、カトリック原町教会の狩浦正義神父によるご挨拶があり、祈願式は終了しました。十字架の前で、さまざまな宗教による祈りが行われる姿は新鮮味ある光景でしたが、宗教宗派を超えた祈願の場・供養の心に隔たりはないと感じました。

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祈願式が行われたカトリック原町教会

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さまざまな祈りがありました(閉式後の集合写真)

 今回2日間にわたって、いわき市と南相馬市を回りました。簡単ながら所感を述べさせていただきます。

 まず、震災から3年が経ったいわき市ですが(いわき市調査報告はこちら )、駅周辺や市街地では震災の傷跡はほぼなくなっています。人々の活気も戻ってきているようでした。ですが、海岸沿いは依然として更地のままで、新しい防波堤を作るための工事が行われています。

 一方で、人々の震災に対する気持ちに変化があったように感じています。今回の調査で、ある市民の方が「震災発生当時は、なんで自分たちがこんな目に合わなければいけないのかと思った。でも今では、震災経験を与えてくれたことで、同じ経験した人に、共感してあげられるし、自分たちにできることを素直な気持ちでできる」とおっしゃっていました。

 昨年の同日にいわき市を訪問した際は、多くの方が震災の経験について話すことに抵抗感を持っているように思いました(昨年の報告はこちら)。しかし、今年は私たちに震災当時のことや、その前後の生活について辛いことも含めて事細かにお話ししてくれました。時間の経過と共に人々の心に少し余裕ができ、震災経験を言葉にすることや、他者(震災経験のない人)と共有することに対して抵抗がなくなったのではないかと感じました。

 南相馬市には初めて行きましたが、ちょうど街に人が戻り始めてきている最中という印象を受けました。なかでも、飲食店は徐々にお店を再開しているようで地元の方が集まっていました。祈願式では多くの教団が原発事故を意識しているようで、原発に近い町であることを改めて感じました。

 多くの地域で復興が目に見える形で行われていて、“震災は過去のこと”と捉えられてしまっているようになってきています。ですが、まだ復興への道のりが長い地域が数多くあるということを私たちは忘れてはいけません。改めて息の長い支援が必要だということ、被災地以外にいる人たちができることとは何かということを考えさせられる調査でした。今回は調査に同行させていただきありがとうございました。

 

※ブログ担当注―若林さんは昨冬、弓山先生のもとで震災関連の卒論を書き、今春から本学大学院の宗教学専攻に進学する予定の学生です。今後も宗教学研究室は、学部・学科、学部生・院生問わず、宗教学に関する研究をしたいという学生とともに研究を進めてまいります。

 

 (この記事は、大正大学宗教学会のホームページの内容を掲載しております)

大正大学宗教学会HP http://www.taisho-shukyogakkai.net/

(大正大学宗教学会「震災と宗教」研究会の調査は、大正大学学内研究助成金ならびに科学研究費補助金による成果の一部である)

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