学部・大学院FACULTY TAISHO
宗教学専攻
【震災と宗教】2015年度第5回定期研究会が行われました
2016年1月28日(木)大正大学宗教学研究室において、「震災と宗教」の定期研究会が行なわれました。2015年度は6月、10月、12月、1月中旬に続いて5回目の開催となります。なお本定期研究会は、科学研究費基盤研究(C)「東日本大震災後の地域コミュニティの再編と宗教の公益性に関する調査研究」(代表:弓山達也)による研究の一端になります。
今回は前回の研究会に引き続いて震災関連論文を、本学の院生3名が分担してレビューをした後に、意見交換を行いました。
研究会の様子
最初の報告者である宮澤寛幸さんは、本学会顧問である星野英紀先生の論文「「忘れられた町」の「四日間」とその後-全町民避難の浪江町で起こったこと」と「原発被災寺院と原発難民-被災後の法務執行の状況」について発表しました。報告者によれば論文は、福島県の原発事故で寺院にも表立っては見えない「二次災害」があったことなどに鋭く言及しているとのことでした。震災後の檀家さんとお寺との新たな「寺縁」が復興にどのような影響を及ぼしているのか、発表後に意見交換が行われました。
2人目の報告者である高橋麻美子さんは、金菱清『震災メメントモリ-第二の津波に抗して』のレビューをしました。特に震災後の祭礼・民俗芸能の伝承・消失について述べられていた章を中心に発表が行われ、震災後の祭礼の復興の意味について議論しました。
最後の報告者である長島三四郎さんは、日本心理学会が発行している『心理学ワールド』の震災研究特集について発表しました。論文を通して心理学者や支援者の被災地への取り組みを分析する中で、被災地での「心のケア」に関して宗教がどのように向き合っていくのかということは重要な視点であることが再確認されました。
今回の発表では宗教学だけではなく、社会学、心理学といった他の学問領域の論文のレビューも行われました。他の学問領域の研究から学ぶことの多さを感じたとともに、意見交換の中で、その研究を宗教学と関連づけて理解することで新たな視点を持つことができることに気付かされました。
(文責:松平寛正)