学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

宗教学専攻

【宗教学専攻】国立療養所多摩全生園・国立ハンセン病資料館を訪ねました


 弓山達也先生が開講されている「MD宗教学特講D」では、ハンセン病と宗教の関係性を、「病いと語り」「病いと記憶」をキーワードに学んでいます。
 講義の一環として、弓山先生と院生3名で、11月23日に国立療養所多摩全生園と国立ハンセン病資料館を訪ねました。さらに、12月3日から7日にかけて本学で催された「人権啓発パネル展」を見学しました。

 多摩全生園は、1907年に発令された「癩予防ニ関スル件」に基づき、1909年に公立療養所第一区府県立全生病院として発足、1931年の「癩予防法」により、1941年に現名称に改名されました。現在でも、過去に培った治療の経験を生かし、ハンセン病による後遺症に苦しんでおられる方々に対し、後遺症への対応と、高齢化による疾患の予防・対処を行っています。
 多摩全生園には、現在でもハンセン病回復者の方々が生活しており、敷地内には、雑貨店や食堂、浴場などの多くの施設が存在しています。また、浄土真宗や日蓮宗などの仏教各宗派の施設、キリスト教の教会といった宗教施設や、納骨堂などがあり、お参りをさせていただきました。



 国立ハンセン病資料館は、1993年にハンセン病回復者により設立された「高松宮記念ハンセン病資料館」を前身とする施設です。資料館は、ハンセン病患者・回復者が自らの生きた証を残し、社会に過ちがくりかえされないよう訴えることを目的として設立されました。資料館内には、実際に患者達に使われていた患者作業の道具や治療器具などの展示がされており、当時の患者生活について現代に色濃く伝えています。
 今年は、最初の国立療養所の長島愛生園が建つ離島長島に架かる、邑久長島大橋の架橋30周年にあたり、国立ハンセン病資料館にて、架橋に関するドキュメンタリー番組の上映会とトークイベントが催されました。
 今回上映されたのは、1983年に山陽放送で制作されたドキュメンタリー番組『もうひとつの橋』で、長島愛生園を舞台に描かれた作品です。内容は、愛生園の入居者である青年が、療養所生活治療を終え社会復帰するまでの道程を物語の軸とし、園内の生活の様子や邑久長島大橋の架橋にまつわる運動を描き出しています。
 トークイベントでは、長島愛生園の入所者自治会長の中尾伸治さんが邑久長島大橋の架橋に関してお話をされました。その中でも、架橋によって、長らく連絡が取れなかった中尾さんの家族から連絡があったことなど、橋が架かるという地理的な問題の解決だけではなく、人との関係性も回復したという語りが印象的でした。




 12月3~7日に、大正大学で行われた「人権啓発パネル展」では、ハンセン病患者・回復者の人権について取り上げられ、ハンセン病の歴史や当時の患者や建物の写真とそれにまつわるコメントがパネルにて展示されていました。また、当イベントに合わせて、5日には「天台宗人権啓発公開講座2018」が開かれ、ハンセン病回復者である石山春平さんによる講演会が行われました。
 本講演では、発症が発覚し、人目に付かないように納屋で4年間過ごした経験や、療養所での辛い患者作業に関するお話、後遺症による就職先や免許の取得が困難だったなどの石山さんご自身のハンセン病発症時から現在に至るまでの体験をお聞きすることができました。

 今回の訪問・パネル展を通じて、現在でもハンセン病の後遺症や、誤ったハンセン病理解に苦しんでおられる方々の存在から、ハンセン病が現在でもさまざまな課題を残していることを再確認しました。また、ハンセン病患者に対して宗教が行ってきた支援など、宗教とハンセン病の関係も学ぶことができました。今後もこういったハンセン病に関する動向に注目し、研究に活かしていきたいと思います。

                                     (文責:中塚 豊)
GO TOP